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自分の研究を広く伝えるための8箇条―2017年版
学術界は競争の世界です。成果を出して終わりではなく、その潜在力が最大限に発揮されるよう努めなければなりません。一度論文を発表したら、後は椅子に深く腰掛けて、人々がそれを読んで称賛してくれるのを待つだけ…という時代は、とうに終わりを迎えました。現代の研究者は、自身の研究を広く伝え、インパクトをもたらしてそれを証明する責任を負っています。さまざまな経路を通じて論文を知れ渡らせれば、より多くの人々に読まれ、ダウンロードされ、引用されるので、h指数が上昇し、研究者としての評価も高まり、より有利な状況を築いていくことができるでしょう。しかしながら、多くの研究者(とくに若手研究者)は、自分の論文を宣伝することに難しさを感じているようです。
より多くの人に論文への興味を持ってもらうための最善策は、良い研究をするということに尽きます。そのための努力を怠って、宣伝だけに力を入れることは無意味です。宣伝が意味を持つのは、質の高い研究を行なった場合のみです。この記事では、2017年からの出版戦略として、論文をオンライン上で拡散するためのタスクをチェックリストにまとめました。この戦略を遂行するために、まずは、注意点、アイデア、役立つリンク、ログイン情報などを記録するためのドキュメントを開きましょう(セキュリティにはしっかり気を配ってください)。
- オープンアクセス関連の最新情報を常に把握しておく
宣伝先に論文を見つけて読んでもらうためには、オープンアクセス出版に関する最新情報を常にキャッチしておく必要があります。
- ORCID iDを作る
ORCID iDは、とくに同姓同名の研究者がいる場合などに有効で、研究成果の混同を防ぐ意味があります。ORCID iDを登録して、著書名の混同を防ぎましょう。このIDを、自分のオンラインやオフライン上のプロフィール(ResearchGate、LinkedIn、Twitter、職務経歴書、所属機関のウェブサイトなど)に追加しておきましょう。
- 適切な論文タイトルおよびアブストラクトを用意する
論文を出版して宣伝したとき、人々がまず目にするのは何でしょうか?そう、タイトルとアブストラクトです!したがって、読者の興味を惹く優れたタイトルとアブストラクトを用意することがとても重要です。
- タイミングを見誤らない
アクセプトされた論文がいつ掲載されるのかを具体的に把握しておけば、宣伝効果が最大になるタイミングを計ることができます。論文の宣伝をするときは、リンク先(ハイパーリンクDOIなど)のURLを間違えないように気を付けましょう。
- 論文発表と同時に評価指標を追跡する
これは、ジャーナル単位のインパクトファクターにとどまりません。多くのジャーナルに掲載されている、論文単位の様々な評価指標(article-level metrics、ALM)を追跡することや(一例はPLOSの方式。または論文ごとのデータを追跡するMendeleyなどを使う)、個人の影響度を示す代替的指標を追跡することが可能です。無料で利用できる ImpactStoryでは、論文、ブログ記事、SNSアカウント、その他のデータソースの情報を掲載できます。
論文の拡散状況に関する適切な評価指標を追跡することで、自分の活動の紹介と説明がしやすくなります。また、研究の広がり度合いを実際のデータとして見ることはモチベーションの向上にも繋がり、傾向の把握や新たなチャンスに出会う可能性も高まります。早く追跡を始めれば、最初の日からさまざまなメリットが得られるでしょう。
- オンライン上で自分の存在を構築、管理する
追跡の設定が整ったら、自分のオンラインプロフィールが一貫しているかどうかをチェックしましょう。まずは、自分自身と業績についての情報が掲載されているすべてのプラットフォームを書き出しましょう。たとえば:
- 個人のブログやウェブサイト
- 所属機関、学会、研究グループ、研究プロジェクトのウェブサイト
- Facebook、Instagram、Snapchat、Pinterestなどの仕事用SNSアカウントや、Twitter、LinkedIn、Google+などの任意のプラットフォーム
- ResearchGateやMyScienceWorkなどの研究に特化したプラットフォーム
リストが書き出せたら、(いつでも編集できる状態にしておき)、プロフィール画像、重要ウェブサイトへのリンク(関連する業績など)、略歴などを、各プラットフォームにふさわしいボリュームの範囲内でまとめましょう。自己紹介文には、研究の動機や背景、業績など、興味を惹く詳細情報を含めましょう。すべてのプロフィールにORCID iDを記載することもお忘れなく。
- ウェブサイトの構造を理解する
論文を直接共有できるプラットフォームだけでなく、論文にリンク可能なウェブサイト用コンテンツを作る方法もいろいろあります(所属機関のウェブサイト、ZME Scienceなどの一般サイト、著者や研究者向けの学習ポータルサイトなど)。また、それぞれの論文に「物語」を付けることも可能です(たとえば、自分の研究テーマが研究グループ内でどのように位置付けられているか、所属機関内でのどのような活動を代弁しているのか、助成団体の発展への貢献をどう体現しているかなど)。
内容を追記する場合は、各ウェブサイトのコンテンツの様式やターゲット層を把握し、その層に向けた文章を書くよう心がけましょう。これらの情報は、それぞれの組織のSNSアカウント情報と共に、冒頭で述べた準備用ドキュメントに記録しておきましょう。最後に、各サイトへのコンテンツの提供方法を具体的に書いておきましょう(例: 誰に送るか[氏名、メールアドレス]、フォーマット、公開されるまでに要する時間など)。
- マーケティング担当者を有効活用する
所属機関や地域のマーケティング、広報、コミュニケーション担当者が、論文を宣伝するための大きな助けになってくれるかもしれません。2017年の宣伝活動チェックリストを作成中の今こそ、彼らに協力を仰ぎ、活動をスムーズに進めるために自分に何ができるかを検討してみる絶好の機会です。また、実際の支援が形になるまでに要する期間を確認しておけば、いつまでに素材を提供すればいいかといったスケジュールを立てやすくなります。
論文に関連したプレスリリースを発表してもらえる場合は、情報の送り先等、情報提供のガイドラインについて確認しておきましょう。Twitterを通じて宣伝をしてもらえる場合は、アカウント担当者や、ツイートに含める名前やハッシュタグを確認しておきましょう(相互フォローをお忘れなく!)。
以上がこの記事の前半です。後半では、効果的な宣伝プランを立てるために論文の出版前後にすべきことについて説明します。現代の研究者たちが成果の露出度を高める方法についてのコメントやご意見がありましたら、ぜひシェアしてください!
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