研究の限界を示す理由とその方法:ケーススタディ

研究の限界を示す理由とその方法:ケーススタディ

事例:ある著者からエディテージ・インサイトに相談が寄せられました。彼女は、同僚と共同執筆した論文の第一著者でした。2人は、研究を進める過程で、研究デザインに結果の妥当性を疑わせる欠陥があることに気付きました。しかし、すでに相当量のデータが収集済みだったこともあり、この問題を抱えたまま先に進むことにしました。


論文執筆が最終段階に入ったところで、同僚が「リジェクトにつながるかもしれないから、この欠陥を研究の限界として述べるべきではない」と主張しました。それどころか、「より強固な結果を示すために、図表の数値をいくつか変更すべきだ」とも主張しました。第一著者である相談者が、データを操作することにも限界を隠すことにも反対すると、共著者は論文投稿の承認を拒否。これを受け、第一著者は、このようなケースにおける対応策と、研究の限界を隠すことの是非について、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。


対応:エディテージの出版エキスパートは、データの操作はいかなる形でもけっして行なってはならないと伝え、それが重大な学術不正であることを説明しました。また、研究デザインに欠点があることについては、論文内で説明すべきだと助言しました。説明のない状態で査読者がこの問題に気付けば、確実に指摘され、それがリジェクトにつながることもあるためです。一方、研究デザインに問題があることがあらかじめ述べられていれば、研究全体のプロセスや方法論、結果の範囲について著者が完全に把握していることを示すことができます。


また、研究の限界について述べるときは、研究のインパクトを弱める形で書かないようアドバイスしました。このためには、問題点をポジティブなものとして示す必要があります。具体的には、それぞれの課題を簡潔に説明した上で、課題があっても研究結果が重要である理由や、今後の研究がその課題によってどのように方向付けられるかを説明します。このように今後の課題を体系的に説明することで、研究の厳密性や妥当性を、逆にアピールすることができます。今後の課題を述べたら、まとめとして、研究の意義と価値を繰り返し説明します。こうすることで、研究のインパクトを弱めることなく、今後の課題を示すことができるでしょう。


このアドバイスをもとに第一著者が共著者の説得を試みたところ、共著者は提案した変更に同意し、論文を投稿することも承諾したため、論文は無事に投稿される運びとなりました。


まとめ:完全無欠な研究など存在しません。研究とは、レンガを地道に積み上げていくような作業であり、新たな研究の11つが、先行研究の問題点を土台として生み出されているのです。現時点での研究の限界を読者に伝えることは、未来の研究の方向性を提供するという意味でも重要なのです。


研究の欠点を隠してしまうと、余計な注意を引くだけでなく、研究プロセスの厳密性が疑問視され、著者がプロセスや妥当性を十分に理解していないという印象を与えてしまいます。自己批判的な姿勢を持ち、研究の欠点を認めることによって、研究の不完全性を著者自身が認識していることを示せるだけでなく、査読者からの指摘を前もって防ぐことにもつながるのです。


ただし、研究の欠点を弁解がましく述べることは避けましょう。それぞれの欠点を明確にしつつ、それでもなおその研究が重要である理由と、課題が今後の研究にどうつながるのかを説明することが肝心です。そのように説明すれば、たとえ欠点があったとしても、プロセスの妥当性や厳密性という点から、研究の総合的な信頼性や価値を高めることができるでしょう。


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