グラフに説得力を持たせるには
論文の執筆は簡単な作業ではありません。研究者は、難解なアイデアをできるだけ分かりやすく説明しなければなりません。つまり、あらゆる意味で優れたストーリーテラーになり、読者にとって分かりやすく共感しやすい形で自分の考えや物語を伝える必要があるのです。
これは、とくにグラフで示すときに重要になります。グラフは論文の重要な要素です。複雑な情報を視覚的に示すことで、読者は、著者が伝えたいことをつかむことができます。優れたグラフは、ジャーナル編集者、査読者、読者に好印象を与えることができ、互いにとって都合よく作用します。この記事では、研究のストーリーに説得力を持たせる強力なグラフを作成するためのポイントを紹介します。すべての視覚情報がそうであるように、何より重要なのは、グラフ(またはインフォグラフィックや動画など)の軸となるストーリーです。ストーリーを混乱させたり妨げたりするものを紛れ込ませてはなりません。とにもかくにも、ストーリーの一貫性を維持しなければならないのです。
1. ストーリーから脱線しない:言うまでもなく、グラフの視覚的要素は重要です。そもそも、グラフ自体が視覚情報です。グラフを見て、500ワードのテキストを読み、再びグラフを見ないと意図が伝わらないようなグラフでは、不十分です。グラフ(視覚化されたデータ)は、ストーリーを完全に、または完全に近い形で伝えるものでなければなりません。
2. すべてのデザインに意味を持たせる:グラフのデザインは、意図を持って行いましょう。赤が好きという理由だけでグラフに赤を使うことは避けましょう。何らかの色を使うなら、その色は、何かを伝え、明確化し、関係性やアイデアを強調するなどの目的を達成するための視覚的手段でなければなりません。オシャレだからという理由だけで、グラフ中の1点をほかよりも大きくするのも避けましょう。そうするのは、その特定のデータに適切なタイミングで関心を持ってもらうためでなければなりません。
3. ストーリーを補う方法を探る:情報の補完ができる箇所では、現代的デザインの原則を利用できないか検討してみましょう。具体的には、グラフやその他の視覚情報のデザインに役立つツールなどが利用できるでしょう。たとえば、Vismeのようなツールで散布図などを作成する場合は、読者にできるだけ豊富な情報を提供できる方法がないか考えてみましょう。
散布図の例についてさらに付け加えるなら、読者が各データポイントに実際にインタラクトできる方法についても検討してみましょう。各データポイントをクリックするとアイコンやアニメーションやツールチップなどが表示されるシステムを利用すれば、特定のアイデアを強調・説明しながら、読者が能動的に発見する機会を創出することができ、唯一無二のユーザーインターフェースもしくはユーザー体験を提供することができます。
ただし、このようなツールを使える環境があるからといって、必ず使わなければならないわけではありません。それらを使うかどうかを決めるのは、ストーリーです。このようなツールは、慎重に使わなければなりません。むやみに使うと、ノイズや複雑さが増し、本来伝えたいメッセージと正反対のメッセージが伝わってしまうかもしれません。
4. デザインの凝りすぎ(オーバーデザイン)に注意する:必ず避けたい罠は、デザインに凝りすぎることです。長い時間をかけてグラフをカラフルにして、あらゆる形や要素を詰め込んでも、それらの要素が、本来伝えるべきメッセージを邪魔するノイズにしかなっていないケースがあります。
そのような状態を避けるには、すべてのデザイン要素に目的を持たることです。「デザインのためのデザイン」になってしまっては元も子もありません。グラフのような、視覚に大きく依存する形式ではなおさらです。あるデザインについて、そのデザインの正当性を語ることができないなら、すなわち、「私がこうした理由は○○です」と他者に説明することができないなら、そのデザインを利用する必然性はないということです。
何よりもストーリーが重要
利用するすべてのデザイン要素は、伝えたいストーリーを補う役割を持っていなければなりません。そして、ストーリーから脱線するものであってはなりません。常に意識すべきは、「短く、簡潔で、要領を得ている」という3点です。この3点を意識できている限り、ほかのことは考えすぎなくてもよいでしょう。以上のヒントに留意しながら、適切な心構えを持ってグラフのデザインに取り掛かりましょう。
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