質問: 自己盗用に関してエディタに誤解だと説明したほうが良いのでしょうか?
質問の内容 -
先日提出した論文が、雑誌のエディタから「自己盗用」とのことでrejectされました。著者側としては、それは誤解だと思っており、前の論文からの拡張・改良が主眼の論文で、どうしても前の論文と同じ説明・記述になってしまうことが多かったため、「自己盗用」と思われたのではないかと思っています(もちろん前の論文は引用しています)。誤解だとちゃんと説明すべきでしょうか?
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回答:
自己剽窃というリジェクト理由をそのまま受け入れるのは難しいことだと思います。ただ、前の論文と今回の論文の重複度について説明することは、自己弁護という印象をジャーナル側に与える可能性があるので、賢明ではないでしょう。ジャーナルへの説明を試みる前に、以下のポイントについて検討することをお勧めします:
- 前の論文を引用するだけでは、(自己)剽窃の問題を解消することにならない。再利用する文章は、必ず適切にリライトもしくはパラフレーズするのがベストです。文章の重複度が高ければ、たとえ前の論文を引用していたとしても、剽窃とみなされる場合があります。また、前の論文の著作権をジャーナルが持っていて、前の論文からある程度の量の文章を使っているなら、著作権侵害の問題にもなり得ます。ジャーナルは、この点を重要視しているでしょう。
- 文章の重複が見られるセクションが問題。前の研究と同じ方法を使っていて、技術的に込み入った細部を記述するのに限られた方法しかない場合、材料と方法のセクションでは文章の重複が起きやすくなります。また、研究領域が似ていれば、研究の背景や文献レビューのセクションも、前の論文と多少重なることがあるでしょう。ジャーナルも、それらのセクションで重複が起きやすいということは理解しているはずです。しかし、重複しているのが研究目的、仮説、結果、考察、結論などのセクションである場合、ジャーナルははるかに厳しい態度を取るでしょう。
- 前の論文と今回の論文の違いを厳しく見直してみる。今回の論文は、前の論文からの拡張・改良が主眼とのことです。文章の類似という点はさておき、コンセプトという点では、前の論文とどのような違いがあるでしょうか。前の研究とは研究目的や結果が十分に異なっている、新しい研究と言えるでしょうか。研究分野に独自の新たな貢献をする出版物としてのメリットは、どこにあるでしょうか。
- 倫理的出版に関するジャーナルの要求事項と方針を確認する。ジャーナル各誌は、剽窃や文章の再利用(およびサラミスライスのようなコンセプト関連)の問題に関し、許容することと許容しないことについてやや異なる見解を持っています。投稿先のガイドラインや方針を見直すことで、今回なぜ剽窃を理由にリジェクトされたのかを理解できるかもしれません。また、判定通知に書かれた詳細を見直すことも役に立つかもしれません。
- 次の行動について慎重に検討する。この判断を取ることは出版計画の後退を意味するかもしれませんが、自己剽窃やその避け方といった複雑な問題を学ぶ貴重な機会とも言えます。学んだことを活かして原稿を書き直し、次の投稿先を決めましょう。また同じジャーナルに投稿したい場合は、編集者にフィードバックへの感謝を述べた上で、修正原稿を新規の投稿として提出し直してよいか確認してみましょう。ジャーナルの判定に対して防御的になっているという印象を与えないようにするとともに、フィードバックを積極的に受け入れ、ジャーナルの要求を理解し、原稿を改善しようとしている姿勢を伝えることが重要です。
ご健闘をお祈りします!
参考資料:
- 自己盗用の何が問題なのですか?
- レビュー論文
- Is it self-plagiarism to use the introduction of my published paper for another manuscript?
- Harriman, S. & Patel, J. Text recycling: acceptable or misconduct? BMC Med. 12, (2014).
- Text Recycling from an Author’s Previously Disseminated Work | ORI - The Office of Research Integrity.
- Committee on Publication Ethics. Text recycling: Forum discussion topic.
- How to avoid plagiarism and save your research career [コース]
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