様々なスタイルを理解するための研究者用リソース(書評)
著者は、ある特定のスタイル(書式)ではなく、別のスタイルを使うよう求められることがよくあります。例えば、引用文の区切りにカンマを使わない、3桁ごとの数字の区切りにはカンマではなくスペースを入れる、といったことです。単にスタイル上の問題であるから従わざるを得ないと考えられがちですが、「スタイル」は、ほとんどの著者や読者にとって全く別の意味を持つ場合があります。
Scientific Information Transfer: The Editor's Roleの中で、コクラン(Cochran)氏とヒル(Hill)氏は4つのスタイルを挙げていますが、スタイルの話をする際、人々が必ずしも同じことを意味しているわけではないと述べています。心理言語学者で認知科学者のスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)氏は、「文章の質を改善するための原則と、迷信やこだわり、きまり文句、伝統的な言い回しとして伝えられてきたルールとして定められたものを区別」しています。
科学者にふさわしく、ピンカー氏のアドバイスは確固とした証拠に基づいています。ピンカー氏は、最近の著者は、どのようなアドバイスに対してもその根拠を提示するよう求めていることを認識しているのです。そして、そのような理由や証拠を示すことで私たちを安心させてくれます。「文章を読むときに起こっている精神面の動きに関する一連の研究体系があります。それは、読者が文章の一節を理解する時に記憶負荷が増大したり弱まったりすること、意味を理解するにつれて知識が増強されること、そして読者の注意をそらしてしまう行き止まりとなるものに関するものです」。
ピンカー氏は、良い書き方は良い読み方から生まれるという見解を持っており、良質な散文をいくつか選んで詳細に分析する、良い文章の「逆行分析(リバース・エンジニアリング)」という方法を示しています。ついでながら、ピンカー氏は連続カンマ(語句を3つ以上列挙するときに最後のandの前にカンマをつけること)を用いることを好み、意味内容に応じて引用符をつける英国方式を好むようです。
The Sense of Style: The Thinking Person's Guide to Writing in the 21st Centuryは、様々なスタイルを理解したいと望む著者にとって、役立つ情報源です。
[1] Cochran W and Hill M. 1978. Four kinds of style, pp. 341–343 in Scientific Information Transfer: the editor’s Role, edited by M Balaban. Dordrecht, the Netherlands: D Reidel. 686 pp. [Proceedings of the First International Conference of Scientific Editors, Jerusalem, 24–29 April 1977]
<http://link.springer.com/book/10.1007/978-94-009-9863-6/page/1>
[2] Pinker S. 2014. The Sense of Style: the thinking person’s guide to writing in the 21st century. London: Allen Lane (Penguins). 368 pp.
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