政府機関の閉鎖によって科学機関に大きな暗雲: 米国
米政府は、2018年12月21日に行われたホワイトハウスと議会との交渉が不調に終わったことから、無期限で政府機関を一部閉鎖することを発表しました。国内の科学コミュニティには不安が広がっています。
閉鎖の原因となったのは、政府機関の予算案を巡る議会とドナルド・トランプ大統領との対立です。メキシコ国境沿いに壁を建設するという大統領選で掲げた公約を実現するために50億ドルの予算を要求したトランプ大統領ですが、議会はこれを認めなかったため、一部の政府機関が閉鎖されることになりました。
この閉鎖により、米国内の複数の科学機関の活動も中断を余儀なくされます。これらの機関では職員に休暇を与えざるを得ず、進行中の研究プロジェクトも休止に追い込まれることになります。また、機関や所属研究者たちの将来も危機に陥る可能性があります。閉鎖の影響を受ける主要機関の中には、米航空宇宙局(NASA)や国立科学財団(NSF)が含まれています。
米科学振興協会(AAAS)のラッシュ・ホルト(Rush Holt)CEOは、「政府機関が一部でも閉鎖されれば、研究プロジェクトは中断・遅延する可能性があります。新たな研究への懸念が増し、研究者による機関データやインフラへのアクセスも制限されてしまいます」と指摘しています。研究者たちはこのほかにも、閉鎖によって米国の研究開発の競争力が低下することを懸念しています。
疾病予防管理センター(CDC)や国立衛生研究所(NIH)などの一部機関では、前年度の予算案によって予算が確保されているため、今回の閉鎖の煽りを受けることはなく、今後も活動が継続される見込みです。
今回の閉鎖がいつまで続くかは不明ですが、2019年1月からは民主党が下院の過半数を占めることになります。科学界の中には、トランプ大統領が予算交渉の面で一層強い抵抗を受けることで状況がさらに複雑化することを懸念する声もある一方で、これが転機となることに期待を寄せる声もあります。
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