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研究者を餌食にするハゲタカ学会:ケーススタディ
事例:ある発展途上国の若手研究者が、国際学会での研究発表の招待メールを受け取りました。研究者は学会発表の経験がなかったため、この招待を大変喜びました。メールには、「あなたの研究を高く評価しており、研究が完了したら国際誌での論文出版をオファーする」と書かれていました。さらに、学会の開催予定地は風光明媚な土地なので、学会発表と併せて観光ツアーにも参加できると書かれていました。
登録料は高額であったものの、この招待に大きな魅力を感じた研究者は、登録することにしました。事前に学会のウェブサイトをチェックして、分野で著名な研究者が発表者リストに含まれていることを確認したので、研究者は安心して登録手続きを進めました。
数日後、学会の運営者から、やむを得ない事情で学会が中止になったとのメールが届きました。研究者は登録費用の返還を何度も求めましたが、学会から返事が返ってくることはありませんでした。そこで研究者は、エディテージ・インサイトにアドバイスを求めました。
対応:学会のウェブサイトを確認すると、この学会はさまざまな分野の研究を対象としており、その幅が広すぎるという印象を受けました。学会名には「interdisciplinary(学際)」という言葉が冠されていたものの、腫瘍学からデータ科学までを扱う学会はそうあるものではありません。
また、運営委員にはさまざまな分野の著名研究者が含まれていました。その中の1人は高名なジャーナルの編集責任者であり、偶然にもエディテージ・インサイトとつながりのある人物でした。彼に問い合わせたところ、学会のことを何も知らなかったため、明らかに運営委員ではないことが分かりました。この事実によって、その学会がハゲタカであるという疑いが確信に変わりました。
このようなケースは過去にもあったため、学会が返金に応じる可能性は低いと考えられました。しかし、私たちは最後の手段として、返金を強く求める旨のメールを運営者宛てに送るよう助言しました。そのメールには短い返答があり、「返金には応じられませんが、数ヶ月後に開催予定の学会に招待します」と書かれていました。私たちは、時間の無駄になる可能性が高いので、その学会には出席しないようアドバイスしました。今回の経験を教訓として、今後学会に登録する際は、さらに慎重になるよう伝えました。
まとめ:ハゲタカジャーナルやハゲタカ出版社と同じように、ハゲタカ学会も、研究者から高額の費用を騙し取る営利目的のグループによって組織されています。偽学会の多くは、発表や出席を依頼するメールを研究者に一方的に送りつけます。たいていの場合、発表内容は短期間でアクセプトされ、査読が行われることもありません。
本人に無断で著名な研究者を運営委員に加えるのは、ハゲタカ学会の常套手段です。偽学会の組織は不安定で、出席者が少ない、セッションがキャンセルされる、投稿が撤回される、低品質なプログラムが使われている、などの共通点があります。総じて、このような学会で得られる経験は、その高額な登録料に見合っていないと言えます。学会自体が中止になることもあり、この場合も払った登録料は戻ってきません。一般的に、若手研究者は学会発表や学会への出席に積極的であるため、このような疑わしい学会の餌食になりやすいようです。
以上のことから、研究者は、ハゲタカ学会を見分ける術を知っておく必要があります。以下は、質の低い学会、偽学会、ハゲタカ学会の特徴です:
- 複数の研究分野を対象とし、「international(国際)」や「interdisciplinary(学際)」といった包括的な言葉が含まれていることが多い。
- Eメールで発表や出席の案内を何度も送る。組織のメールアカウントではなく、無料のメールアカウントを使用している場合が多い。(例:xyzconference@gmail.com)
- 学会運営者の情報がウェブサイトに明記されていない。または運営者が無名。
- 発表用のアブストラクトがすぐに(数週間程度で)アクセプトされる。
- セッションの内容よりも、開催地に関する情報が豊富。
- 出席者にさまざまな見返り/オファー/特典を約束する。
- 論文出版を保証する。
学会に申し込む前に、すべての情報を念入りにチェックしましょう。出席するなら、学術団体が運営する学会や、同僚や教授が知っている学会や出席経験のある学会が望ましいでしょう。
「Think. Check. Attend.(考えて、確認して、出席する)」は、研究者が健全な学会と怪しい学会を見分けるためのガイドラインを提供する取り組みです。出席を考えている学会を簡単なチェックリストで評価し、信頼できる学会に出席しましょう。
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