エルゼビアが新たなジャーナル評価指標「CiteScore」をリリース

エルゼビアが新たなジャーナル評価指標「CiteScore」をリリース

学術出版界に新しい評価指標が誕生しました。2016年12月8日、大手出版社のエルゼビアは、学術ジャーナルの質を測るための新評価指標群、CiteScoreを発表しました。ジャーナルのインパクトファクター(JIF)が信頼性を失いつつある今、エルゼビアによる今回の発表は、新たな評価方法の有効性や、適切な引用評価指標の必要性について、活発な議論を呼んでいます。エルゼビアの評価法研究の責任者であるリサ・H・カレッジ(Lisa H. Colledge)氏は次のように述べています。「現行の評価方法をどう捉えているかによらず、物事を改善する手段の1つとして、新たなデータ群の導入や、評価指標の開発に関心を持っている人は多いでしょう」。


CiteScoreは、以下の点においてJIFと一線を画しています:
 

  1. ジャーナルの影響度を、各論文の過去3年間の平均被引用回数を基に算出(JIFは2年間)。
  2. スコーパスに収録されているジャーナル(2万2,000誌)が対象。(JIFは、クラリベイト・アナリティクスによる Web of Scienceのジャーナル(11,000誌)が対象。)
  3. 研究論文だけでなく、引用可能な記事(ニュース、編集記事、編集者へのレターなど)すべてを対象として値を算出。
  4. オンラインで無料公開。(JIFは購読者にのみ公開。)ただし、より詳細な分析結果は購読者にのみ公開。


CiteScoreでは、すべての引用可能記事を対象に値を算出します。したがって、インパクトファクターの高い多くのジャーナル(NatureThe Lancetなど)は、研究論文以外のコンテンツを数多く扱っているために、JIFほど高い数値を得られないことが予想されます。ニューヨークを拠点とする出版コンサルタントのフィル・デイビス(Phil Davis)氏は、「CiteScoreが導入されれば、編集者は研究論文以外の記事の掲載に消極的にならざるを得ず、これらの記事は、ほかの出版物やウェブサイトに回されるようになるでしょう」と予測しています。


エルゼビアがCiteScoreの算出方法を明示している点について、多くの研究者はポジティブな反応を見せていますが、同社が評価指標を所有することに懐疑的な目を向ける人もいます。マサチューセッツ工科大学(MIT)図書館、Scholarly Communications & Collections Strategy(学術コミュニケーションおよび収集戦略)責任者のエレン・フィニー(Ellen Finnie)氏は、自身のブログで次のように指摘しています。「営利団体であるジャーナル出版社がジャーナルの評価指標を所有することには、本質的に利益相反という問題があります」。この新たな評価指標が学術界の発展に寄与するのか、またはほかの多くの指標のように支持を得られないまま衰退していくのか、今後の動向に注目が集まります。


*この話題についてどう思いますか?あなたにとって引用評価指標はどれくらい重要ですか?CiteScoreを参考にしますか?下のコメント欄からご意見をお寄せください。

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