出版計画にポジティブな気持ちで取り組むためのヒント
若手研究者の皆さんは、「論文を出版しなければ」というプレッシャーを多かれ少なかれ感じ、将来への不安な気持ちを常に抱えているかもしれません。実際、研究のハイライトともいえる論文出版は、学術界でキャリアを築いていく上では避けて通れないプロセスなので、プレッシャーを感じるのは無理もないことです。でも、やるしかないなら楽しんだ者勝ちです。その方が身も心も健やかでいられ、好循環が生まれて良い結果につながりやすくなるでしょう。この記事ではそんな視点から、論文の出版計画に前向きな気持ちで取り組むためのヒントをお届けします。
過程を楽しむ
論文出版に限らず、何事も楽しんで進めるに越したことはありません。若手研究者である皆さんは、キャリアが浅いということを逆手にとって、結果にこだわりすぎることなく、プロセス全体を楽しむことを心掛けてみましょう。もちろん、論文出版は簡単なものではないので、ストレスをまったく感じずに進めることは現実的ではありません。ただ、ネガティブな気持ちが大きくなりすぎると心も体も凝り固まって視野が狭まり、結果にも影響します。「いやだな」と思いながら放置して先延ばしにし、追い込まれてから着手すると、時間に追われて対処がより難しくなり、混乱して優先順位が分からなくなることもあるでしょう。逆に、ポジティブな気持ちで物事に当たれば気持ちに余裕が出て、人間関係も含めて好循環が生まれ、より良い結果をもたらしやすくなります。ぜひ、「楽しんだ者勝ち」という気持ちで取り組むことをおすすめします。
計画を立てる
何かを計画するときは、物事を系統立てて考えるスキルと、自己管理能力が必要です。一方、立てた計画を実行するにあたっては、実際の状況に臨機応変に対応し、ときには直感を信じてリスクを取る覚悟も必要です。
もともと計画を立てるのが好きな人は、目標を見据えながら詳細な計画や戦略を立てること自体を楽しみます。そして、決めた計画を守ることに喜びを感じます。逆に、緻密な計画は立てず、その場の状況に応じて瞬間瞬間を生きることを好む人もいます。このタイプの人は、物事をあらゆる側面から眺め、新しいアプローチを探そうとします。したがって、計画通りに物事を進めることにはこだわらず、進行中のプロジェクトのやり方や方向性を変えることを厭いません。
どちらかのタイプがどちらかのタイプよりも優れているわけではありませんが、自分がどちらのタイプであるかを踏まえておくことは大切です。若手研究者として、両方の姿勢を意識して取り組むことで、さらなる成長につながります。
出版計画を立てる際のコツ
出版計画を立てるときは、予期しない状況が起こる可能性を考慮に入れて、あらかじめダウンタイム(休止期間)を多めに設けておくことがポイントです。疲れがたまっているときや、集中力が保てないときは、執筆などの創造性が求められる作業に無理に取り組んでもはかどりません。思い切っていったん立ち止まり、休憩するか、まったく別のことをしましょう。メールの返信、デスクの整理、同僚と雑談、散歩など、なんでもいいので、気持ちを別のことに向け、いったん心と体をリフレッシュさせて、新たな気持ちで物事に向き合えるようにしましょう。けっして焦らず、ここでも前向きな気持ちを持つことが大切です。しっかりリフレッシュするためにも、余裕を持たせた計画を立てることが肝心です。
ときには、物事が計画通りに進まず、期限を過ぎてしまうこともあるかもしれません。でも、それも気にしすぎないことです。何がうまくいかなかったのかをよく考えて、その原因を理解することに務め、その上で次の計画を微調整しましょう。
出版計画と時間管理のための実践的ヒント
論文出版を成功させるには、賢い出版計画を立て、それに沿って作業を進める必要があります。実際に出版計画を立てるときは、以下の点を考慮してみてください。これらを参考にして、自分なりの出版計画を作成しましょう。
1. 現実的な目標を立てる
計画を立てるには、目標が必要です。長期的な目標から逆算して、短期的な目標を立てましょう。大きな目標は、小さな目標の達成を積み重ねた結果、達成されるものです。以下の例を参考にしてください。
- 年間目標: 何らかの形として成し遂げたいこと(例 ○○誌で原著論文を出版する)
- 月間/週間目標:タスク単位で考える(例 研究プロポーザルを書く、アブストラクトを書く)
- 一日の目標:具体的な作業で考える(例 ○時から○時までに○単語を書く)
2. タスクの優先順位をつける
忙しい現代社会では、たった1つのことだけに取り組んでいられるような状況は考えにくいので、マルチタスクになることは避けられません。そこは嘆いても仕方ないので、優先順位をつけながら上手に対処する方法を考えましょう。とはいえ、ここぞというときは1つのタスクに集中することが必要なときもあります。バランスとメリハリを大事にしましょう。
3. 創造性と広い視野をもつ(自分を上手に操りましょう!)
私たちは、特定の「モノ」や「シチュエーション」に惹かれることがあります。そのような心の動きを利用して、最新ガジェットやアンティーク調の机など、自分の好みに合わせた環境を作ることで、やる気に火が付くことがあります。言ってみれば「形から入る」ということですが、これは意外と馬鹿にできない効果を発揮します。やるべきことが終わったあとのご褒美を考えてみるのも良いかもしれません。ぜひ、 自分を奮い立たせるような何かを探してみてください。
最新テクノロジーが好きな方は、計画立案やプロジェクト管理用のいろいろなアプリが公開されているので、それらを上手に活用して効率アップにもつなげるのも良いでしょう。
また、ジャーナル論文に固執せず、学会抄録、ブログ投稿、ソーシャルメディアなども発信の手段として検討してみましょう。いきなりジャーナルでの論文出版を果たすことは難しくても、別の方法で思わぬ反応、つながり、学びが得られることもあります。
重要! 言うまでもないかもしれませんが、クラウドを利用する、複数のデバイスに分散するなどの方法で、必ず原稿のバックアップを取っておきましょう。大事な成果物が消えてしまうという悪夢を避けるため、これはぜひ習慣化しておくことをおすすめします。
他の人から学ぶ
これから論文出版に挑もうとしている若手研究者の皆さんは、まずは、ベテラン研究者が実践しているベストプラクティスを知るところから始めましょう。必要なときは、ためらったり恥ずかしがったりせずに助けを求めましょう。それは、若手研究者の特権でもあります。同僚、先輩、指導教授などから学べることはたくさんあります。研究者向けのオンラインフォーラムなども活用して積極的に交流し、問題を共有し、仲間からヒントをもらいましょう。
まとめ
優れた計画を立てるには、成長する意識を持ち続けることが大切です。万人に通用するパーフェクトな計画は存在しないので、創造性を発揮し、タスクを分類して、自分にぴったりの計画を立てることが大切です。キャリアの浅いうちは、1本の論文を書き上げて出版にこぎつけるまでに、何パターンも書く必要があるかもしれませんが、焦らず、恐れず、不安感に押しつぶされることなく、長期的なビジョンを持って前向きに取り組んでください。今はまだ遠い目的地を見据えながら、プロセスを楽しみ、学び続け、一歩ずつ前進しましょう!
参考記事
https://researcher.life/blog/article/tips-early-career-academic-researchers/
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