研究者のための時間管理術10選

研究者のための時間管理術10選

 

締め切りがすぐそこに迫っているにも関わらず、作業がなかなか進まない――そんな状況は、想像しただけで背筋が寒くなります。もう間に合わないと悟る頃には、「もっと綿密に計画を立てて時間管理をしっかりしておけばよかった」と後悔するしかありません。


研究者は多くのタスクを抱えています。少なくとも、論文や助成金申請書の執筆、研究発表の準備、そして研究そのものに取り組むことが必要です。さらに、学生への講義や指導、査読などに携わっている研究者も多いでしょう。また、知的刺激のあるこれらのタスクとは別に、研究関連のさまざまな管理業務や事務作業もこなさなければなりません。そして、予期せぬ遅延などにより、限りある時間はさらに削られていきます。


研究者として成功を収めるには、与えられた時間を最大限に活かす能力が不可欠です。効率的に時間管理を行なえば、締め切りに追われるストレスや仕事の遅延を避けられるだけでなく、よりスムーズで充実した研究生活を送れるようになります。この記事では、能率改善に成功した研究者たちの、時間管理術の知恵をまとめました。


1. プロジェクト管理ツールを使う:時間管理で重要なのは、効率的なプランニングを行うことです。そこで有効なのは、学期や年度が始まるごとに、システマティックな計画を練っておくことです。オンラインのプロジェクト管理ツール(AsanaTrelloProofHubなど)を活用することで、仕事を計画的に進めやすくなります。エジンバラ大学の博士課程に在籍中のケイティ・ガンビア・ロス(Katie Gambier-Ross)氏は自身のブログで、「2年前にデジタルカレンダーを導入してから、人生が変わりました」と述べています。


2. 複数のタスクを同時に進める:主な目標をリストアップしたら、複数のタスクを同時進行できるかどうかを検討しましょう。こうすれば、目標に向けて着実に前進することができます。たとえば、論文の執筆なら、実験と分析をすべて終えるまで待つ必要はありません。論文の「方法」セクションは、実験を行いながらでも書けるはずです(このタイミングなら、実験手順の詳細をより鮮明に記憶できているでしょう)。どのタスクを同時進行できるかをあらかじめ決めておくことで、生産性を上げることができます。


3. 現実的な締め切りを設定する:重要な作業に締め切りがある場合は、期日から逆算してタスクをさらに分割し、分割したタスクごとに期限を設けましょう。その際は、各タスクに起こり得る問題などを考慮して、現実的な期限を設けましょう。一日や一週間のタスクを詰め込み過ぎると、逆に非生産的になってしまう場合があります。モチベーションが下がったり、スケジュールを守ることを止めてしまったり、オーバーワークで序盤に息切れしてしまったりしては、元も子もありません。無理な計画にならないよう、余白を設けることを心がけましょう。メキシコの大学で助教を務めるラウル・パチェコ・ベガ(Dr. Raul Pacheco-Vega)博士は自身のブログで、最初はすべての目標を達成することに囚われていたものの、計画通りに実行できるタスクだけをリストアップする方法に変えたと述べており、「このやり方が重要なのは、自分が常に多くのことを達成したがるタイプの人間で、体や生活に悪影響が生じるまで無理をしていることに気付かないタイプだからです」と記しています。


4. 日々の「やることリスト」を作る:日々のやることリストを作ることは、一日の仕事の成果を追跡するためにも、良い方法です。完了したタスクを一日の終わりにチェックしていると、大きな達成感が得られます。次にやるべきことが頭の中にしっかり残っているうちに、勤務時間の最後の5分を利用して、翌日のやることリストを作っておきましょう。


5. 優先度の高いタスクのための時間を確保する:重要なタスクを集中して行うための時間を確保しておくことは、研究者として賢明な戦略です。一部の研究者は、一日の始めの数時間を執筆用に確保しておくことで能率を上げています。朝一番の時間をメールの対応に費やすのではなく、その時間を論文や助成金申請書の執筆に当てることで、設定した目標に近づき、達成感が得られます。「Finish Your Thesis Academy」の創設者で、現在MITの博士課程に在籍中のドーラ・ファルカス(Dora Farkas)氏は、自身のブログで次のように述べています:「メールを読むことから一日を始めるということは、自分の長期目標に向けた行動よりも、他者のリクエストを優先しているということです。目標に向かって着実に前進するためには、最優先のタスクで一日を始めることです」。


6. 「ノー」と言う勇気を持つ:研究者にはさまざまなリクエストや機会が次々に降りかかってきます。しかし、そのすべてに応えていると、仕事の妨げとなったり、本来の目標を見失ったりすることにつながります。「今の自分にもう1本査読を行う余裕はあるか?」、「この学会に出席する必要は本当にあるか?」などと自問してみましょう。


7. 気が散るものをそばに置かない:集中して仕事に取り組むときは、携帯電話のプッシュ通知をオフにするか、サイレントモードにしておきましょう。仕事が一段落する度に、5分間だけ電話やメールをチェックしましょう。ただし、その場ですべてのメールに返信することは避けましょう。急を要するものにだけ簡潔に返信し、残りは後回しにしても問題ないはずです。


8. 先延ばしにしない:先延ばしは、適切な時間管理の最大の敵です。私たちは皆、気乗りしないタスクや困難なタスクに向き合うことがどれほど難しいかを知っています。先延ばしを避ける方法の1つは、プライベートの予定がある日に難易度の高いタスクを組み込むことです。たとえば、仕事の後に映画を観に行く予定があれば、それまでに何とかそのタスクを終わらせるようにするでしょう。ノッティンガム大学の博士課程に在籍中のアガタ(Agata)氏はこの方法を勧めています:「時間管理において、仕事終わりの予定ほどモチベーションを上げてくれるものはありません。職場や研究室を決まった時間に出なければならない日は、何もない日に比べて、生産性に大きな差が出ます」。


9. 脇道に逸れない:私たちのほとんどが、これをやった経験があるはずです。メールの返信などの重要度の低いタスクを「大事なもの」だと自分に言い聞かせて、気乗りのしないタスクを先送りにしてしまうのです。このような行動は避け、できる限りスケジュールに沿って行動しましょう。メールの返信は、一日の中の決まった時間に行いましょう。メールの返信や優先度の低いタスクは、集中力が比較的低下している時間帯を当てるようにしましょう。


10. 休憩を取る:オーストラリア国立大学のリサーチ・トレーニング・ディレクター、インガー・ミューバーン(Inger Mewburn)博士は、デスクに張り付いたまま一日を過ごさないことをブログ「The Thesis Whisperer」で推奨しており、集中する時間帯を12時間単位で設け、区切りごとに休憩を取ることで生産性が向上すると述べています。この休憩中に、散歩や水泳、ヨガ、サイクリングなどの運動を取り入れることで、大きな効果が期待できます。忙しい日は、コーヒーを片手に外の空気を吸いに行くだけでも体と心が落ち着き、新鮮な気持ちでデスクに戻ることができるはずです。これとは別に、家族や友人と過ごす時間も、仕事でベストパフォーマンスを発揮するのに大きく役立つでしょう。


スケジュールに沿って計画通りに仕事を進めることも大事ですが、無理のしすぎは禁物です。やる気に満ち溢れている日もあれば、生産性の上がらない日もあるという事実を受け入れましょう。重要なのは、全体として長期目標に沿って動き続けること、そして、自分の計画を定期的に見直して、うまく行っている点と改善点を検討することです。ワークスタイルは人によって違うので、この記事で紹介したヒントや戦略が合わない人もいるかもしれません。それでも、この記事のどこかには、きっとそれぞれに響くものがあると思います。それを実践すれば、生産性を上げることにつながるでしょう。

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