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遺伝子および遺伝子産物の表記法に関するアドバイス
スタイル(書式)には、単純で分かりやすいものもあれば、専門的な理解が必要となるものもあります。遺伝子や遺伝子産物は、後者の事例といえます。「種の学名は斜体で印刷する」、「遺伝子記号は斜体で印刷する」などは単純な取り決めですが、遺伝子命名はもう少し複雑です。本記事は、単純なアドバイスというより、遺伝子命名の複雑さに注意を払うきっかけとしてほしいとの意図で書かれています。
複雑さの原因の一つに、有機体(生物)によってスタイルが変わってくるということが挙げられます。ヒトの遺伝子の命名は、International System for Human Gene Nomenclature(ヒト遺伝子の命名に関する国際規約)に沿って行われます。ほとんどの種で、優性遺伝子は最初が大文字の斜字体、劣性遺伝子は小文字で表されます。例えば、Hs(最初が大文字で斜字体)はトウモロコシの優性遺伝子である毛の多い鞘(皮)の遺伝子を表しますが、sh(小文字)は劣性遺伝子である収縮胚乳を表します。この例はまた、最初の数文字では、必ずしも特定の単語と結びつけられないことを示しています。
有機体の種類によってスタイルが異なるという話に戻りましょう。酵母の遺伝子記号は斜体3文字の連続で表し、優性遺伝子には大文字、劣性遺伝子には小文字を使います。例えば、MALは麦芽糖の発酵に関わる遺伝子で、galはガラクトースの発酵に関わる遺伝子です。酵母は菌類ですが、他の菌類グループの遺伝子記号は、上記の規則には従いません。
さらに、座(loci-locusの複数形)には、染色体中にある遺伝子が占める場所である遺伝子座を示すものや、対立遺伝子(alleles)といって、染色体で同じ遺伝子座を占めるものの、突然変異を経て、同じ形質の異なる形状を引き継いだものもあります。遺伝子座は、遺伝子記号の末尾に斜体のアラビア数字を上付きで置いて表しますが、対立遺伝子は、遺伝子記号の先頭に小文字の上付きで置いて表します。
遺伝子記号は通常、斜体で表しますが、遺伝子産物はローマン体あるいは(斜体でない)標準書体で表します。例えば ヒトのハンチントン(タンパク質)遺伝子、あるいはハンチントン病遺伝子はHDで表し、ハンチントン病にはHDを使います。
以上から、遺伝子及びタンパク質の命名法は複雑で、単純な規則に従っているのではないことがお分かり頂けたと思います。
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