東京大学が著名研究者の研究不正を認定

東京大学が著名研究者の研究不正を認定

東京大学は、同大学所属の著名な研究者である渡邊嘉典教授の研究不正疑惑について、1年近く調査を続けてきました。同大学の調査委員会は、細胞生物学者の渡邊教授と丹野悠司元助教が5つの論文で研究不正を行なっていたことを認定しました。両氏への処分は検討中とのことですが、渡邊氏は細胞学の権威として知られており、同分野の研究者の間には動揺が広がっています。


2016

9月、6つの著名研究グループが発表した22本の論文にデータの改ざんや画像の加工などの研究不正の疑いがあるとの匿名の告発がありました。この告発を受け、東京大学は1年近くに渡る調査に乗り出しました。その結果、5つの研究グループが潔白と結論付けられ、渡邊氏のみが罪を問われました。同氏は、調査委員会による調査結果(20175月に公表)を受けて発表した公開状の中で、「これらの過失の最終責任は私にあり、深くお詫び申し上げる」と述べ、論文に問題があった事実を認めながらも、「これらの過失は、主要な結論に影響を与えるものではない」と釈明しています。また、間違いを正すために必要な行動を取るつもりだと述べています。


疑惑の5本の論文はすべて、細胞分裂中に染色体に影響を与えるプロセスに関する研究を扱ったもので、Nature誌とScience誌に2本ずつ、EMBO Reports誌に1本が掲載されています。これらの論文では複数の画像が不正に改ざんされていますが、渡邊氏は「不適切に加工された」、「異なる状況下で撮影された」と説明しています。驚くべきことに、同氏は画像の加工を常習的に行なっており、研究室のメンバーにもそのように指導していたと見られています。したがって、同委員会の調査報告には、丹野氏の関与は渡邊氏の指導によるものであったと述べられています。


渡邊氏は、調査委員会が不正を認定する以前から、自身の研究の公正性についての疑惑による影響に直面していました。研究室のメンバー全15名はすでに研究室を去っており、370万ドルに上る5年分の補助金の支給も停止されていました。よって、不正が認定される前から、同氏のキャリアは揺らいでいたと言えます。渡邊氏は、自身の行いが意図的ではなかったとした上で、「このような行為がねつ造や改ざんに当たることを知り、後悔している」と述べています。ただ、渡邊氏の研究は複数の発見の基礎となっており、偽科学を生み出す意図で画像を加工したわけではないという同氏の主張を信じる同業者もいます。バージニア工科大学およびブラックスバーグ州立大学の細胞生物学者、ダニエラ・シミニ(Daniela Cimini)氏は、「これらの過失が、科学界を欺いたり、データを改ざんしたりという意図で行われたとは到底考えられない」と述べています。


今後は、不正操作があった論文の修正または撤回について、別の委員会が渡邊氏に勧告を行う予定です。また、東京大学は、同氏がこれまでに出版したすべての論文を調査した上で処分を決定するとしています。


<参考記事>

University says prominent Japanese cell biologist committed misconduct

University of Tokyo probe says chromosome team doctored images

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