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不明瞭な論文出版費用が原因で同時投稿に:ケーススタディ
事例: 中国人著者から、自分の論文に適したジャーナル選びを手伝ってほしいとの依頼がありました。彼は当初から、出版費用や論文出版加工料(article processing charges, APC)を課さないジャーナルを選びたいとはっきり述べていました。エディテージの出版支援エキスパートがこの著者とやり取りをしていく中で、彼が中国語のジャーナルに論文を投稿し、受理されていたことが判明しました。このジャーナルは、論文受理後にAPCが課されることを著者に伝えていましたが、その金額は著者の予想をはるかに上回るものでした。APCが課されることはジャーナルのウェブサイトに書かれていましたが、金額は明記されていなかったのです。著者はジャーナルにAPCを免除してもらいたいと頼みましたが、受け入れられませんでした。著者は、APCを払わないまま、また論文をジャーナルから撤回しないまま、論文を国際英文ジャーナルに新たに投稿しようと考えていました。彼は、APCを支払わなければジャーナルは自分の論文を出版しないだろうと考えていました。したがって、二重投稿と責められることもなく、何の問題もなしに論文を別のジャーナルから出版できると考えていたのです。
対応: エディテージは、中国語のジャーナルから論文を撤回しないまま別のジャーナルに投稿することは出版倫理に反すると著者に説明しました。同時出版(concurrent/simultaneous submission)も倫理に反することであると説明しました。別のジャーナルに論文を投稿するのは、最初のジャーナルから撤回の承認を受けた後でなければなりません。さらに、受理された論文を撤回するのは出版投稿規定に反します。我々は、可能であれば、すでに論文が受理されている中国語のジャーナルから出版するよう勧めました。また、APCは所属研究機関が支払ってくれることが多いということを伝えた上で、APCを支払ってくれるかどうか所属研究機関に尋ねてみるよう著者に伝えました。すると、研究機関はAPCの一部を支払ってくれることが判明しました。次に、エディテージは著者に、中国語のジャーナルにAPCを減額してもらえないか尋ねてみるよう伝えました。エディテージのサポートを受けながら、著者は、問題点を述べた上で全額を支払うことができないことを説明する、説得力のあるメールを作成しました。メールでは、もしAPCが減額されなければ、著者は論文を撤回しなければならないということも伝えました。ジャーナルが返信の中で提示した割引後の金額は、著者の所属研究機関が支払ってくれる金額を少しだけ上回る額でした。著者は差額を払うことができ、論文は出版される運びとなりました。
一方、その論文は既に英訳されており、より幅広い読者層向けの研究だったため、エディテージは英語版を二次出版(secondary publication)として出版するよう勧めました。二次出版は、中国語と英語両方のジャーナル編集者にその旨を伝え、今回の場合なら、中国語論文を英語論文に引用文献として掲載すれば問題ありません。論文が中国語のジャーナルに掲載された後、エディテージはその論文に適した英文ジャーナルを探すことを手伝い、彼の論文は結局、二次出版という形で英語でも出版されました。
まとめ: 従来の購読者モデルの出版では、出版費用を回収するために読者が費用を払うことになっていますが、OAモデルでは、著者からAPCや出版費用を徴収することで出版費を賄っていることがあります
。この費用は、通常は著者個人ではなく、著者が所属する研究機関や研究助成機関から支払われます。財政的に余裕がない場合は免除されることもあります。ほとんどの国際英文ジャーナルには、APCに関する明確な規定があります。例えばシュプリンガー(Springer)社は、「よくある質問」の中にAPCに関する項目を設け、なぜシュプリンガー社のジャーナルはAPCを徴収するのか、何の費用に使うのかを説明し、ジャーナル毎の金額、免除が可能かどうか、などの詳細を示しています。評価の高い出版社であるBioMed Central、PLOS、Nature、Scienceなどは、APCに関する明確で詳細な情報をウェブサイトに掲載しています。地域限定のジャーナルも、APCに関する詳細な情報をウェブサイトに掲載し、著者が理解しやすいようにすべきです。
著者は、出版倫理を知らないがために、しばしば意図せず非倫理的行為を行なってしまうことがあります。著者は、論文を書いて投稿する前に、学術出版とその規範や倫理について自ら学ぶ必要があります。目標とするジャーナルの著者向けの指針をよく読み、はっきりしない点があれば事前に編集者に問い合わせるようにしましょう。
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