外国人材を阻む日本の壁
日本は海外からどれくらい興味を持たれているのでしょうか。米学術団体「現代言語協会」の調査によると、2016年の秋学期に米国の大学と大学院で日本語を受講した学生は68,810 人でした。2013年から3.1%増加していたものの、スペイン語(712,240) やフランス語(175,667)などとは桁違いに少ない数です1。日本語の学習という点から米国の状況を見る限り、日本への興味はとくに高いとは言えないようです。それでも、「日本について知りたい」「日本に興味がある」という人は一定数います。その人たちの意欲に、日本は十分に応えられているでしょうか。
失われた人材獲得のチャンス
新型コロナウイルスのパンデミックは、日本への留学に大きな影響を及ぼしました。留学生へのビザ発給は2020年春から2022年3月まで停止されていたため、来日を希望していた学生たちは、約2年にわたって我慢を強いられていたことになります。
コロナ禍前、日本では外国人留学生を30万人に増やす計画が掲げられており、2019年には過去最多の約31万人まで増加していました。しかし、コロナ禍による外国人の入国制限の結果、2021年には約24万人にまで減少しました2。
「留学生は、将来、日本研究者となったり、日本語の翻訳・通訳に従事したり、日本企業、あるいは日本関連企業に就職したりするなど、国際社会における日本の認知度向上、理解増進に貢献してくれる可能性のある貴重な人材」です1。留学生の受け入れが長期にわたって中断されていたということは、そのような人材を獲得するチャンスを逃してきたということになります。
外国人研究者への高いハードル
一方、留学生とはまた違った立場にある、日本を研究対象とする外国人研究者も、日本への入国を制限されていました。2022年8月10日現在、外国人の新規入国は「日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認める」3という、厳格な条件付きで許可されている状況です。
入国のハードルが高ければ、日本への渡航をあきらめるケースも出てくるでしょう。そうなれば、日本を知ってもらい、日本について世界に発信してもらう貴重なチャンスがつぶれることになります。日本への興味が薄れれば、グローバル社会での存在感が薄れることにもつながります。せっかく日本に関心を持ってくれている外国人の気勢をそぐような硬直的な制度については、一考の余地があるかもしれません。
制度面だけでなく、日本語も外国人に対する壁になっています。「大卒程度の学歴で専門的な技術や知識を持つ外国人の採用に当たり、高い日本語での会話力を求める企業の姿勢が就労の壁になって」おり、「求人の7割超が最高水準の日本語力を要求するのに対し、レベルを満たす求職者は4割弱にとどま」っています4。これはコロナ禍の前から見られる状況でしょう。
世界に目を向ける
1987年に設立された「国際日本文化研究センター」は、「日本文化を国際的な視野で、学際的かつ総合的に研究」していくことを目指す研究機関です。ウェブサイトには、「外からの分析は、しばしば国内の研究に刺激をあたえてきました。内向きに自閉しかねない日本の研究状況へ、新機軸をもたらすこともあったのです。私どもが日本文化研究の国際化をめざすのは、そのためです。海外の多様な研究には、国内の研究を活性化させる可能性が、ひそんでいます」5とあります。
日本では、世界と伍する研究大学の実現を目指し、10兆円規模の大学ファンドの運用が決まったばかりです6。本気で世界と伍することを目指す覚悟を持つなら、外国人を警戒対象として見るのではなく、新たな視点と多様性をもたらす存在として歓迎することで、視界が開けるのではないでしょうか。
参考資料
1. https://news.yahoo.co.jp/articles/9288afc0a9a9b8280700d14ff084787c905abac4?page=4
3. https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page22_003381.html
4. https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78796430W1A221C2MM8000/
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