査読への信頼-5人の研究者のエピソード

査読への信頼-5人の研究者のエピソード

査読と、研究論文の品質維持に対するその貢献を称えて、毎年ピアレビュー・ウィークが開催されています。今年のテーマは「査読への信頼」で、ピアレビュー・ウィーク期間中は、このテーマに沿ってディスカッションが繰り広げられました。その際に、査読プロセスを信頼する理由について5人の研究者に伺った話をご紹介します。


Thev JayMahan (日本)

京都大学大学院博士課程在籍

@Thev_JayMahan

これまでの経験では、査読者は誠実で建設的な批評をしてくれました。実施が不可能な実験を提案されたこともありましたが、査読者たちは別の方法を受け入れてくれました。査読者からのアドバイスを取り入れたことで、論文は格段に改善されました。


Peter Simpson (米国)

カーティン大学研究員

Peter Simpson

査読プロセスは、論文出版に欠かせない要素です。著者としては、査読に対してちょっとした恐怖心を抱くこともありますが、査読機能の核心は、論文を改善して研究を高い水準に保つことです。私たちは時としてそれを忘れてしまい、冗談交じりに、せっかくの高評価が「第三者である査読者」によって台無しになってしまった、などと言ったりします。それでも、私は査読というプロセス、つまり外部の視点を通じて研究を改善する方法を信頼し、それを楽しめるところまで来ました。このことは、私たちの2017年の論文「Defining the Anti-Cancer Activity of Tricarbonyl Rhenium Complexes: Induction of G2/M Cell Cycle Arrest and Blockade of Aurora-A Kinase Phosphorylation(トリカルボニルレニウム錯体の抗がん活性の定義―G2/M細胞周期停止の誘導及びオーロラAキナーゼリン酸化の遮断)」で証明されました。

 

私たちは、抗がん剤として新しい種類のレニウム錯体の機構研究を発表しましたが、査読で、構造活性関係についての理解を深めるために研究対象の錯体の数を増やすよう助言されました。さらなる実験が必要となるので、発表は遅れることになります。しかし、助言に従ったことで、結果的に論文の質は上がりました。

 

もちろん、査読プロセスは完璧ではありません。ダブルブラインド・レビューを採用するかどうかの議論もおおいに有益でしょう。ただ、査読プロセスは全体として、科学をより良くすることにつながります。ここ数年、私は幸運にも多くの化学ジャーナルで査読を担っています。カクタスでも査読ができることを嬉しく思っています。 

 

Zoya Marinova (スイス)

医学博士、Ronin InstituteInstitute for Globally Distributed Open Research(IGDOR)

Zoya Marinova

著者と査読者の両方の立場を経験して、論文出版の質を改善するという査読プロセスの力を信頼するようになりました。自分の論文は、査読から大きな恩恵を受けてきたと思います。

 

査読プロセスが遅れると待つのが絶え難いこともありますし、準備に多大な労力を費やした原稿を批判されてがっかりすることもあります。それでも、専門家から客観的なフィードバックを受けられること、とても参考になります。

 

これまででもっとも役に立った査読コメントは、分析の際に考慮すべき追加的な対照や要因に関する提案と、結果について可能な限り説明してその意義をより深く論じるためのヒントでした。

 

自分が査読を行うときは、データの分析や解釈のあらゆる側面と、原稿の構成や準備について助言するようにしています。研究のデザインや分析、データの解釈は、査読において必ず検討すべき重要なポイントですが、原稿の構成や、論理的な流れもきわめてですから。

 

Scott Brandl(ウルグアイ)

共和国大学ポスドク研究員

Scott Brandl

現代科学は、一人で取り組むものではありません。実験を構想し、研究を実施し、原稿を執筆する過程で、研究室の同僚や共同研究者と共に、いろいろなアイデアを生み出します。協力的な環境がアイデアの相乗効果を生み、共同体意識を強めますが、ときにそれが視野狭窄につながることもあります。査読は、このような状況を阻止するための強力な手段です。

 

著者の立場では良い査読しか経験していないので、査読を信頼しています。査読者たちはいつも誠実に批評してくれて、科学界に貢献していました。時には厳しい指摘もあり、不公平さを感じることもありますが、それはただ、科学界の競争的な側面が映されているだけでしょう。競争と匿名性があればこそ、著者の盲点に対する真の評価が可能となるのだと思います。

 

Rajat Biswas (バングラデシュ)

医学博士、チッタゴン・マ・オシシュ病院医科大学助教

Rajat Biswas

論文を投稿した後は、首を長くして査読報告書を待ったものです。査読では、原稿をより充実させるために詳細に批評してもらえるので、いつも喜んで指示に従っていました。指示通りに修正すると、論文はたいていアクセプトされました。

ただ、シュプリンガーのあるジャーナルに論文を投稿したときの苦い経験は今でも覚えています。何度もやりとりを重ね、仮アクセプトされてから、大幅修正が必要だと言われたのです。これにはがっかりし、論文を取り下げて別のジャーナルに投稿しました。そこでは、一度で査読を通ってアクセプトされました。

査読は優れた慣行だと思います。研究者は、依頼があれば査読に応じ、研究プロセスにおける査読についての知識を得るべきだと思います。
 



信頼は、査読プロセスに欠かせない要素です。5人のエピソードと視点からは、査読プロセスへの信頼と、査読は研究の品質維持に貢献しているという確信が伝わってきます。

今年のピアレビュー・ウィークのテーマ「査読への信頼」について、あなたはどう考えますか?以下のコメント欄からご意見をお寄せください。

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