研究者の皆様に2022年に実行してほしいこと
多くの研究者がCOVID-19の解明に取り組み続けて2年が経ちました。この間にいろいろなことが分かってきたのは大変喜ばしいことです。まだまだ予断を許さないCOVID-19の研究も含め、2022年を実り多い年にするためには、どのようなことに取り組んだらよいのでしょうか?この問いをCACTUS社内で投げかけてみたところ、興味深い答えが返ってきました。どの意見にも、日々の業務で学術出版の変化とそれが研究者に与える影響に向き合う中での視点が反映されています。
Dr. Donald Samulack
Head, Global Stakeholder Engagement
病理生理学博士。神経科学の専門家。世界中の学術界の出版ニーズに向き合い、優れた出版慣行への認識とそれを実現する専門技術の向上に積極的に取り組んでいる。学術出版、著者支援、研究コミュニケーションの一連の流れに精通し、科学を迅速に伝える機運を高めてワークフローを確立することを目指している。
「研究者は情報の波にもまれていますが、そのすべてを理解するのが仕事であると言えるでしょう。ただ最近は、情報のノイズや気を散らせるようなものが急増しています。COVID-19の流行によってすべてが変化しましたが、そこで生じたひずみが、研究成果を得るために重要なことに集中する能力を、以前とは違う性質のものにしたように思います。
ジャーナル、ソーシャルメディア、情報サイト、電子メールなどの情報フィードは怒涛のように押し寄せ、膨大な実験データや個別の研究環境のプレッシャーものしかかってきます。さらに私たちは、ついつい何か(Netflix、TikTokなど)にのめり込んでしまう弱さを持っています。
そのような中で研究者としての成功を目指すには、情報をふるいにかけ、フォローするコンテンツのチャネルを減らす必要があるでしょう。成功の鍵は、重要なことにピンポイントで焦点を合わせ、投資した時間に対して高い学術的利益をもたらす情報のチャネルに集中することです。
もちろん、事情や状況は分野、環境、地域、人によって異なるでしょう。それでも、焦点を定めて情報ノイズを減らすことは、2022年の成功にとって絶対的に重要だと思います」
Clarinda Cerejo
Senior Director, Thought Leadership
研究者が仕事と私生活で成功できるようサポートする活動に15年以上にわたって取り組んでいる。科学本来のパワーが存分に発揮されるよう、科学の伝え方を改善することに情熱を注いでいる。
「今は、ジャーナルで論文を出版する以外にも、研究結果を世界に発信する方法がたくさんあります。2022年は、研究者の皆さんが自分の殻を破ってコンフォートゾーンから脱け出し、新しいことにチャレンジすることをおすすめしたいと思います。たとえば、研究結果を分かりやすくまとめて(何を行い、何が見つかり、なぜそれが重要なのか)LinkedInやMediumなどのウェブサービスでシェアする、公開論文のリンクをツイートして憧れの研究者にタグ付けする、ジャーナルへの投稿前にプレプリントを公開する、自分の出版論文について科学ジャーナリストと話をしてみるなどはどうでしょう?このように、いろいろなことができると思います。研究者の皆さんが自ら発信しようとすれば、目の前には無数の扉が開いていることでしょう!」
Dr. Shilpi Mehra
Head, Publication Support Services
歯科医の資格を持つ。ボストン大学とアムステルダム自由大学の修士課程では疫学と生物統計学を専攻した。CACTUS入社前は、英国の国民保健サービス(NHS)とインペリアル・カレッジ・ロンドンに10年以上勤務し、研究の公開の管理や公衆衛生プログラムの監査を担当していた。自らの経験を活かして研究者の出版プロセスをサポートすることに意欲的に取り組んでいる。
「今年一年のプランはもう立てましたか?論文出版の難易度は上がるばかりです。実際の作業量を考えると、これまで以上に、一年の計画を綿密に立てることが重要ではないでしょうか。今年の年末を迎えたときに、皆さんが望んだ場所に立っていられるよ、目標達成に役立つ4つのアドバイスをお送りしたいと思います。
- 今年の後半に論文が書けそうなテーマは何かを考えてみましょう。
- 論文のドラフトに目を通して足りない点や改善すべき点を指摘してくれる仲間を見つけましょう。継続的なフィードバックをもらえるように、進捗状況を常に共有しましょう。
- テクニカルレビューという形で、専門家による論文出版支援を行なっている企業があります。このような機会を利用して、方法の問題点、やり直しが必要な実験、倫理面の課題などを洗い出して修正しましょう。
- 今年中に論文の準備ができそうにない場合は、研究を中途半端な形で公開するのではなく、また来年に向けて準備を進めましょう。
皆様の目標達成を心から応援しています!」
Christine Hu
General Manager, China
中国オフィスの外部代表として中華圏の業務を監督している。出版、情報サービス、臨床ソリューション、製薬の各分野で、マーケティング、コミュニケーション、政府対応の豊富な経験を持つ。CACTUSでの活動に参加する前は、外商投資企業協会医薬品研究・開発委員会およびWolters Kluwer Chinaの幹部職と、チャイナデイリーの上級職に就いていた。
「研究者なら誰しも、COVID-19のパンデミックでこの2年間の研究活動が不安定な状態に陥ったと思います。そのような状況に対処する上で何が役立ったかを、自分なりに3つ挙げてみてください。そして、パンデミックによる混乱に加えて学術界に馴染むことにも苦労している若手研究者に、その3つを共有しましょう。若手研究者はそこから、失敗や後悔への向き合い方、困難な時も前向きでいるための心の持ちよう、まだ漠然とした将来に立ち向かうチャンスをつかむ方法を見つけるためのヒントを得ることができるでしょう」
Andrea Hayward
Senior Associate, Global Community Engagement
メンタルヘルスに関心があり、心理学を学んだ経験を持つ。最近ではCACTUSのメンタルヘルス調査の取り組みを担当した。研究者たちが、つながり、共有、サポート、成長を模索するための仮想コミュニティプラットフォーム、Researcher.Life Voiceの管理を担っている。
「研究者の皆さんは今年こそ、自分自身にもっと目を向けましょう。自分のことを後回しにするのではなく、心と体の健康と幸福を最優先にしてほしいと思います。学術界では常に働いていることを良しとする文化があったかもしれませんが、それは正しいことではありません。メンタルヘルスの低下や極度のストレスは、一人前になるための通過儀礼などではなく、丁寧なケアが必要です。助けを求めたからといって、弱いとかプロらしくないということはないのです。2022年はより多くの研究者が、燃え尽き症候群になるまで働く必要はなく、自分に合ったペースで取り組めばよく、自分の価値は生産性の高さと不眠不休で働くことで決まるのではないと考えてくれることを願っています」
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