AIは査読をどのように加速させるか

AIは査読をどのように加速させるか

AIを話題にすると、私たちの生活を破壊しようとする全知全能のコンピュータを思い浮かべる人もいるようです。ジャーナルへの論文投稿経験のある研究者に「AIが原稿の評価に役立つかもしれない」と言っても、同様の反応があるかもしれません。「そんなはずはない」、「ボットが私の原稿を拒否しようとしている」等々。

 

AIに関する私の好きな言い回しは、「AIは人工知能Artificial Intelligence

の略ではなく、拡張知能Augmented Intelligenceの略だ」というものです。つまり、人の意思決定を強化するものであって、人に取って代わるものではないということです。学術コミュニケーションにおけるAI、とりわけAIを原稿評価に使うことについては、払拭すべき既成概念があります。そこで、今年のピアレビュー・ウィークでも議論されましたが、AIが人の意思決定の補助にどのように利用されているか、そして、AIが査読プロセスをどのように加速させ、著者と査読者にメリットをもたらすかを示したいと思います。

 

近年の研究論文のアウトプット量については、目を見張る統計が出ています。2018年には、33,000誌以上のジャーナルに300万本を超える論文が掲載されました。受理された論文数に2を掛けると、このアウトプットを支えるのに必要な査読件数の概算が分かります。受理された論文数に3050%を掛ければ、全体の投稿数が分かります。

 

これらの数字はすべて前年比で6 8% 増加しているので、査読者を見つけ、出版のペースを維持し、不適格な論文を振るい落とすことに、ジャーナルがいかに苦心しているかが分かります。では、投稿から最終判定までに原稿がたどる典型的な流れに沿って、このプロセスをよりスムーズで迅速かつ充実したものにするために、AIがどのように役立つのかを見て行きましょう。

 

投稿


ジャーナルに論文を投稿すると、まず編集部で原稿のスクリーニングを行い、その論文がジャーナルに適したものかどうかを判断します。具体的には、ジャーナルの目的と対象領域にマッチしているか、論文の構造や種類は適切か、剽窃行為がないかなどを確認します。これは数分で終わることもありますが、何千件もの投稿数がある大規模なジャーナルもあることを考えると、全体としてかなりの時間がかかっています。

 

しかし、時間だけでなく、透明性と一貫性も問題となります。同じ論文でも、査読者によって、異なる理由で異なる結論に至ることがあるからです。

 

AI によるソリューションが役立つのは、この点です。AIなら、投稿原稿の妥当性を、スマートな意味論的手法でスクリーニングすることが可能です。原稿内に記述された概念を抽出し、ジャーナルの出版物のコンセプトに一致するかどうかを確認することで、ジャーナルと投稿論文のマッチング状態を素早く判断できます。

 

また、スクリーニング機能で各セクションのタイトルを抽出することもできるので、そのジャーナルでアクセプトされるタイプの論文であるかどうかを判断することもできます。さらに、言語レベルを評価して、査読者が研究の質を判断できる基準に達しているかどうかを確認します。

 

原稿がこれらのスクリーニングのいずれかで不合格となると、編集者は、AIによる自動評価が正しいことを確認するためにダブルチェックを行います。評価が正しければ、原稿はデスクリジェクトとなる可能性があります。これは、投稿プロセスの終わり方としては残念ですが、少なくともこの方法なら、数週間も待つことなく、数時間で結果を知ることができます。

 

査読者を見つける


先ほど述べたように、査読者を見つけることは年々難しくなっています。査読を引き受けてくれる査読者を見つけるためなら、どのようなものでも歓迎すべき状況なのです。ここでもAIが役に立ちます。過去に同様のテーマで論文を出版したことのある著者を見つけ出し、査読者候補として推薦するのです。ただ、共著者に査読を依頼することのないよう、全著者名と、謝辞で挙げられている名前を確認する必要があります。

 

これは平凡なプロセスでありながら、論文の出版においてもっとも時間がかかるステップの一つです。AIがここで作業をスピードアップしてくれるなら、それは歓迎すべきことでしょう。

 

査読プロセス


査読を引き受けた査読者は、高く評価されるべきです。その負担を減らし、査読プロセスを充実させ、査読にかかる時間を短縮するために、何ができるでしょうか?それは、投稿の時点で行なったさまざまな評価結果を、査読者と共有することです。これには主に2つの利点があります。些末な評価ポイントはすでに評価され、問題なしと判断されているので、安心して専門性内容の評価に集中することができるのです。査読者が論文の内容に集中できるようにすることで、査読プロセス全体が合理化され、より楽なものになります。少なくとも査読者にとっては、より充実した作業になることでしょう。

 

AIはさまざまな方法で活用できますが、適切かつ倫理的に使えば、編集プロセスにおける人の意思決定をサポートする優れたツールとなります。CACTUSには、出版社 論文著の双方に役立つさまざまなソリューションがあるので、興味を持った方はぜひ詳細を確認してみましょう。

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