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論文執筆における能動態と受動態の使い方
能動態は、行為者を強調する文体です。例えば“The mice inhaled the tobacco-infused aerosol,”という文では、行為者、つまり“the mice” が重要です。反対に受動態では“The tobacco-infused aerosol was inhaled (by the mice).” のように、取られる行為の方を強調し、行為者“the mice”を省略することができます。つまり、誰が行為者かを読み手がすでに知っているか、知る必要がないということです。重要なのは行為そのものです。
受動態にすると、行為者が前に出てこない非人称的な語調が加わり、形式的な感じがしますが、テキストは冗長でわかりにくくなります(特にセンテンスが長い場合)。最近まで、科学的文章では受動態が好まれており、能動態を使用しないこと、特に、研究論文の中で“I”や“we”を使うことは避けるよう勧められていました。
“In this study, we investigated the effect of drug X on the serum levels of phosphorus under various conditions” という文と “In this study, the effect of drug X on the serum levels of phosphorus was investigated under various conditions.”を比べてみてください。
しかしながら、近年は、研究論文とは読みやすく、わかりやすいものでなければならないという立場のもと、こうした伝統的な考え方に対し、能動態の使用を奨励する研究者も多くなっています。実際、『Nature』誌のように学際的でSCI(サイエンス・サイテーション・インデックス)に収録されているジャーナルや、『American Journal of Botany』のように専門的なジャーナルでは、著者への指示として、能動態が望ましいと言っています。そういうわけで、今日では、“In this study, we investigated…” という表現をよく見かけるようになっているのです。
それでは、能動態と受動態、どちらを使ったらよいのでしょうか?答えは、「両方を組み合わせて」と言えるでしょう。
能動態が特に役に立つのは、先行研究を議論し、自分の論文の導入となる「序論」と、「考察」の部分です。例えば、“Previous studies have established that drug X increases the serum levels of calcium in women with osteoporosis. In this study, we investigated the effects of drug X on the serum levels of phosphorus in post-menopausal women.” この文章では、二番目のセンテンスに能動態が使われていることで、読者は先行研究から当該研究へと心理的にスムーズに移行することができます。
これに対し受動態は、行為者よりも取られたステップの方が重要となる「方法」のセクションで役立ちます。例えば、外科的診療の記述にあたって、“We inserted a catheter for post-operative bladder irrigation.” という表現よりも、“A catheter was inserted for post-operative bladder irrigation” の方が読み手には好まれます。
大切なのは、能動態と受動態のどちらを取ることによって、伝えたいことがより明確になるかです。ターゲットにしている読み手がどんな情報を求めているかを考え、能動態と受動態のどちらであっても、テキストがより明快でわかりやすくなる方を選びましょう。この点を念頭に置きながら執筆すれば、能動態と受動態についてジャーナルの査読者からフィードバックを受けずにすむでしょう。能動態と受動態のどちらかを取ることによって、文の意味がより明確になる例を思いついたら、教えてください。
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