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ゴーストライターの仕事は評価されるべき?
代筆は、医学・薬学の文章では根強い問題の一つです。ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所のブルース・スピーゲルマン(Bruce Spiegelman)氏を巻き込んだ最近の事例では、ブルース氏の知らないうちに、研究所での研究結果が存在しない著者によってエルゼビア社のBiochemical and Biophysical Research Communications (BBRC)に掲載されてしまったというもので、医学分野でのゴーストライター(代筆者)の存在が再び注目されました。この事例は、ゴーストライターの問題を全く新しいレベルにしていますが、ゴーストライターを雇うということは、多くの科学論争でテーマになってきました。
ゴーストライターは、部門長や学部長のように研究への関わりがほとんど、もしくは全くない著者が論文の著者として認められるという意味の、肩書だけの著者とは違います。反対に、ゴーストライターのオーサーシップとは、論文の執筆に対し重要な貢献をしてきた著者が認知されないということです。このように、ゴーストライターの問題は広く、非倫理的行為としてとらえられています。
あるゴーストライターによると、クライアントはゴーストライターの貢献を認知したいということもあるのですが、製薬会社はそれに否定的だということです。会社から資金を提供されているゴーストライターは論文の執筆に対し報酬を受け取り、書かれた論文は会社内部で承認され、有名な科学者の名前で発表されるのです。知名度の低いライターの名前で発表すると、同僚の研究者が研究の信頼性に疑問をだくかもしれません。ですから、製薬会社はゴーストライターの名前を秘密にしたがるのです。ゴーストライターが書いた論文には報酬が与えられるので、本人や、結局は名前を使われることになる著者の考えは、バイアスがかかるおそれがあります。発表された結果を患者に適用する医師や研究者が、知らないうちに患者の健康を脅かす可能性があると、感じている人もエディターや著者の中にはいます。さらに、研究者が実際に書いていない論文を発表するのは、明らかな不正です。したがって、ゴーストライターは科学の世界から排除されるべきと思われているのです。
しかし、どんな論文であっても、それぞれ自分のデータの重みづけを促すような方略を用いているという意見の研究者もいます。ゴーストライターによる発表もまた、研究を世界に示す手段を促す方法の一つなのです。“Why Does Academic Medicine Allow Ghostwriting? A Prescription for Reform" というタイトルの論文の中でジョナサン・レオ(Jonathan Leo)は、医学界で代筆が「許されている」理由についていくつか説明しています。彼は著名な精神医学者たちが発表した論文の例を引いていますが、その中では出版社はゴーストライターの関与を認め正当化し、「この本は、8人のレビューアーにより別々に、(とりわけ)潜在的なバイアスがないか検討された。また、内容に対する業界や他の外部機関からの過度の影響はなかった」と宣言していました。出版社は、著名な研究者たちが詐欺行為や低品質の研究に自分たちの名前を付けるとは考えてもみなかったのです。
ゴーストライターのオーサーシップは複雑な問題ですが、エディター、研究者、製薬会社が合意していれば、適切に処理することが可能です。この問題に取り組むときに良い方法は、厳重な著者向けガイドラインをまとめることでしょう。 ジャーナルのエディターは、著者と関与している製薬会社の履歴をチェックした後で、論文を受理しなければなりません。すぐれた研究だけが、科学の倫理をふまえて発表されるべきなのです。
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