世界中の科学サポーターが「マーチ・フォー・サイエンス」に集結
科学者たちは長い間、研究室にこもって一般社会と繋がりを持とうとしないとして非難を受けてきました。しかし、世界中の科学者、科学支援者、科学ファンたちがアースデイ/地球の日(4月22日)にマーチ・フォー・サイエンスでともに行進を行えば、このような風潮にも変化が見られるかもしれません。科学的課題や科学政策に対するドナルド・トランプ氏の姿勢は、この機運をさらに高めています。トランプ大統領が発表した予算案で科学予算の70億ドル削減が提案されたことで、科学コミュニティでは激しい反発が起こっています。このような施策を受け、科学に対する意識を高める必要性と、政府にエビデンスベースの政策決定を求める必要性を科学者らが感じたことで、マーチ・フォー・サイエンスというムーブメントが盛り上がりを見せました。
科学者たちが声を挙げたのは、これが初めてではありません。過去にも、連邦政府の科学政策に対して異議が唱えられたことはありますが、今回ほど大きな声ではありませんでした。ジョージ・W・ブッシュ元大統領がある科学者の研究結果を抑圧した際は、研究者らはおよそ3年に渡ってこの問題への抵抗を続けました。オバマ政権時代の科学者は、政府の施策を批判する中心的存在でした。これらと比較しても、トランプ大統領の政策は、前例のないスピードと強さを持った反発を生んでいます。マーチ・フォー・サイエンスのウェブサイトにトランプ大統領の名は明記されていないものの、これが同大統領の政策に対する反対運動であることは確かです。この運動の支援者でウェスタン・ワシントン大学の細胞生物学者であるデビッド・リーフ(David Leaf)氏は、次のように語っています。「トランプ政権の反科学的姿勢や、環境および医療・経済関係の研究を軽視する政策による影響を、大変心配しています」。
草の根運動から始まったマーチ・フォー・サイエンスは、220もの科学機関が支援する大きな影響力を持つ運動へと成長しました。メインイベントはワシントンDCで開催されますが、同時に37ヶ国、400ヶ所での行進が予定されています。しかし、科学コミュニティ全体が支持しているように思われるこの運動にも、批判者は存在します。ハーバード大学の著名な心理学者であるスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)教授は、次のように指摘しています。「この運動は、一般社会にとって、学術界に不信を招いたアイデンティティ政治や被害者学の延長線上にあるものに見えています」。
また、この運動の目的の曖昧さや、科学の政治化を危惧している人々もいます。シカゴ大学医学部(イリノイ)のポスドク、ネイサン・ガードナー(Nathan Gardner)氏は、次の理由からこの運動への不参加を表明しています。「右翼系の記事は、この運動を、男女平等運動やアイデンティティ政治と同じ枠組みで扱っていました。この運動が反トランプを掲げているわけではありませんが、参加者たちが反トランプのようなので、いともたやすく科学が政治化してしまうと思います」。
ウェスタン・キャロライナ大学の地質学者ロバート・ヤング(Robert Young)氏は、「この運動は、科学者たちを文化戦争に夢中の集団にしてしまい、科学者と米国の有権者の特定の層との溝を拡げてしまいます」と指摘し、科学を矮小化/政治化させるだけのこの運動は、意識の向上を目指す方法として最善の形ではないと語っています。
このように懐疑的な科学者が一定数存在していても、マーチ・フォー・サイエンスには多くの参加者が集まることが予想されています。この運動が政治や一般社会にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目したいと思います。
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