カリフォルニア大学とPLOSが、若手研究者に恩恵のあるOA協定に合意
カリフォルニア大学(UC)とPLOS(Public Library of Science)が、オープンアクセス(OA)に関する2年間の協定に合意しました。
この協定は、PLOSのジャーナルが課すAPC(論文掲載料)を、UC図書館が1000ドル分負担し、残りを研究者(著者)が支払うというものです。最大手の非営利OA出版社であるPLOSは、APCを1500~3000ドルに設定していますが、1000ドルを差し引いた分の支払いも困難な研究者は、それもUC図書館に負担してもらうよう相談することができます。
この協定は、PLOSのジャーナルで論文を出版したいけれども予算が足りないという研究者(主に、若手や人文・社会科学分野の研究者)に、救いの手を差し伸べることを目的としています。UCの大学院生、アルン・ドゥルバスラ(Arun Durvasula)氏はこの協定について、「ほとんどの研究者はOAを支持しています。自分の論文に興味を持ってくれたすべての人が、論文を読めるようになることを願っています」と述べています。UCの環境およびサステナビリティ研究所のアラン・バレッカ(Alan Barreca)准教授は、「学術研究を一般公開すれば、すべての人が学術研究の恩恵を受けられるようになり、気候変動などの重要事項に関する情報を得られるようになります」と、ドゥルバスラ氏の意見に同意しています。
また、このパイロット協定では、APCの負担を研究者と大学で分担できるようにすることで、フルOAへの移行をより現実的なものにすることを意図しています。PLOSの取締役会の一員であるキース・ヤマモト(Keith Yamamoto)氏は、「この協定は、主要な利害関係者が、科学と研究者と学生にとってメリットのある、持続可能なモデルを構築するために協力し合えることを示しています」と述べ、今回の合意を歓迎しています。
UCは、米国でもっとも多くの研究論文を発表している機関の1つで、毎年、米国全体の論文の10%を出版しており、2010年代初頭から徐々にOAモデルに移行しています。UCカリフォルニア・デジタル・ライブラリのアソシエート・エグゼクティブ・ディレクターであるアイビー・アンダーソン(Ivy Anderson)氏は、「UCはかねてより、ジャーナルにかかる費用を、OA出版に振り向けてきました」として、この協定が大学の目的に沿っていることを強調した上で、「さまざまな出版社と協力関係を結ぶことで、共に完全OAへの移行に貢献したいと考えています」と述べています。
UCは、2019年7月にエルゼビアとの購読ベースの協定を終了させていますが、2020年度の第一四半期中には、エルゼビアとの新たな協定に向けた協議を行う準備を整えています。
OAこそ論文出版の未来であると信じるドゥルバスラ氏は、この協議が前向きな方向に進むことを願っており、「OAが標準になり、その良し悪しを議論する余地もないような世界になることを願っています」と述べています。
OAに関する議論について、下のコメント欄からぜひ皆さんのご意見をお寄せください。
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