著者に優しいジャーナルになるために
インパクトファクターの高いジャーナルでの論文出版を目指す著者のプレッシャーは、よく話題になります。しかし、ジャーナルもまた、質の高い投稿論文を求めています。高いインパクトファクターを維持するには、引用される論文を掲載することが必要だからです。しかし、このことはあまり話題にされません。優れた投稿論文を呼び込もうと競い合っているジャーナルは、円滑な投稿プロセス、厳正な査読プロセス、迅速な出版プロセスの実現を通じて、著者にとって使いやすい媒体であることを求められています。この記事では、ジャーナルがこれらの目的を達成するための方法を提案します。
対象範囲と対象読者を明確にする
原稿が査読前に却下されてしまう「デスクリジェクト」の理由としてもっとも多く挙げられるのは、ジャーナルの要求内容との不一致です。ほとんどのジャーナルは対象範囲を特定の分野に絞っていますが、カバーしているトピックを述べると同時に、対象範囲外のトピックもリストアップすることで、対象範囲がより明確になります。同様に、対象読者像と、論文の種類(例 理論を前進させるための独自研究なのか、優れた実践につながる応用研究なのか、特定の事例への対処法を示すケーススタディなのか)を明確にすることも重要です。
学際的ジャーナルも、読者像を明確にする必要があります。たとえば、NatureやScienceなどのジャーナルは、多分野の最先端の研究を発表しているという点で学際的ですが、各論文は明らかにそれぞれの分野の専門家向けであり、一般読者向けではありません(ただし、一般向けの簡単な説明が掲載されることもあります)。一方、Scientific Americanなどの出版物も学際的ですが、各寄稿は一般の読者にも読みやすいものになっています。
著者への指示は簡潔かつ合理的に
ジャーナルの投稿規定をよく読んで、それに従うことは大切ですが、中には指示が長すぎる、複雑すぎる、些末すぎるといった理由から、必ずしもすべての指示が守られないこともあります。たとえば、倫理規定や文字数制限などのより本質的なルールに注意していた結果、図のキャプションがピリオドで終わっているかどうか、表番号が太字になっているかどうかのチェックを忘れてしまうということも考えられるでしょう。
ただ、ジャーナルはこのような点には徐々に寛大になってきており、受理された原稿の最終版を提出する場合のみ、書式設定やスタイルの詳細に注意すれば良いと考えるようになっています。最初に投稿する論文も、ある程度までは整える必要がありますが、その段階で力を入れるべきは、スタイルではなく、内容、科学、材料です。
ワークフローと手続きは手間のかからないものに
出版論文は、著者やジャーナルによる努力の産物です。論文投稿は、著者が現場や研究室で長時間かけて実験を行い、結果を分析し、論文という形でそれを(多くの場合は母語以外の言語で)まとめ上げるために数か月~数年をかけた作業の集大成です。ジャーナル側の作業(ワークフロー管理、査読、著者とのやり取り、校正や組版)は、著者の論文投稿後にスタートします。
著者からジャーナルへの作業の移行をスムーズに進めるためには、投稿のアップロード手順ができるだけシンプルかつ効率的であることがポイントです。どのファイルをアップロードすればいいのかを、最初の段階で明らかにしておきましょう: 例 Wordファイル(図表は別ファイルなのか、原稿ファイルに含めるのか。原稿ファイルに含めるなら、文中に配置するのか、末尾に配置するのか)、PDFファイル、宣誓書や証明書、カバーレター、キーワード等
投稿原稿のアップロードが無事成功したら、そのことがはっきりと分かるメッセージを示しましょう。何らかの不備があった場合は、不足しているものと、問題解決に必要なアクションに関するメッセージを明確に示しましょう。
著者との有意義で迅速なコミュニケーションを
論文がアップロードされたら、著者は待機期間に入り、ジャーナルは作業を開始します。通常はまず、ファイルに問題がないこと、必要な文書がそろっていること、内容がジャーナルの対象範囲内にあること、言語レベルとフォーマットが品質基準を満たしていることを簡単にチェックします。この一次審査を通過したら、査読者探しに入ります。一次審査を通過したら、まもなく査読に入ることを著者に伝え、実際に査読に入ったら、査読が始まったことを伝えましょう。一次審査を通過しなかった場合(デスクリジェクト)も、別のジャーナルに投稿できるよう、できるだけ早く通知しましょう。
査読に長い時間がかかることは珍しくありません。重要なのは、ジャーナルが査読者に適宜リマインダーを送るのと同様に、査読が続いていることを著者に適宜知らせることです。査読コメントが出された場合も、できるだけ早く著者に伝えましょう。却下が推奨された場合も、迅速に通知しましょう。
著者に優しいジャーナルとは、著者とのコミュニケーションに積極的なジャーナルです。著者にとって、「原稿の受領通知はすぐ来たのに、その後は何週間も音沙汰がない」という状況は苛立たしいものです。とくに、何ヶ月も待った結果がデスクリジェクトとなれば、大きな苦痛を与えることになるでしょう。著者が苛立たしさを感じるのは、却下そのものではなく、遅延もしくは無連絡なのです。
まとめ
「著者ファースト」のジャーナルは、託された原稿が才能、お金、時間、物的資源という膨大なリソースを投資した重労働の成果であることをよく分かっており、著者への気遣いがあります。その気遣いを反映した出版慣行が実現し、著者の出版プロセスができるだけスムーズなものになることを願っています。
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