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「博士課程では、作業手順とメンタルヘルスが試されます」
博士課程の実態とはどのようなものでしょうか?ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)の博士課程に在籍中(2023年3月現在)のAnastasia Shavrovaさんが、博士号取得を目指す過程で経験したさまざまな困難や重要局面を振り返ります。
研究者兼科学コミュニケーターとして活動しているShavrovaさんは、動物行動学で進化を専門とし、とくに生殖における進化と対立について研究しています。また、学術生活のさまざまな側面をテーマとしたポッドキャスト「Boiling Point」と「Convos with Chordates」を運営しており、スタンダップコメディやテレビの生放送といったさまざまな形式で研究発表を行う機会もあります。
私の研究プロジェクト
私は今、博士課程の最終段階にあります。論文をすでに提出し、博士として正式に認められるか否かの判定を待っているところです。専門は進化生物学で、オスとメスの違いを探求する研究プロジェクトに取り組み、とくに動物たちの行動、外見、ゲノムが互いにどのような不都合をもたらすかを調査しています。対象は主に動物ですが、人間にあてはめて考えられる結果も多くあります。自然選択は適者生存ですが、性選択は「性的魅力がもっとも高い者」が生存します。たとえば、オスの鳥がメスの鳥のために歌い、声でメスを魅惑しようとするなど、一方の性が別の性の気を引こうとする場面がよくありますね。ただ、すべての動物がこのように妥協的で協調的であるわけではありません。一部の動物は、仲間に感銘を与えるのではなく、相手にとって有害な行動を進化させることがあります。たとえば、ごまかし、だまし、腕力を使って仲間を作るのですが、このような状況に追い込まれた動物たちがどうなるかを調査するのです。また、動物の武器(サイの角、象の牙、鹿の角など)が進化すると、有害な行動や特性はさらに複雑になる可能性があります。そこで、これらの武器をつがい相手に対して使うのか、それとも同性の競争相手に対して使うのかをさらに調査します。
博士課程の生活
博士課程の学生としての生活はバラエティーに富んでいて、日によって異なります。博士課程に進んですぐの頃は、フィールドワーク、ラボワーク、執筆に取り組んでいましたが、博士課程の終わりに差し掛かると、執筆と統計作業に追われるようになりました。働き方や研究対象の動物/プロジェクトによって日々の生活は大きく変わるので、個人差がかなり大きいと思います。
博士課程でもっとも楽しかったこと
博士課程でもっとも良かったことは、関心のあるテーマ(性的形質の進化)を思う存分探求できただけでなく、この研究がいかにクールかを世の中に広められたことです!博士号の取得を目指していたおかげで、シドニーとブリスベンのコメディフェスティバルで科学をテーマとしたスタンダップコメディを上演したり、シドニーの音楽フェス「Splendor in the Grass」に出演したり、オーストラリア版「Bill Nye the Science Guy」のKarl博士と共演するなど、さまざまな機会に恵まれました。
博士課程でもっとも大変だったこと
博士課程では、自分が自分の上司です。自分で時間を管理し、責任を持ち、作業状況を把握しておかなければなりません。博士課程では苦しい局面もあり、作業手順とメンタルヘルスが試されます。ですから、前進し続け、フィニッシュラインを目指して努力し続けるためには、やるべきことに情熱を傾けることが重要です。
博士課程での経験を最大限に活かすには
したいことを見つけるために、私は、博士課程全般を通してあらゆることを試みました。 カンファレンスに参加し、興味を持った人と会って交流し、研究と離れた個人的なプロジェクトとしてポッドキャストやブログにも取り組みました。他の研究プロジェクトについて学ぶために、研究やフィールドワークを手伝うボランティアもやりました。博士課程ではさまざまなチャンスがありますが、どこを探し、どこでチャンスをつかめばいいのかを知っておく必要があります。そのためのベストな方法は、いろいろな人に声をかけ、話すことです。新たなことに挑戦したいと思っていることを、周囲に積極的に伝えましょう。
博士課程への進学を目指す女子学生へのアドバイス
私自身は科学分野の女性として概ね順調に過ごしてきましたが、怪しげな誘いや、感情的に消耗する出来事もあるかもしれません。博士号取得を目指す女性たちに伝えたいのは、自分が価値ある人間だということを忘れないでほしいということです。皆さんなら、できるはず。自分で自分をしっかり守りましょう!
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