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ソースの学術性と信頼性を見きわめるためのヒント
小論文や研究論文などの学術的文書を執筆する際には先行論文や学術文献が欠かせませんが、それらを検索する際は、信頼できる情報源(ソース)を見つけることが重要です。
これらのソースは、新聞、書籍、定期刊行物(ジャーナル/雑誌)、ウェブサイトなど、さまざまな形態で存在しており、一般向けのものと専門家向けのものがあります。
「一般」情報を参考にする場合のヒント
新聞や雑誌は、「一般」情報とみなされます。これらは幅広い読者に向けて書かれた情報であり、プロの書き手(トピックの専門家とは限らないジャーナリストなど)が一般用語を使って一般向けに書いたものです。これらの情報は特定のフォーマットに従って書かれているわけではなく、参考文献などが記載されていることも稀です。
一方、書籍やジャーナルは「学術」出版物とみなされます。これは、専門家や研究者が特定のテーマについて深く掘り下げ、専門用語を用いて、研究者・学術関係者・学生・専門家などの特定層に向けて書いたものです。これらは規定のフォーマットに沿って書かれており、参考資料として図表や先行論文が掲載されています。
「一般」情報にも利点がないわけではなく、熟慮の末に書かれた有益な情報が含まれているかもしれませんが、あえてこのような区別をしている目的は、情報の信頼度や特定のテーマに対する著者の知識、つまり本質的な学術的価値を測ることにあります。進行中のプロジェクトでの必要性に応じて、信頼できる一般情報に頼ることには何の問題もありません。
「学術」情報を参考にする場合のヒント
「学術」情報は、「専門」情報、「査読付き」情報、「審査済み」情報などと言い換えることもできます。研究者が頼りにするのは、これらの情報です。この学術情報を、ジャーナル、書籍、オンラインの3つに分けて紹介していきます。
1. ジャーナル
ジャーナルで出版される論文には、以下のような特徴があります:
著者:論文には、著者の氏名・経歴・所属機関・住所・メールアドレスなどの情報が記載されています。著者や責任著者が分野の専門家であること、所属先が信頼できる組織・学術機関/大学であること、査読付きジャーナルや書籍での出版経験があり、それらが引用されていることを確認しましょう。
出版元:出版元は、学術出版社、大学、研究組織、専門機関、または研究を行なっている政府機関であるのが一般的です。
ジャーナルのウェブサイトには、編集委員会のメンバーや編集長の名前などの基本情報が掲載されています。また、ジャーナルが準拠しているガイドライン(出版倫理委員会[COPE]、国際医学雑誌編集者委員会[ICMJE])に関する情報も得られるでしょう。以下は著名な出版社の例です:シュプリンガー・ネイチャー、エルゼビア、テイラー・アンド・フランシス、ワイリー・ブラックウェル、SAGE、マクミラン、米科学振興協会など。
ジャーナルの信頼性を評価するときは、次の点に注意しましょう:
- ウェブサイトに、連絡先と自誌を紹介する情報が掲載されていることを確認しましょう。研究機関や学会と提携している場合があるので、インターネットでそれらの提携先を調べてさらなる情報を得ましょう。採用している査読の種類、方針、ライセンス、著作権に関する詳細も確認しましょう。
- ジャーナルのウェブサイトが更新されていて、リンク先が機能していることを確認しましょう。ウェブサイトが、何らかの営利団体、政党、特定の意図を持った組織の一部になっていないかを確認し、そうである場合は、ウェブサイトの情報にバイアスがかかっている可能性に注意しましょう。
- 著者向けガイドライン:出版している論文の種類や、論文・図表・補助資料作成のためのガイドラインが、ウェブサイト上に明示されていることを確認しましょう。
- ジャーナルの評価指標:Eigenfactor、SCImago Journal Rank、CiteScore、SNIP(Source Normalized Impact per paper)などの指標を使って、自誌の評判を示しているジャーナルもあります。
- インデックス:論文を出版したジャーナルが、Clarivate Analytics、MEDLINE/PubMed、Scopus、EBSCO、PsycINFO、IEEE Explore、SciELO、CiteSeer Xなどの信頼できるデータベースに登録されていることを必ず確認しましょう。
内容:論文の内容は、特定の分野に関心を持つ読者をターゲットにしたものになっています。論文は一般的に、アブストラクト・キーワード・イントロダクション・方法・結果・考察・結論・参考文献の各セクションで構成されています。各セクションの長さは、ジャーナルの規定によって異なります。多くの先行論文を引用することは、学術論文の大きな特徴の1つです。参考文献は、本文中での引用と、巻末の参考文献リストで示されます。過去3~5年の先行研究が引用されているかどうかが、学術論文を評価する際の目安となるでしょう。また、学術論文では、グラフをはじめとする図表を用いて研究結果を示すのが一般的です。
論文の内容は、バイアスのない見方で、特定のテーマに対するきわめて客観的な研究/レビューがなされ、研究の長所だけでなく課題も述べられているものでなければなりません。また、誤字脱字や文法ミスなどのエラーが散見される論文は、信頼に値しません。図書館のデータベースやGoogle Scholarで、論文の被引用数も調べてみましょう。
2. 書籍
書籍は、昔から貴重な情報源として重宝されてきました。学術論文の執筆に必要な書籍を評価する際は、以下の点を考慮しましょう:
著者:経歴などの情報から、著者の信頼性を必ず確認しましょう。分野の専門家であることや、著者の所属先および過去の出版物を確認し、さらに、書籍の内容が出版元に利益をもたらすものでないかどうかを確認しましょう。
出版元:一般的に、大学出版局、専門/事業者団体、官庁、研究機関、研究センター、著名な商業出版社から出版されている書籍は、学術的コンテンツであり、信頼に値します。インターネットで書籍のレビューを調べれば、それが学術的なものであるかどうか、特定の層に向けて書かれているかどうかなどのヒントが得られるでしょう。出版元のウェブサイトでさらに情報を確認して、架空の出版社でないことなどを確認しましょう。
内容:以下の点を確認することで、書籍の信頼性や、学術情報としての意義を評価することができます:
- タイトルがテーマの特異性を表している。
- 重版されている(これは、書籍がよく読まれ、改訂や情報の更新が十分に行われている証になります)。
- 前書きや序論を慎重に読んで、著者の視点やバイアスの存在を確かめる。
- 目次や索引は、その書籍がどのような主題/テーマを取り上げているかを把握するのに有効。
- 参考文献の出版日は、書籍が提供している情報の正確性や信頼性を判断するのに有効。
3. ウェブサイト
オンライン検索は、情報を探すためのもっとも便利で簡単な方法です。しかし、ウェブサイトの情報の信頼性は注意深く見きわめる必要があります。以下はそのためのヒントです:
信頼性:URLやサイトのアドレスからは、以下のような情報が得られます:
- 政府関連のサイトには「.gov」や「.mil」というドメインが使用されます。教育関連のサイトには、「.edu」ドメインが使用されます。同様に、非営利組織には「.org」、企業には「.com」が使用されます。一般的には、「.org」や「.com」よりも「.gov」や「.edu」の方が、信頼性が高いとみなされています。
- サイトの作成元を判断するために、ページ内の名前やアドレス、「About Us(私たちについて)」、「Contact Us(連絡先)」などのページを確認しましょう。検索エンジンを使えば、ウェブサイトの作成元に関する略歴情報などが手に入るでしょう。
- 一般的に、個人のウェブサイトには「~」や「%」などの記号、または「staff(スタッフ)」、「students(学生)」などの言葉がURLに使用されます。これらは公開されている場合もありますが、その所属元が必ずしも公式に支援しているとは限りません。なぜなら、学生や教員には大学のウェブサイト上に固有のスペースが与えられている場合が多いからです。このようなサイトの情報には主観的な意見が含まれていることもあるので、完全に信頼することはできません。
- ウェブサイトを支援する組織の沿革・財源・理念などを調べることでも、そのサイトの信頼性を評価することができるでしょう。
内容:ウェブサイトの内容を見れば、示されている情報の意図について多くを知ることができます:
- 扱っているテーマの年代/時間軸や地理情報を確認しましょう。ウェブサイトが作成・更新された日時を確認し、情報が最新のものであるかどうかを確認しましょう。
- サイト上に表示されているリンクや参考資料を確認しましょう。コンテンツを丁寧に読んで、示されているデータや事実に偏りや不正操作がなく、テーマに付加価値を与えるものであることを確認しましょう。
まとめ
エラーのない正しい情報を提示し参照することは、あらゆる学術ライティングにおいてきわめて重要です。この記事で示したヒントが、信頼できる学術情報を見きわめるための助けになれば幸いです。研究機関/大学の司書に確認したり、図書館のデータベースを活用したりして、学術情報の信頼性をチェックすることをお勧めします。この作業には多少の時間と労力を要しますが、情報が信頼に足るものであるかどうかが確認できれば、次のタスクにも自信を持って臨めるはずです。
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