質問: 研究成果発表を禁止された時の対処法とは?
ご相談頂きありがとうございます。最初にお伝えしておきたいのが、論争の対象になっているデータを使って、大学の許可を得ずに原稿を出版することは避けた方がいいということです。なぜなら、出版後の撤回やキャリアへの影響など、さまざまな結果が想定されるからです。したがって、強行突破の出版という選択は除外することをお勧めします。
このような場合の対処法は、国、所属機関、所属部門によって異なってきます。日本では2003年以前、主要国立大学は文部科学省の規定に縛られ、独自に知的財産権を持つことができませんでした。しかし2004年4月以降、国立大学は独自の知的財産権を持つ法人となり、そのような権利を管理するための独自ルールを定められることになりました。(参考: 本文書384ページ)
また、世界知的所有権機関(WIPO)は次のように定めています。「ほとんどの大学は、一般原則として、大学の雇用者でない学生が、講義や授業で得た知識のみに基づいて生み出した業績における知的財産権を持つことを認めています。しかしながら、大学もしくは第三者が所有権の保持者もしくは共有者となる場合もあります。」(こちらのページの質問: ‘Who owns IP generated by students?’をご覧ください。)基本的には、大学に雇用されている研究者(ほかの期間には所属していないものと考えた場合)が研究課程で得た一次データの所有者は大学となりますが、大学の雇用者が大きく関与して得られたデータでない限り、大学が学生の知的財産権を所有することはありません。
こうしたことを踏まえて、以下の対応を検討してみてください:
- 研究の開始時点で指導教官の同意が得られていたか?プロジェクトの開始時に、データの帰属について口頭か書面での同意が得られていたでしょうか。データの帰属に関する方針は、大学や学部によって異なります。提案した研究で得られたデータが共有されることになっていなかった場合は、同意を得ることが必要になるので、その場合は一歩退く必要があるかもしれません。今後のプロジェクトでは、データの所有権にまつわるさまざまな面をクリアにしておくようにしましょう。
- 守秘義務を負うような研究なのか?(例 軍事研究や政策に関わるプロジェクト等) この場合は、データを公開できるようになるまでのエンバーゴ期間が設けられるはずなので、その点について大学当局と話し合ってみましょう。
- 大学は、あなたが卒業後に大学を除外して単独のクレジットを主張することを懸念していないか?この場合は、所属先として大学を記載するつもりであることを説明して、説得しましょう。
- 大学に技術移転機関(TTO)はがあるか?あれば、ここに相談してみるのも一案です。
民事訴訟ではなく、調停や仲裁といった別の紛争解決策も検討してみてはいかがでしょうか。それでも法的手段を取ることを希望する場合は、法律の専門家に相談し、このようなケースでの実績を確認してみましょう。また、行動に移す場合は、全著者に相談して同意を得るようにしましょう。
友好的に解決できることを願っています!
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An overview of ethical issues in scientific research [注: 研究者のためのさまざまな学習プログラムを作成しているR Upskillが提供しています。]