オープン・ピアレビュー: オープンな科学への第一歩となるか?

オープン・ピアレビュー: オープンな科学への第一歩となるか?

オープンな科学は、科学データと研究を広く一般の人が利用できるようにすることを目指し、学者によって熱心に広められてきました。研究者が自分たちのデータを共有し、研究をオープンアクセスにする必要があることは別として、査読をオープンにすることは、オープンな科学へという動向と一致しているのではないでしょうか? 

科学的査読は科学論文の中心的存在の一つであり、掲載前に研究の正確さを実証する手段として、ジャーナルにより採用されてきました。査読は偽物の科学を排除するのに効果があると考えられてきましたが、システムとして欠陥がないわけではありません。たいていのジャーナルではシングルブラインド・ピアレビューが使われていますが、そこでの情報には偏りがあるため、出版バイアス(Publication bias) の原因となったり、その他、不要であることが多い追加実験を査読者に要求されるといった問題を引き起こしたりしかねません。査読プロセスに透明性を与え、査読の影響力とアウトリーチを増やすため、F1000 Research,の共同発行人(associate publisher)であるMichael Markie氏は、An Open Science Peer Review Oathという論文の中で、査読者に対し「宣誓(‘oath’)」を提案しています。

Michael Markie氏らが提唱した宣誓は、「査読者の役割を成文化し、彼らがレビューする論文ができるだけオープンで再現可能になるよう、ベストプラクティスを奨励する」文章で構成されています。この宣誓は、査読者がレビューを始める前に行わなければならない宣言のことで、宣言文は以下の通りです。

  • 原則
    1:私はレビューに自分の名前を署名します


     
  • 原則 2: 私は、誠実にレビューを行います

     
  • 原則 3: 私は、レビューをあなたとの対話のように扱います:特に、建設的な批評を行うようにします

     
  • 原則4: 私はオープンサイエンスという業務にかかわる大使になります

 

彼らが、オープンサイエンスの査読者に向けて、公正かつ建設的なレビューを研究者に保証するため描いてきたガイドラインが実ったものが、この宣誓です。ガイドラインには、たとえば以下の文章がありました。

  • 私は、あなた(論文の筆者)の研究の改善を手助けするため、協力して仕事をします。査読は、オープンで、支持的で、協同的プロセスだと思っています。ですから、レビューに署名をし、身元を明らかにします。

     
  • データやソフトウェア・コードが本文と一致しているか、デジタルオブジェクト識別子やアクセッション番号が正しいか、また正しく引用されているか確認します。また、提示されているモデルがアーカイブされているか、参考文献に掲載されているか、アクセス可能であるかをチェックします。

     
  • 私が査読者として適切でなければ(専門の違い、著者との関係、いずれの理由にかかわらず)、査読を拒否します。そうすることで、これらの問題に対する公正な評価をジャーナルエディターに提供し、代わりの査読者が見つかるように、私がどのようにしてこの判断に至ったかを率直に説明します。

 

たいていの機関・学会に公式の査読訓練はありませんので、査読者は自分の経験と専門知識にたよって査読を行っているのが普通です。ですから、この論文を書いたMarkie氏らは、ジャーナル側のプロセスに合わせて調整される可能性がある査読者たちに、一般化された道しるべ を与えたいと願っています。オープン・ピアレビューはすでに、Pensoft Publishers や、これまでオープン・ピアレビューを採用してきたJournal of Open Research Software から支援を受けています。

オープン・ピアレビューへの批判としてよく引用されているのは、論文に対しあまりに批判的で、長期にわたって著者との関係を維持できないことを、著者が嫌がるかもしれないということです。それ以外にも、最近は、研究の妥当性を疑問視した同僚を名誉毀損で訴える研究者もいます。法的対立を避けるため、査読が一般に公開されるようになると、査読者は査読するとき穏やかでいようとするかもしれません。

サイエンス誌の編集長Marcia McNutt氏は、次のような見解を述べています。「不十分な批評は、非公開の査読によって傷つけられた感性よりも、科学に多くの害を及ぼす可能性がある」

査読をオープンで透明にしようと取り組んでいるジャーナルがある一方で、反対の立場をとるジャーナルもあります。つい先日、ネイチャーは論文著者がダブルブラインド・ピアレビューを選択できるような方法を導入しました。研究結果を効果的に実証する完璧な方法を求める学者たちによって、何年もの間、査読に対し様々な試みがなされてきました。伝統的な査読は今でも強い力を持ち続けていますが、科学をよりオープンで、すべての人がアクセスできるようにするためには、オープン・ピアレビューは有望であると思われています。 

 

 

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