投稿前に知っておくべきこと――ある医学研究者の、臨床試験登録に関する事例

投稿前に知っておくべきこと――ある医学研究者の、臨床試験登録に関する事例

事例: ある著者からエディテージに、論文の校正が依頼されました。一流の医学系学術誌に投稿するつもりだといいます。臨床試験に基づいた研究で、その結果は、確かに今までになかったものでした。Eメールのやりとりの中で、その著者に「臨床試験登録はしているか」と尋ねたところ、登録済みであるとの回答でした。校正と編集にも満足し、著者は、その論文が投稿先の学術誌に受理される見込みは高いだろうと考えていました。投稿前、その学術誌に問い合わせの手紙を送って見たところ、編集長もその研究に大変興味を示していました。

ところが数週間後、その著者から、一次審査で論文が掲載拒否されてがっかりしているという連絡がありました。編集者から、その研究がICMJE(International Committee of Medical Journal Editors、国際医学雑誌編集者委員会)の臨床試験登録基準を満たしていないと言われたということです。臨床試験登録は済んでいたので、著者はこの決定にとまどい、不満でした。臨床試験登録が受け入れられなかった理由を解明するために手を貸してほしいとの依頼が、私たちに届きました。

調査活動: 調査を進めてみると、その臨床試験は、試験開始後、数週間経ってから登録されていたことが分かりました。ICMJE臨床試験登録規定では、出版審査を受ける必要条件として、公の臨床試験登録簿に最初の患者が登録された時、あるいはそれ以前に臨床登録が行われていなければなりません。この著者の場合、臨床試験の登録日は、最初の患者登録があった日よりずっと後のことでした。この問題を解決することは不可能です。この著者には、ICMJEのウェブサイトのリストに掲載されていない学術誌からの出版を検討してはどうか、という提案をしました。次に投稿しようとする学術誌には、事前の問い合わせの際、臨床試験登録が遅れたという問題をあらかじめ開示することが必要でしょう。

要約: 著者は、学術誌が順守するよう求めている臨床試験登録方針を、必ずしも把握していないことがあります。臨床試験登録は必須であり、登録されていない臨床試験は、どの学術誌からも出版することができません。

ICMJEの臨床試験登録規定によると、ICMJEのウェブサイトに掲載を希望する学術誌は、いくつかの規定に従う義務があります。主な条件には以下のようなものがあります。

  • ICMJEは、WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP)
    あるいはWHO ICTRPへのデータ提供元であるClinicalTrials.govのプライマリ・レジストリ(指定治験・臨床研究登録機関)への登録ならば、どのレジストリの登録も認める。
  • レジストリには、臨床試験登録データセットが最低20項目含まれていなければならない。
  • 登録は、最初の患者が登録された時、あるいはそれ以前に行われなければならない。

ICMJEによると、臨床試験登録の目的は、研究結果の出版が偏ってしまうことを防止し、同じような研究を行なって研究努力が無駄になることを避けることです。また、登録があれば、患者もどのような臨床試験が行われているのか知ることができ、臨床試験への参加を希望する場合、それが可能となります。

ClinicalTrials.govへの登録は、研究期間内(開始後、患者登録完了後、あるいは研究終了後)ならいつでも可能となっていますが、ICMJEは、最初の患者登録時あるいはそれ以前の登録を必須としていることを覚えておきましょう。

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