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オープンアクセス出版とその可能性について
キャロライン・サットン博士は、様々な分野を扱うオープンアクセスの学術出版社 Co-Action Publishingの共同設立者です。Co-Actionの設立前は、前の会社テイラー&フランシス(Taylor & Francis; (Informaグループ))のもと、Editorial Managerとして、その後出版者として働いていました。2008年から2013まで、, she served as the first President of the Open Access Scholarly Publishers Association (OASPA)の最初の協会長を務め、現在は委員会のメンバーになっています。She is also Director at オープンアクセスジャナルの方向性を, the managing organization of the Directory of Open Access Journalというサイトを運営するInfrastructure Services for Open Access (IS4OA)の責任者(Director)でもあります。サットン博士が以前に役員を務めていたその他の委員会には、SPARC Europe (2010 – 2013)の委員会、ルンド大学図書館委員会(Lund University Library Board) (2008 – 2010)、リンショーピング大学出版諮問委員会(Advisory Board at Linköping University Press)、Open Access Publishing in European Networks (OAPEN)の諮問委員会があります。
出版社や図書館の団体とグローバルなネットワークで結ばれているサットン博士は、オープンアクセスの賛同者として有名で、専門家として活動もされています: オープンアクセスに関し数多く関わる中で、博士は、欧州委員会(European Commission)のような組織へ参加しており、報告者(Rapporteur)を務めています。博士はCo-Action を通じ、一流の研究グループや研究者と議論し、共同で多くのプロジェクトに取り組んでいます。ルンド大学図書館本部(Lund University Libraries Main Office)と共にOAジャーナル出版の成功事例ガイド(the Best Practices Guide to OA Journal Publishing )を開発しました。博士はスウェーデンにあるウプサラ大学で社会学のPhDを取得しています。
オープンアクセス出版では、学術コミュニティはどこにあるとお考えですか?
2007 年2月にCo-Action Publishing を立ち上げたときは、(設立されている)オープンアクセス出版はわずか数社しかありませんでした。他のオープンアクセス出版社とともに、オープンアクセス出版とは何か、クリエイティヴ・コモンズ・ライセンスとは何か、ゴールド・オープンアクセスとグリーン・オープンアクセスの違いといった情報を共有するため、かなりの時間を費やさなければなりませんでした。助成金も限られ、大手出版社は敵意を持つとまではいえないものの、オープンアクセスに対し懐疑的でした。
ここ数年の間に、状況は劇的に変わりました。学術出版社の大半が今では、オープンアクセスによる出版物を揃え、オープンアクセスへの動きに対抗するのではなく、研究者に提供するものを広げていく機会としてオープンアクセスを利用してきました。大手の出版社でも多くが、現在、「会員」式や似たような仕組みをとり、自分たちの発行するジャーナルに論文を掲載する多くの研究者を抱える機関へ、一括支払いの選択をできるようにしています。
資金提供機関は、特にここヨーロッパでは、徐々にオープンアクセス料金の支援ができるようになり、機関の数も増えてきています。資金提供を受けた研究から生み出される出版物を一定の期間内レポジトリに預ける(グリーン)、あるいはオープンアクセス・ジャーナルに掲載する(ゴールド)ことを研究者に求めたオープンアクセス・ポリシーを採用している資金提供者・機関は、いっそう多くなっています。The events that took place in the UK during 欧州委員会によるオープンアクセス・ポリシーの最終採用と並行して、2013年イギリスで行われたイベントは、 これらがヨーロッパでもっとも目立った出来事でした。一方アメリカでは、2013年2月22日に合衆国科学技術政策局(OSTP)が公布した、歴史的な ホワイトハウスによる指令(White House Directive) により、北アメリカにおけるグリーン・ポリシーの採用へとさらに勢いづけられることになりました。
リサーチ・コミュニティの中では、オープンアクセス・ジャーナルでの掲載の受け入れや採用は、いささか一様でない広がりを見せています。2013年スウェーデンにおいてキャメロン・ネイロン氏が講演を行い 、その中で、もともとエヴェリット・ロジャース(Everett Rogers)が開発したイノベーション採用曲線(Adoption of Innovation curve)が、学術コミュニティにおけるオープンアクセスの現状を理解するのに役立つと、指摘しました。高エネルギー物理学のコミュニティや、生物学のコミュニティの大部分のような、イノベーター(訳注;イノベーションを最初に採用したグループ)とアーリーアドプター(訳注;イノベーションを2番目に採用したグループ)は、オープンアクセスについて出版社に話すのをやめ(今では既知の事実ですが)、そのかわりデータへのオープンアクセスを強く求め、再利用可能なツールを開発しています。これに対し、私たちも、初期と後期の多数にとって、オープンアクセス・ジャーナルに掲載するのは、たとえ今では受け入れられているものであっても、大きな変化であることがわかっています。同時に、遅れている人たちにとって、オープンアクセスは、理想的なすべてうまくいった場合には、何だかよくわからない概念であり、最悪の場合には明らかな脅威と思われていることがわかっています。
オープンアクセスの出版社にとって、特に長いこと勝負をかけてきた出版社にとっては、出版業界でオープンアクセス出版が広く受け入れられるということは、挑戦に値する喜ばしい転換点です。一つには、以前ほど強硬に、オープンアクセスを支持する論議をする必要がなくなりました。もう一つは、オープンアクセスとは何を必要とするかについての理解がかなり均質である、小さな集団から、自分なりの定義を持ちこんでくるような大勢の人々へと、オープンアクセス出版が拡大することで、 若干ごちゃごちゃした市場になっているという点です。 How Open Is It? というツールが開発されたのは、こうした前後関係からは外れたものでした。いくつかの次元に沿って「オープンさ」にもレベルがあります。どのくらいのレベルのオープンさが求められているのか、どのくらいのレベルのオープンさに準拠しているのか、利害関係者が理解することが大切です。定義の明確化と並行して、私たちは、こうした新しい環境で発展するには、基準と成功事例が重要だとも思っています。いろいろな意味でオープンアクセス出版にはインフラが整っていないため、(整備する)必要があります。組織を超えた活動と協力が、新しいインフラの開発へと大いに向けられています。
多くの人はオープンアクセスに懐疑的です。オープンアクセスのモデルには経済的に見て持続可能性がなく、また、出版ビジネスや学会が収入減により困難をおぼえるとしたら、市場にダメージすら与えるだろうと考えられているからです。この点についてお考えを聞かせていただけませんか?
現在のところ、オープンアクセス・ジャーナルを支持する経済的モデルはたくさんあります。たとえば、Co-Action Publishingの中でいうと、掲載手数料をともなうジャーナルがありますし、学会や機関に前面的に支援されているジャーナルもあれば、目下助成金を受けているジャーナルもあります。
2013年、JISC の支援のもと、オープンアクセスを考えている学会向けにツールを開発するプロジェクトに、私は参加しました(ツールは、http://open-access.org.uk/information-and-guidance/guide-to-goldoa/から入手できます)。プロジェクトと並行して、私たちは学会や出版社の幹部たち大勢にインタビューし、さらにイギリスの学会へ配布した調査で回答を250受け取りました。当然のことながら、一番の関心は、ゴールドあるいはグリーン・オープンアクセスへ移ることによる財政上の悪影響です。
第一に、ゴールド・オープンアクセスへの動きを示唆するシナリオは、有益であるとともに経済的に見ても全く問題がないということに注目すべきです。学会のジャーナルへの会員購読料という形で、出版社にかなりの金額をすでに支払っている小さな学会にとって、ジャーナルをオープンアクセスにするコストを調べる価値はあるでしょう。その学会は、同レベルの支出あるいは少々高い手数料でジャーナルを維持できるかもしれません。STMの分野に位置づけられる学会や、初めてジャーナルを立ち上げる学会は一般に、オープンアクセス・ジャーナルを設立させる自信があるものです。掲載料、あるいはカラー、図などに手数料を課すジャーナルを持っている学会は、他の学会よりオープンアクセスへの移行が容易に感じられるかもしれません。そうしたジャーナルの著者は論文掲載に伴う支払いに慣れているからです。JISCで見ることのできるツールは、この点に関し学会が考慮すべき問題を用意しています。
ジャーナル刊行以外の活動を行うための主な収入源となっている、高利益のジャーナルを運営する学会にとって、オープンアクセスは大きな課題です。第二に、オープンアクセスにするのが難しいと思われる学会は、臨床医(ジャーナルは講読するが論文投稿はしない)が多く、研究者(ジャーナルに寄与する)が少ないコミュニティに貢献している学会です。最後になりますが、ジャーナルの料金の割引が会員特典になっている場合、オープンアクセスは脅威として受け取られかねません。これらのシナリオすべてにおいて、オープンアクセスは学会に大きな課題をつきつけています。学会の活動に対しいかに資金援助してもらうか、という課題です。
他の選択肢としては、学会のポリシーに適合させるためグリーン・オープンアクセスの導入を選んだり、著者に選択を任す選択肢を選んだ学会、あるいはこれまでのジャーナルより目的と範囲を広くしたがオープンアクセスであるジャーナルを新たに導入した学会もあります。2007年、ピーター・スーバー(Peter Suber)氏と私は、オープンアクセスを持つ学会に関する情報を照合しました。こうしてできた目録は、アマンダ・ペイジ(Amanda Page)氏の助けを借りて引き続き開発されています。現在、私たちは850を超える学会をリストアップしています。
以下のサイトを見れば、たいていの学会が、自分たちに類似したケースを見つけることができるでしょう。https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0AgBYTDKmesh7dDZ6UnBfcnpOdVpnd3ptSnVpQ0xrenc#gid=1
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