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スタイル・マニュアルはどうやって改訂されるのか?
文章を書く人にとって、スタイル・マニュアルは非常に有益なツールです。研究・執筆の特定の分野に関連した語彙は絶え間なく変わるので、その意味を説明するために、辞書やその他の参考文献と同じように定期的な改訂が必要になります。言葉も生き物と同じで進化し続けるものなので、一貫性を保つためには、基準を記録し続けなければなりません。
それでは、どのようにして改訂されるのでしょうか? マニュアルというものはたいてい、学会や協会が発行しています。シカゴ大学出版はthe Chicago Manual of Style、アメリカ医師会はthe AMA Manual of Style、the Council of Science EditorsはScientific Style and Formatというように。マニュアルを出版した団体が、改訂版を出すべき(出すのに適した)時を判断します。多くの場合、エキスパートからなる委員会を作り、今後起こりうる動向や研究の変化を把握し、その他最近の権威筋と相談し、医療分野や国際標準化機構(the International Organization for Standardization)のような様々な特定の団体を頼り、その学会・分野、さらに読者にとって何が一番ベストなのかを判断します。
改訂でよく行われるのは次のようなことです。新たに開発された技術に関連する専門用語やスタイルの変更(例えば、ブログやポッドキャストという言葉は非常に普及したので、ソースとして引用されています。そのため、新しいスタイル・マニュアルでは、文献引用の標準的なフォーマットを設定しなければなりません)、新しい方針・規範・発見(例えば「2006年、国際天文学連合は冥王星を惑星から準惑星へと再分類した」)、政治的な出来事による国名の変更(例えば、かつてのソビエト社会主義共和国[USSR]は旧ソ連諸国15カ国へと解体されました)、辞書に載るような新しい医学的・分類学的用語など。
新しい版は、関連性と信頼性を保つため、それまでの全部の版をもとにしています。私が気に入っている例の1つに“tomorrow”という言葉の語源があります。一説によれば、 “tomorrow”は13世紀末から16世紀ごろまではto morowe あるいはto morgenneと、2つの単語として書かれており、16世紀にto-morrowのようにハイフンをつけるのが一般的になったということです。20世紀までにハイフンなしで書かれるようになり、1つの単語tomorrow
として、つまりこんにち(こんにちのtodayもかつては“to-day”と表記されていました)見慣れている形で表記されるようになりました。新たに出版されたマニュアルが単語の進化から目をそむけ、かたくなに"to-morrow”と表記しているとしたら、最新式だとは思ってもらえないでしょうし、仮に他の部分に書いてあることがらが、たまたま最新のもので正確だったとしても、引用元として信頼できないと疑われてしまうでしょう。これは、ハイフンがついていた単語は長い時間を経ると、ハイフンが取られる傾向があること、その結果マニュアルも改訂されることを示す、たくさんの例のうちのほんの一例です。 話し言葉や書き言葉の口語体における動向すべてが形式的な基準を決定するわけではありません。しかし、ハイフンをもうつけなくなった“email”や1つの言葉になった“website”のような動向は、多くの辞書やスタイル・マニュアルの最新版では標準になっています。それも、それらの語の用法、言語の将来に及ぼす影響力、形式的な文章における役割、そして同様の要因が、そうした決定を行うのに十分な知識と権威をもつと思われる専門家のグループにより詳しく吟味されているからです。
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