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学術関係者はオープンアクセスの出版をどう思っているか
オープンアクセス(OA)の出版とそれに関連する話題(査読、使用許諾、再使用、指標など)について、学界がどんな意見を持っているか知りたいと思いませんか?
このテーマについて、テイラー&フランシスとその親会社のインフォルマが広範囲に及ぶ調査を行い、その結果が発表されました。膨大な結果を吟味するのには時間がかかりますし、大変ですから、いくつか重要な点に焦点を当てたいと思いました。学術出版系のブログScholarly Kitchen でいくつか報告しています。
調査の概要:
- 調査は、2011年テイラー&フランシスのジャーナルに掲載され、調査からもれていない人すべて、あるいは別の立場で最近調査を受けていた人を含んでいます。
- 調査のうち、OAの未来に関する部分について、回答者を2つのグループに分けました。一つは、自分の考えたことが将来起こるだろうと「思う」グループ、もう1つは、将来起こって「ほしい」グループです。
- 11,942 名の回答者のうち、506 (4.2%) 名が中国人でした。
- 全体の回収率は19% で、アジアだけだと12%でした。
- 回答者の45%は、人文科学、行動科学、教育、政治学、法学が専門でした。これに対し、工学、生物学、化学、物理学、地質学の専門家は43%でした。
結果:
クリエイティブ・コモンズライセンス(CC-BY)への好感度は低い:これは、すべての人に以下のことを認めているライセンスです。(a)作品のコピー、分配、伝達、(b)作品の改作、(c) 著者あるいは使用許諾者が規定した(しかし、利用者か作品の利用が承認されていることが全く示唆されていない)方法で作品の著者を明らかにするという条件のもとでの、作品の商業的利用。回答者の52% が、一番好きではないライセンスだと答えていました。
OAが革新促すかどうかについての疑念:OA出版が革新を促すかもしれないということについては、学術関係者の間に不安があります(38%) 。さらに、OA出版での品質基準と製作基準(校閲や植字)に疑いの念を抱いていました。けれども、OAが基本的には役に立つということに対しては、一般的に同意が得られています。
- 研究へのアクセスしやすさが金銭によって左右されるべきではない:学術関係者の間で最も合意が得られている点は、支払い能力によって研究の掲載が決定づけられるべきではないということです (65%がこの点に賛同しています)。 同時に、どんな研究の成果でもオンライン上で無料で閲覧されるべきということについても、一般に賛成されています
定期購読のジャーナルを好む傾向が強い:回答者の38%が定期購読のジャーナルに比べると、OAのジャーナルは広く売れていることは認めています。しかし、(a)コストに関わらず最高のジャーナル 、(b) 掲載にお金がかからないジャーナル、(c)講読にお金がかからないジャーナル、のうちどれに掲載したいかを聞いてみたところ、(a)は52%、(b)は39%、(c)は9%でした。
- 論文発表において補助金が果たす必要不可欠な役割:11,927名の回答者のうち、補助金によって掲載先が決まると「思う」を選んだ回答者は31%で、決まって「ほしい」と答えた回答者(11%)よりも多かったです。
- OAジャーナルでの発表の意欲は低い:OAのジャーナルでの発表を積極的に選ぶとした回答者はわずか9% でした。かなり多くの回答者 (38%) が、OAのジャーナルが広く売れていることを認めていること(4.参照)を考えると、これは意外な結果です。さらに、研究の質は別として、学術誌が主要な出版販路だと「思う」人は68%、主要な出版販路であって「ほしい」と答えた人は70%でした。
- 将来、学術論文に代わるものとして:将来、学術論文に代わるものをどう思うかという質問に対して、回答者745名中10.33%が、どのようにかという詳細はわからないが研究発表は変わるだろうと考えていました。学術論文に代わるのはマルチメディアと答えたのは9.26%、ブログだろうと答えたのは8.99%でした。
研究の限界:
•(調査の概要で述べたように)分野を代表する回答者の割合がやや不均衡なので、完全に正確な結果だとはいえません。
•アジアの回答者はサンプルとして若干不十分であるのに対し、アメリカとカナダの回答者はやや大きな比率を占めています。
研究の限界はありますが、この包括的な調査は示唆に富み、学術出版界の将来について垣間見せてくれます。どう思いますか?
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