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投稿前に共著者全員の承認を得ていますか?
事例: ある論文の校閲を依頼されました。共著者が三人いて、そのなかの筆頭著者(Aさん)が終始、私たちと連絡を取り合い、最終的に彼は私たちの校閲にも満足してくれました。そのAさんからは、どのジャーナルに論文を投稿したらよいかという相談も受けました。論文を投稿して数ヵ月後、Aさんから連絡があり、嬉しいことに、その論文は採択されたとのことでした。ところが、彼は奇妙な問題に直面し、どうしたらよいかわからなくなっていたのです。ジャーナルの規則では、掲載の前に、すべての共著者から著者資格(オーサーシップ)の確認を得る必要がありました。ジャーナルが他の共著者に連絡したところ、一人の共著者(Bさん)からは前向きな返事を得られましたが、もう一人の共著者(Cさん)は「自分の同意なしに論文が投稿された」として、自分が共著者であることを拒否しました。私たちと連絡を取っていた筆頭筆者のAさん(彼は同時に責任著者(corresponding author)でもありました)は、「論文を投稿する前に彼に連絡済みで、なぜ彼が今になって論文の撤回を求めているか理解できません」と言っていました。
対応: さらに尋ねてみたところ、共著者であることを拒否したCさんは、研究期間中に、AさんとBさんが所属していた研究機関を辞めて別の機関に移っていたことがわかりました。彼が異動した後は、Aさん、Bさんとも研究の諸段階においてCさんと連絡を取っていませんでした。ですから、AさんとBさんは、Cさんの承認なしにデータの分析や解釈に重要な変更を行っていたのです。Cさんは、論文準備の最終段階にも関与しておらず、投稿したことを伝えられただけで、最終稿も見ていませんでした。私たちは、研究の諸段階において最新の進捗状況を共著者全員に伝えるのは、筆頭著者の責任であると説明しました。Aさんの側にコミュニケーションの不足があったのです。そこで私たちは彼に対して、今回の問題をジャーナルに連絡し、解決の時間をもらうよう助言しました。また、Cさんに対して謝罪し、問題を丸く収めるようアドバイスしました。Aさんは私たちのアドバイスに従い、Cさんの意見を取り入れた上で、論文を修正しました。BさんとCさんが最終稿の作成に関わったのです。その後、Cさんはジャーナルに対して自分の著者資格を認めたので、論文は出版に向けて処理され始めました。
まとめ: 国際医学雑誌編集者委員会(International Committee of Medical Journal Editors/ICMJE)のガイドラインによると、論文は出版前に共著者全員の最終的な同意を必要とするとしています。ICMJEのガイドラインに書かれている著者資格の基準は、以下の通りです。
- 研究概念、あるいは研究デザインに相当の貢献をするか、あるいは研究データの収集、分析、解釈に相当の貢献をし、かつ
- 重要な知的情報について、草稿を書くか、あるいはそれに対して批評的に修正を加え、かつ
- 掲載前の最終版に対して、最終的な承認を与え、かつ
- 研究のすべての側面に責任を負うことに同意し、研究のいかなる部分に対してであれ、その正確性と整合性に問題が生じた際には、調査し、解決するよう善処する
ある人に著者資格を与えるとは、これらすべての条件を満たす必要があることを覚えておいてください。共著者の全員が、上に述べた研究段階のすべてに関与し、論文に対し変更や修正があった場合には、それについて伝えられなければなりません。共著者それぞれが論文の最終稿に目を通す必要があり、投稿前には全員の書面による承認が必要となります。
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