ポスドク研究員がワークライフバランスを保つには

ポスドク研究員がワークライフバランスを保つには

ポスドク研究員になるということは、多くの場合、家庭を築く、マイホームを購入する、奨学金を返済するなどの個人的責任の上に、また1つ新たな責任を負うことを意味します。一般的にポスドクは、終身制の教職に就くための足掛かりとなります。単に博士課程の延長と捉えられがちなポスドクという立場ですが、実際は、先述の個人的責任の上に、プロフェッショナルとしての責任を負わなければならない立場なのです。


新米のポスドク研究員は、自らの価値を証明しながら評価を積み上げていく必要があります。ポスドクとして経験を重ねていく過程では、研究費の獲得や昇進へのプレッシャーがのしかかってくるでしょう。また、多くの国で研究費が制限されている現状では、教員職に就くために必要な論文発表件数を達成して助成金の獲得実績を得るまでに、これまでより数年長くポスドクを務める必要があるかもしれません。


ポスドクを何年にもわたって前向きかつ健全に務めるためには、良好なワークライフバランスを保つことが重要です。もちろん、そのバランスは人によってさまざまです。だからこそ、自分が何を望み、何を許容する覚悟を持っているのかを把握しておくことが大切になります。


たとえば、草サッカーチームに所属していて、練習に参加しなければならない状況にあるとしましょう。あなたは、練習時間が夜遅くにずれ込むことを受け入れられますか?それともチームをやめることを検討しますか?配偶者があなたと同じく多忙なポスドクである場合、平日に夕食をともにする時間を確保できないことを受け入れられますか?それとも、週末は仕事をしないという約束事を作りますか?子供がいる場合、研究室にいる間はベビーシッターを雇いますか?それとも託児所に預けますか?仕事と、子供のサッカーの試合や音楽の発表会を両立する準備は整っていますか?自分の目標や目的、許容への覚悟、自分にとって良好なワークライフバランスとは何か、といったことを理解できれば、上記の問いの答えに向けて動き出すことができるでしょう。


ポスドクになるということは、多くのトラブルシューティングをこなしつつ仕事に追われる生活を送る可能性が高くなるということです。以下で、仕事とプライペートの黄金バランスを保つためのヒントを紹介します。


1. 研究室選びは慎重に

研究者の多くは、多額の研究費を獲得している大きな研究室に入ることを望んでいます。このような研究室は知的刺激に満ちており、(科学者にとって重要である)的確なネットワークの構築にもつながります。一方で、困難な仕事を要求される可能性もきわめて高く、その場合は多くの時間を割かなければなりません。このような研究室にいるポスドクは、熾烈な競争の中で深夜まで働かなければならないような労働環境に身を投じているのです。


研究室にはそれぞれの労働文化があり、その競争レベルやストレスレベル、労働負荷は大きく異なります。したがって、自分の優先順位をはっきりさせてから研究室を選ぶようにしましょう。研究室に在籍中のポスドクたちと話して、求められている仕事や就業時間を把握しておきましょう。家族との生活を優先させたい場合は、この点を考慮して研究室を選びましょう。


また、候補の研究室が現在の居住地から離れている場合は、生活にどのような影響があるか、その影響を許容する覚悟があるかどうかを検討しましょう。パートナーは、あなたと一緒に引っ越す意思を持っていますか?持っていない場合は、離れて暮らすことを受け入れられますか?新しい街を探索するのは好きですか?それとも、慣れ親しんだ場所に住み続けたいですか?これらの問いは、生活に長期的な影響を及ぼす要素であるため、研究室を選ぶ上でよく検討しておかなければなりません。このアドバイスは、私自身の経験に基づくものです。私は、博士課程修了後、住居から離れた街にある有名大学の研究室にポスドクとして採用される機会を得ました。しかし、夫と一緒に引っ越すことは現実的ではなく、私自身も離れて暮らす覚悟を持てなかったため、この機会はあきらめざるを得ませんでした。


2. 労働条件を上司と相談する

早朝から働くのが好きな人もいれば、深夜勤務を好む人もいます。また、週末に働きたい人もいれば、そうでない人もいます。研究室によっては、あなたの好みに合わないスケジュールで働かなければならないこともあるでしょう。候補の研究室で、望んだワークライフバランスが維持できそうな場合も、研究室のほかのメンバーと異なる働き方を望む場合は、あなたの優先順位や好みのスケジュールについて、上司と相談する必要があります。多くの場合は、あなたが生産性を維持できている限り、上司は臨機応変に対応してくれ、摩擦が生じることもないでしょう。


私はポスドク時代、娘の保育所に合わせた時間で働く必要がありました。その時間に沿った実験計画を立て、上司には、17時半までに研究室を出なければならないと伝えていました。その代わり、毎朝8時半には必ず出勤するよう心掛けました。そのため、同僚とは若干異なるスケジュールで動いていましたが、生産性に影響を及ぼすことなく、自分の優先順位に従って働くことができました。


3. ルーティンを守る

個人的なニーズを考慮した上で、自分に合ったルーティンを設定しましょう。自分のライフスタイルにもっとも合う勤務時間を選択してください。朝型人間なら、早い時間から働き、夜は家族との時間や趣味の時間にしましょう。遅い時間の方が生産性を保てるなら、午前中はほかの活動をする時間にあて、午後から働き始めるのもよいでしょう。どのような選択をしようと、できる限りそのルーティンを守るようにしてください。そうすることで、1日の行動パターンが固定されてより効率的に動け、プライベートの時間を確保できるようになります。また、労働に終わりがないと感じているポスドクは多いと思いますが、どのようなスケジュールで働こうと、仕事を家に持ち帰ることはできるだけ避けましょう。仕事とプライベートを明確に線引きすることで、頭を休ませて良好なワークライフバランスを保つことができます。


4. スケジュールを立てる

効率的に働くためには、スケジュールを立てることが大切です。その際は、就業時間や個人的なニーズ、さらに、自分の研究や研究室内で負うべき責任について考慮しましょう。そして、それらのタスクを就業時間中に可能な限りこなすよう心掛けましょう。たとえば論文の執筆中は、残業するのではなく、実験の待ち時間に研究方法などのセクションを書いてしまいましょう。また、通勤時間が長い場合は、その時間を使って助成金の申請書類を書いてしまいましょう。時間を効率的に使ってください。実験や〆切りの都合で、ルーティンを守るのが困難なときもあるでしょう。1週間かけて長い実験を行わなければならない場合は、翌週のスケジュールを軽めに設定しましょう。平日の夜に家族行事がある場合は、週末に仕事の埋め合わせをしましょう。このように、仕事とプライベートのバランスを適切に保つよう心掛けることが大切です。


生産的でいるためには、幸福でいること、生活に充足感があることがきわめて重要です。自分がやっていることを楽しめているときは、仕事とプライベートを切り離して考える必要性はないのかもしれませんし、仕事こそがエネルギーや創造性の源となっていることもあります。必要なのは、自分にとって何が大切なのかを把握することです。そうすることで、活力を保つための最適なバランスを見つけることができるでしょう。


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