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適切な研究方法を選ぶには
研究は、学術論文、学位論文、各種報告書を書くための足掛かりになることが多いと思います。適切な研究方法を選べるかどうかで、執筆する論文の質が決まることもあるでしょう。そのため、研究の初期段階でこの選択を誤らないことが、きわめて重要です。この記事では、研究方法の種類と、適切な研究方法の選び方を詳しく説明します。
研究方法の違いを理解する
データ収集には、「量的(定量的)研究」と「質的(定性的)研究」という2つのアプローチがあります。それぞれについて、詳しく説明します。
量的研究
量的研究で得られたデータは、通常、数値やグラフなどの形で理論や仮定を立証するもので、トピックに関する事実情報として扱われます。量的研究では、以下のようなさまざまな方法で事実情報を集めます:
- アンケート調査:多項選択式や評価形式の質問を用意し、対面または電話、もしくはオンラインで回答してもらう。報告書では、結果を述べる前に、調査を実施した日時と場所、回答者が回答に要した時間、回答率などの情報を示す。また、どのようなデータを集めたのかが読者に分かるように、付録としてすべての質問のリストを添付してもよい。
- 実験:管理された環境下で実験を行い、その結果としてデータを得る。この種のデータは、因果関係を把握するために変数を制御・処理した状況で使われる。報告書では、実験をどのようにデザインしたか(例 被験者間か被験者内か)や、実験にどのようなツール・技術・手順を使用したかなど、あらゆる情報を示すことが望ましい。
- 既存データ:既存の資料(先行論文や保存データなど)から集めたデータを分析する。報告書にデータをインプットした後、データの取得元、データの生成方法、データ範囲の選択基準などの情報を示す。
- 観察:変数が制御できない、自然な状態にある人を観察する。
- 内容分析:特定の単語や一連の文章の使用状況を体系的に記録して、コミュニケーションパターンを分析する。
量的研究では、以下の情報を含めることもできます:
- データをどのように用意したか
- データ分析に用いたソフトウェア(例 Stata、SPSS)
- 使用した統計手法(例 回帰分析)
量的研究の例
所属先の大学に通う300人の学生に、「教授の指導能力に対する満足度を、5段階で評価してください」という質問をする。
集まったデータを統計分析すれば、「教授に対する学生の評価は、平均4.4だった」といった結論が得られる。
質的研究
質的研究とは、インタビュー、フォーカスグループ、ケーススタディ、談話分析、文献レビューなどを通して、人々の思考・発想・経験などを知ろうとするものです。基本的には、人々の考えや経験を収集するための調査という形で行われます。
質的研究には以下のような方法があります:
- インタビュー:回答者に、口頭で自由回答形式の質問をする。インタビューを、いつ、どこで、どのように行なったかを述べるとともに、次の情報も示す:
- 回答者の集め方(または選び方)
- 回答者の人数
- インタビューの形式(構造化、半構造化、非構造化)
- インタビューの所要時間
- インタビューの記録方法(例 映像や音声で記録する、メモを取る)
- 調査対象としたグループやコミュニティについて
- 回答者へのアクセス方法
- フォーカスグループ:所定のトピックについてグループディスカッションを行なってもらい、意見を集める。
- ケーススタディ:ある事象、組織、人物、集団について、詳細な調査を行う。分析するケーススタディの素材(テキストや画像など)の選び方、分析した素材の種類、それらの収集・選択方法について説明する。
- 文献レビュー:ほかの研究者による先行研究を調べる。
- 質的研究では、画像、言語、観察に基づいて分析を行う(通常、テキスト分析を含む)。また、次のような方法を用いることもある:
- 内容分析:文・単語・フレーズの意味を検討・分類する。
- 主題分析:データを符号化して慎重に調査することにより、広範な主題と傾向を特定する。
- 談話分析:社会的文脈に関わるコミュニケーションと目的を分析する。
質的研究の例
20人の学生に1対1でインタビューを行い、「履修課程の学習にどの程度満足しているか?」、「学習プログラムの良い面は?」、「学習プログラムを改善するにはどうすればいいと思うか?」といった質問をする。得られた回答に基づいて、文字起こしソフトですべてのインタビューを書き起こし、回答の共通点や傾向を見つける。
混合研究法
これは、徹底調査と数値測定を組み合わせたものです。
たとえば、学生が学習にどの程度満足しているかを調べるためのインタビューを実施したら、新しい知見が得られます。その知見を、より大規模な知見を検証するためのツールとして使うのです。
別のアプローチとして、最初に傾向・意見・信念を知るための調査を行なった後で、その傾向の背後にある理由を掘り下げるためのインタビューを行う方法もあります。
量的研究と質的研究の違い
量的研究と質的研究は、異なる方法でデータを集め、異なる種類のリサーチクエスチョンへの答えを導き出すものです。
量的研究 | 質的研究 |
理論や仮説の検証にフォーカスする | アイデアを検証することと、理論や仮説を立てることにフォーカスする |
数学や統計による分析を行う | 要約・分類・解釈による分析を行う |
主に数値・グラフ・表で示す | 主に言葉で示す |
多くの回答者を要する | 少数の回答者でよい |
クローズドクエスチョン(多項選択式) | オープンクエスチョン(自由回答形式) |
キーワード:試験、測定、客観性、再現性 | キーワード:理解、文脈、複雑性、主観性 |
量的研究と質的研究の使い分け
量的データと質的データのどちらを使うかは、おおまかに以下のように判断しましょう:
- 量的研究:対象(理論や仮説)の立証や検証をしたいときに適している。
- 質的研究:対象(概念、思考、経験)を理解したいときに適している。
ほとんどの研究テーマは、量的研究、質的研究、あるいは混合研究法のいずれかを使用します。どれを選ぶかは、以下の要素に左右されます:
- 研究で帰納的アプローチを用いるのか、演繹的アプローチを用いるのか
- リサーチクエスチョン
- 実験的研究・相関研究・記述的研究のうち、どれを行うのか
- その他(予算、時間、データの利用可能性など)
量的データと質的データの分析
量的研究でデータを集めたら、統計分析を行なって、データの傾向や特徴を見きわめます。結果は、グラフや表で示すとよいでしょう。SPSS、SAS、エクセルなどのアプリケーションを用いて、次のようなパラメータを算出することができます:
- 平均値
- 特定の回答がなされた回数
- 2つ以上の変数の相関性
- 結果の信頼性
質的データは、数字ではなく画像・テキスト・動画なので、量的データよりも分析が難しくなります。
以下は、質的データを分析するための一般的なアプローチです:
- 質的内容分析:言葉やフレーズの位置、発生、意味を追跡する。
- 主題分析:データを徹底的に分析して主題や傾向を特定する。
- 談話分析:社会的文脈においてコミュニケーションがどのように成り立っているかを調べる。
まとめ
本来の目的は、単に研究方法を説明することではありません。重要なのは、「なぜ」「どのように」その方法を採用したのかを述べることと、研究が厳密に実施されたことを示すことです。量的または質的研究を選んだ理由と、選んだ研究法が目的の達成にどのように合致するのかについて、読者を納得させることが必要です。そして、選んだ研究手法は、リサーチクエスチョンや課題ステートメントに明確に答えられるものでなければなりません。選んだ手法が、セクション全体を通して、論文の主題に常に即していなければならないのです。
方法セクションの書き方について詳しく学びたい方にはこちらがおすすめです:
How to write the perfect methods section(コース)
How To Write Methods Section In Research Paper?(ハンドブック)
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参考資料
- Research Methods & Design
- Chapter 3 - Research Methodology: Data collection method and Research tools
- Research methodology
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