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優れた文献レビューを書くための5箇条
研究テーマが決まってリサーチクエスチョンを練り上げたら、次にやるべきことは文献レビューです。文献レビューとは、テーマに関するあらゆる著作物を評価しながらまとめることです。包括的な文献レビューは、研究と論文出版において欠かせないステップです。文献レビューをしっかり行うことで、多くのメリットが得られます。科学者へのキャリア情報提供サイト「Science Careers」が「文献(先行研究)の把握はなぜ重要か」と科学者たちに問いかけたところ、数々の興味深い回答が得られました。とくに印象的だったのは、「文献情報をいつでも最新の状態にアップデートしておくことは、研究者としてのキャリアを通じて常に重要なスキルと言えます。現状の知識の隙間を把握しておかなければ、時代遅れの研究や的外れな研究を行なってしまうことになります」というデニス・バウアー(Denis Bauer)博士の回答でした。文献レビューを徹底的に行うことには、ほかにも大きなメリットがあります。文献レビューは、学術誌での論文出版には欠かせない作業です。文献レビューを徹底的に行うことで、研究にしっかり取り組み、分野の先行研究を認識しているということを、ジャーナル編集者や査読者に対してアピールすることができます。
以上のことから、質の高い論文を執筆するためには、効果的な文献レビューが不可欠であることに疑いの余地はありません。ただし、文献レビューを行う過程で、テーマに関する先行研究があまりない(出版されている論文数が少ない)という状況に遭遇することがあるかもしれません。この場合はまず、自分を疑ってみましょう。世界の出版論文数は毎年約250万本のペースで増え続けています。したがって、あなたの研究テーマが誰にも検討されていないという可能性はきわめて低いのです。とは言え、専門性が高い研究や、分野の課題に関する特定の側面をテーマにしている場合は、残念ながら先行研究が少ないか存在しない、という状況に遭遇しがちであるのも事実です。
こういったケースに当てはまらない場合に関連研究が見当たらないのはなぜでしょうか?考えられるのは、検索の戦略が完全に間違っているか、またはただ単に不十分ということです。論文の参考文献リストは、必ずしも長くなければならないということはありませんが、研究を行う上では、先行研究のレビューによって分野の現状を示す必要があります。テーマに関連する先行研究が見つからないときはどうすればよいのでしょうか?以下で紹介する5つのヒントを参考にすれば、幸先の良い文献レビューのスタートを切れるでしょう:
1. 検索範囲を拡げる
リサーチクエスチョンを何日も何週間も練っていると、考え方が凝り固まってしまうことがあります。リサーチクエスチョンを、非常に狭い枠の中に閉じ込めてしまっていることもあるかもしれません。そんな場合、直接的な関係はなくても他分野のテーマに関連文献がある可能性を見落としてしまうことがあります。たとえば、「堆肥にできるプラスチックは製造可能か?」というリサーチクエスチョンを設定したとしましょう。インターネットで徹底的に調べた結果、関連する文献は2件しか見つかりませんでした。あなたはこれをチャンスと感じるかもしれません。自分の研究によって、この分野の知識の大きな隙間を埋められ、研究の重要性を主張しやすくなる、と喜ぶかもしれません。しかし、文献レビューのセクションで何を語るべきか、という点については頭を悩ませることになるでしょう。
文献の検索範囲を拡げれば、先述のリサーチクエスチョンのもととなっている仮説を支持する関連文献が見つかるかもしれません。たとえば、プラスチックを生分解性にするためのプロセスや、堆肥として使われているプラスチックに類似した材料について調べてみます。どちらもリサーチクエスチョンに直接関係しているわけではありませんが、研究の基礎となる情報を与えてくれるはずです。手始めに、コーンスターチなどの天然素材由来のバイオプラスチックをはじめとする環境に優しいプラスチックについて調べてみるのもよいでしょう。これによって、関連情報が得られるだけでなく、より大きな概念的枠組みの中に自分のリサーチクエスチョンを置くことができ、研究の正当性についての説得力を増すことができるでしょう。
2. 適切なキーワードで検索しているか確認する
関連文献の検索における別の問題は、見当違いのキーワードや無関係なキーワードを使ってしまうことです。探している論文にふさわしいキーワードを決めて、的を絞った検索をしなければなりません。リサーチクエスチョンが決まったら、メインコンセプトを決定し、そのコンセプトに対するキーワードを決めましょう。たとえば、childhood schizophrenia(児童統合失調症)に関する研究を行う場合は、「schizophrenia(統合失調症)」、「early onset schizophrenia(早発型統合失調症)」、「schizophrenia in children(子供の統合失調症)」、「early symptoms of schizophrenia(統合失調症の初期症状)」といったキーワードが有効でしょう。グーグルでより限定的な検索を行いたい場合は、キーワードを二重引用符で括りましょう。これにより、二重引用符内のフレーズを含むページのみがヒットします。下の画像は、二重引用符でキーワードを括ったときの検索結果例です:
また、キーワードを引用符で括らない場合、キーワード内の単語の順番を入れ替えると、異なる検索結果が表示されます。つまり、「schizophrenia symptoms in children」と「childhood schizophrenia symptoms」では、異なる検索結果が得られるということです。それでも参考文献が見つからない場合は、各キーフレーズ(単語)の同義語・類義語を調べてキーワードを増やしてみましょう。より焦点を絞った検索をしたい場合は、自分の論文で使う予定があるキーワードを使いましょう。これにより、分野におけるそれらのワードの妥当性を知ることができます。また、コンセプトやキーワードの定義をより厳密に行う必要があるかどうかも明らかになるでしょう。
3. 関連する文献を見つけたら、熟読する
参考文献の数が限られているということにはメリットもあります。なぜなら、数が少なくてもその参考文献リストが包括的なものであれば、1つ1つの文献をより深く読み込むことができるからです。大量の文献に目を通す必要がないので、個々の詳細を吟味する余裕が生まれます。大量の文献を取捨選択した結果、重要な文献を除外してしまったのではないかという心配をしながら研究を進めることにもなりません。さらに、先行研究が少ないということは、基礎的知見がまだあまり得られていないということです。この場合、先行研究の限界を指摘すれば、自分のリサーチクエスチョンを構築/強化することに繋がります。
4. 見つけた文献の参考文献をたどる
参考文献は、読者を分野の先行研究に導くものです。論文に参考文献を載せるということは、その論文を情報源として認めたと示すことです。論文の参考文献を追跡する方法には、forward searching(前向き検索)とbackward searching(後ろ向き検索)の2通りがあります。関連文献をいくつか見つけることができたら、それらの論文の参考文献を見てみてください。これが後ろ向き検索と呼ばれる方法で、より多くの関連文献を探すことができます。一方、最初にピックアップした論文を引用している文献をチェックする方法を前向き検索と呼びます。この方法によって、キーワード検索では引っかからなかった文献に出会うことができます。また、ピックアップした文献の著者が書いたほかの論文もチェックしてみてください。以上の作業を行えば、参考文献リストをさらに強化することができるでしょう。
5. 助けを請う
それでもダメなときは、遠慮なく助けを請いましょう。まずは、所属大学の図書館が必要なジャーナルを購読しているかどうかを司書に確認しましょう。文献がいくつか見つかっていれば、それが掲載されているジャーナルを調べ、関連文献があるかどうかを確認してみてください。教授や指導教官や先輩に聞いてみるのも一案です。似たような苦境に立たされた経験があるはずなので、きっと何らかのヒントを持っているでしょう。行き詰まりを感じているなら、先輩研究者に正しい方向へ導いてもらうというやり方も、決して間違ってはいません。
ResearchGateやQuora、Mendeleyなどの、研究者に特化したオンライン・フォーラム/グループも一度探索してみてください。こういった場では研究者同士の交流ができるので、自分では探し出せないような論文などを教えてもらえることがあります。同様に、困っている研究者に論文を紹介することもできます。ただし、受け取ったりシェアしたりする論文は、合法的にコピーされたものなければなりません。つまり、その論文の著作権を持っていなければ、論文をシェアすることはできないということです。
文献レビューで行き詰まったとしても、先行研究の不足を理由に引き返す必要はありません。自分の研究テーマに関連する文献が見つからないときは、「関係のあるものはほかにないか?」と自問してみてください。このような状況でやるべきことはただ1つ、リサーチクエスチョンにつながる可能性のあるすべてのエリアを特定し、その中から自分の論文に関係するものをリストアップすることです。こうすることで、参考文献を探しやすくなるだけでなく、すでに見つけていた文献を手がかりとして前に進むことができるはずです。このアプローチによって、最終的には、良く整理された包括的な文献レビューをまとめ上げることができるでしょう。
また、エディテージの文献検索サービスや、文献管理を一元化できるワンストップの無料ツールR Discoveryを使うことも、選択肢として頭に入れておきましょう。
文献レビューについて学びたい方には、こちらのコースがおすすめです:
How to create a comprehensive literature review
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