研究者でない私は何者?

研究者でない私は何者?

世界は直線的ではありません。そんなことはあり得ませんが、私はそれに気付くのに長い時間がかかりました。でも、気付いた今は、この非線形の世界で巻き起こるさまざまな展開を楽しんでいます。


私は生物学の研究者で、土壌微生物学、産業水の浄化検査、化粧品や食品の検査、生殖生物学などの分野に携わってきました。駆け出しの頃は、フルタイムの研究職とは別に、短期の仕事(主に標準作業手順書[SOP]などの技術文書の執筆)も行なっていました。その流れで、スピーチの翻訳やウェブコンテンツの執筆といった、科学以外の文書も扱うようになりました。


6年半に及んだ最後の研究プロジェクトを終えた後、その後のキャリアの選択肢の1つとして、科学コミュニケーションの分野を検討し始めました。そして研究活動を休止し、クリエイティブライティングの世界に飛び込んでから、今もその世界で活動を続けています。


1年半ほど所属したクリエイティブライティングのフォーラムでは、スキルを磨きつつ、自分の進む方向は間違っていないという自信を育みました。今は、クリエイティブライティングが人生の重要な部分を占めています。さまざまなトピックについて執筆しながら、科学に関する身近な情報を追い続ける中で、生物学以外の科学分野に興味を持つようになり、自分の周りに敷いていた境界線が消え始めていることに気付きました。すると、人や物事や世界についてもっと知りたいと思うようになり、人生がより楽しくなりました。私はついに、誰かが作ってくれた「象牙の塔」を飛び出し、真の好奇心をエネルギー源にして自分の足で歩き始めたのです。


研究者は、特定の課題を長期にわたって突き詰めることを求められます。研究をしていた頃はそのプロセスを楽しんでいましたが、研究から離れてクリエイティブライティングに没頭するようになると、過去に経験したどの研究プロジェクトよりも、得られるものがはるかに多いことを実感しました。すでに週間最優秀ライターに12回以上選ばれましたが、まだまだこれからです!


長年、研究者としてのアイデンティティしか持たなかった私にとって、ライティングだけでなく旅行、哲学の勉強、社会・政治問題についての議論、絵画、写真、グルメ体験など、色々なことに熱中する自分を発見できたことは、歓迎すべき変化でした。その変化は、客観性を保つためにさまざまな分野の研究プロジェクトに積極的に取り組んでいた科学者としての自分を呼び覚ましました―自分の人生を振り返ってみると、安全を確保するための選択をしたことはありませんでした。いつでも、正しいことをするという信念に基づいて選択してきました。それは、私という一人の人間の在りようを反映しているのでしょう。私は客観的な目を持った探求者であり、新たな知識や概念を吸収することが大好きです。この2年間、得意分野とはかけ離れた分野の技術(人工知能など)にのめり込んでいたのも、そのためでしょう。


今後も科学コミュニケーションの道を歩み続けて行く中で、自分の中の探求者の心を忘れないよう努めたいと思います。取り組む活動が科学以外のライティングでも、テクニカルライティングでも、研究でも、私が私であることだけは確かです。もう1つ確かなのは、自分がいつかは研究の道に戻るということです。それがいつになるかは分かりません。自分の人生がどう転ぶかは誰にも分からないことです。ただ、今後も嬉しい驚きに満ちた人生であることを願っています。希望を持つに越したことはありませんから!

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