研究資金を有効活用するための5つのヒント

研究資金を有効活用するための5つのヒント

 

助成金の申請が受け入れられたら、今度はそれを適切に管理しなければなりません。責任感を持って助成金を有効に活用するためには、判断力と管理能力が求められます。とはいえ、たとえ経験豊富なベテラン研究者でも、資金の管理は難しいものです。そこでこの記事では、研究資金を上手に管理するためのヒントをお伝えします。

 


1. 予算を使う際のルール/ガイドラインを知る

 

どの組織も、助成金の利用に関する独自のガイドラインを定めています。その内容は、民間企業、政府機関、病院、非営利団体など、立場によって大きく異なるので、個別のガイドラインについて理解したい場合は、各組織の担当者に問い合わせましょう。

 

海外の助成金を取得した場合は、資金の使用に関する国独自の規制がないか確認してください。共同助成金については、関係各所(研究機関や資金提供機関)のガイドラインを確認した上で、ガイドラインに不一致点や相違点があれば適宜解決しましょう。

 


2. レビューと書類作成に備える

 

多くの資金提供機関は、資金が効果的に使われていることを確認するために、助成対象者を定期的にレビューします。レビューは現場訪問のほか、進捗レポートや監査レポートなどの形で行われます。このような書類仕事は煩わしく感じられるかもしれませんが、助成金を管理するためには大事な作業です。

 

多くの資金提供機関は、実際に資金を拠出する前に、進捗レポートを提出することを義務付けています。資金の受領が遅れるといった問題を回避するためには、レポートを期限内に提出できるよう準備しておくことが重要です。また、主任研究者は、プロジェクト完了時に2部構成の完了報告書を提出しなければなりません。これは、助成金を適切に使用したことを資金提供機関に保証するだけでなく、将来の助成金確保のための履歴を残す上でも重要な文書です。

 

完了報告書の前半では、文献レビュー、材料と方法、結果および結論について述べ、プロジェクトの科学的な側面について説明します。内容と構成は論文と似ているため、プロジェクトの進行中に作成して、随時更新するとよいでしょう。そうすることで時間を節約できるだけでなく、ストレスや作業の過負荷による土壇場でのミスを回避できます。

 

完了報告書の後半では、予算の使用状況について詳細に説明します。担当者に財務報告書について確認し、必要に応じて組織内の監査人にも相談して、要求事項をすべて満たしていることを確認しましょう。

 


3. 資金を効果的に配分する

 

助成金の支出は通常、物的資源、人的資源、その他雑費の3つの費目に分類されます。物的資源に割り当てられた資金は、原則として、特殊な機器の購入など、必要なインフラの追加や変更に限定されます。人的資源に割り当てられた資金は、プロジェクトに従事している人たちに、労働時間と技術的貢献に基づいて支払いを行うために確保します。

 

これに加え、一部の資金提供機関は、物的資源にも人的資源にも当てはまらない費目(視察や会議のための旅費、特殊機器の輸送費)に資金を自由に割り当てることを認めています。これらの費目の細かな解釈は資金提供機関や研究機関によって異なりますが、規定のテンプレートを使うことで資金を活用しやすくなります。

 


4. 資金の乱用を避ける

 

2.で述べたように、プロジェクトの完了後は、資金の使途を詳細に述べた報告書を提出しなければなりませんが、この報告書には十分注意する必要があります。というのも、時間不足や情報の確認不足のために、深刻な計算ミスが起きる可能性があるからです。たとえば、必要な期間を超えて野外調査を延長し、その費用を助成金で賄うといった一見小さな行動が、重大な経済犯罪につながる可能性があります。このような資金の乱用は、たとえ意図的でなくとも、資金提供組織からの信頼を著しく損なう可能性があります。

 

長期にわたって資金が提供されるプロジェクトの場合は、前年度の未使金の繰り越しが無条件では許可されない場合があります。必要な承認を得ずに前年度の資金を使用すると、深刻な結果を招く恐れがあるので、資金提供機関と適宜コミュニケーションを取り、必要に応じて翌年度への資金の繰り越しを求めることをお勧めします。すべての支出が説明可能であることを確認し、将来の研究に関係のない未使用金は、適切に返還しましょう。

 


5. 予算の変更が必要になったら直ちに報告する

 

研究では、不測の事態に対処しなければならないケースがしばしば起きます。したがって、最初の提案とは異なる方法で進めなければならなくなることがあります。これは、助成金の用途が変わり得るということでもあります。その変更の理由は、研究者からすれば合理的で妥当であるように思えても、資金提供機関にとってもそうとは限りません。そのため、修正案が承認されるまでに時間がかかることもあります。予算変更に対する先方の意向を把握しておくためにも、プロジェクトの進捗については定期的に報告しておくようにしましょう。こうすることで無用な混乱を回避し、資金のタイムリーな執行につなげることができます。

 


参考文献

 

1. Neema, S. & Chandrashekar, L. Research Funding—Why, When, and How? Indian Dermatol. Online J. 12, 134–138 (2021).

 

2. NIH Public Access Policy Page | Office of Research Infrastructure Programs (ORIP) – DPCPSI – NIH. https://orip.nih.gov/funding/nih-public-access-policy-page.

 

3. Research - Four Principles Governing the Appropriate Use of Grant Funds. https://ustpaul.ca/en/research-four-principles-governing-the-appropriate-use-of-grant-funds-_7498_1225.htm.

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