オープンアクセスに関するあらゆる質問に答えます!(1 of 3)― Open Access Week 2021特集
国際オープンアクセス・ウィーク2021に際して、R Discoveryはイベント「Ask Me Anything」を開催しました。学術出版界の専門家をお招きして、研究者の皆様から寄せられたオープンアクセス(OA)に関するさまざまな質問にお答え頂きました。パネリストは、Caroline Sutton博士(Taylor & Francis社オープンリサーチ担当ディレクター)、Vrushali Dandawate氏(AISSMS College of Engineering図書館長/DOAJインド代表)、Andrew Stammer氏(CSIRO Publishingディレクター)の3名です。(パネリストに関する詳細はこちらをご覧ください。)
免責事項:パネリストの回答は個人の意見であり、R Discoveryやエディテージ・インサイト等の組織の見解を必ずしも反映するものではありません。
1. OA出版はキャリアにプラスになりますか?OA出版物にはどれくらいステータスがありますか?OA論文はどのように査読されるのですか?
Caroline:論文をOA出版することは、キャリアにプラスになります。例えばTaylor & FrancisでOA出版された論文は、OAではない論文と比べて6倍以上のダウンロード数と30%増の引用数を記録しています。同様にシュプリンガー・ネイチャーは、OA論文は平均して7倍のダウンロードと50%増の引用数を記録し、メディアでの言及も10倍増えていると報告しています。
ステータスにはさまざまな意味合いがあります。研究の評価や助成金申請の審査において、購読型論文よりもOA論文に高いステータスを与えることで、資金提供者がOAモデルでの出版を要求するケースが増えています。OA出版物には、収載状況やインパクトファクターといった従来の評価指標も適用されていますが、ウェブサイトには、普及度や影響度を示す代替指標も一緒に掲載されています。
DOAJ(Directory of Open Access Journals)に掲載されているような信頼度の高いOA出版物は、ジャーナルの目的と範囲に合致した健全で堅牢な研究のみが出版されるように、すべての投稿に購読誌と同等の査読や精査プロセスが適用されています。
Vrushali:DOAJに登録されているなど、品質管理されたジャーナルであればキャリアにプラスになるでしょう。OA出版では、研究をより広く知ってもらい、より多くの引用を得ることができます。質の高いOA出版では厳格な査読方式が適用されており、論文の質、妥当性、意義を専門家が評価しています。
Andrew:キャリアを発展させるには優れた研究を行うことが一番ですが、研究成果をどこでどのように発表するかも重要です。評判の高いジャーナルに論文を掲載し、さらにそれがOAであれば、研究を知ってもらうチャンスが増えます。より多くの読者に届けられることがOAの利点です。
2. 論文掲載料を徴収しないOA誌がありますが、このようなジャーナルで論文を出版しても十分に引用されるのでしょうか?また、論文掲載料を徴収するジャーナルとしないジャーナルの違いは何ですか?
Caroline:主に学会などが保有するジャーナルでは、出版や維持に必要な関連費を助成金や補助金で賄っているところもあります。これらのジャーナルは、無料で読めて無料で出版できるという、2つのメリットを兼ね備えています。
その他のジャーナルは、論文掲載料(APC)を徴収しています。この費用は、著者の所属機関が各種の契約に基づいて負担する場合と、研究者の資金提供者が負担する場合と、その他の手段で負担する場合があります。ほとんどの出版社は権利放棄の方針を定めています。権利放棄の方針は出版社によって異なりますが、これは、方針を策定する際に、異なる定義を用いているためです。例えば、世界銀行、HINARI、OECDではそれぞれ定義が異なっています。
Vrushali:OA誌の質は、APCを徴収しているかどうかで決まるわけではありません。論文の内容が優れていて、他の研究者にとって有用であれば、多くの引用を得ることができます。OA誌の中には、論文の出版に際して、著者にAPCや投稿料、あるいはその両方を請求するものがあります。
大学、研究機関、学会、協会などと連携して、著者から費用を徴収せずに出版するOA誌もあります。一方、これらのOA出版物は、読者にも購読料を請求していません。OA誌は、OAライセンスに記載されているルールに従って、読者がお金を払うことなく論文を閲覧、再利用、ダウンロードできるようにしているのです。
3. 出版コストを考えた場合、OAモデルは長期的に持続可能でしょうか?
Vrushali:論文掲載料は、OAモデルにおける論文の長期的保存と持続可能性のためのコストをカバーするのに役立ちます。OA出版では、出版社は自社のコンテンツを広く公開してアクセス可能にすることを約束しているので、OA誌は長期的な持続が可能となっています。また、多くのジャーナルは多様なアーカイブポリシーに従っています。
出版にかかるコストは、出版社に支払われる金額とは異なります。従来型ジャーナルの購読料は、株主の利益を満足させる必要があるため、かなり高額です。100%OAの場合、研究者、大学、資金提供者が権限を持つので、長い目で見ると、安価で持続可能な出版となります。
4. OAはフリーアクセスと同じですか?
Caroline:OAには2つの意味があります。1つは、コンテンツへの自由なアクセス、つまり自由に読むことができるということです。もう1つは、再利用の権利です。後者は通常、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを適用することで可能になります。Open Access Scholarly Publishing Associations(OASPA)ではCC-BYライセンスを推奨していますが、他のライセンスが適用されることもあります。
Vrushali:OAとは単なるフリーアクセスとは異なり、使用条件がライセンスに記載され、著作権の条件が明確になっていて、論文に無制限かつ即時にアクセスできるものを指します。また、研究成果へのインターネットアクセスが無料かつ自由にできる必要があります。OAコンテンツとは、アクセスする際に費用がかからず、誰でも利用することができるものです。
Andrew:OAとは、一般的に「無料で読める」ことを意味します。出版プロセスには作業が必要で、それにはお金が必要です。つまり、読者がお金を払わなければ、他の誰かが払う必要があるのです。著者への負担は、必要な資金を調達するための代替手段です。学会の中には、会費でジャーナルを後援してジャーナルのOA化を図っているところもあります。
今回は4つのQ&Aをご紹介しました。この続きもどうぞお楽しみに!
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