cOAlition Sが出版社の価格設定情報の開示をルール化
cOAlition S(プランSを通じてジャーナルのオープンアクセス化を目指す研究助成機関連合)は、価格の透明性に関する出版社向けの一連のルールを発表しました。この新ルールは、出版社に論文出版費用の詳細情報の開示を義務付けて、同連合のメンバーが費用を支払えるようにするものです。
ルールによると、出版社は、論文掲載料(APC)に関する詳細情報を開示しなければならなくなります。具体的には、論文の処理や出版に伴うさまざまな作業(査読の管理、校閲、校正など)のコストの内訳を開示することになります。このルールは、プランSの発効予定日である2021年1月から1年半後の、2022年7月に発効される予定です。
このルールの目的は、cOAlition Sのメンバーにとって、APCを妥当な金額にすることにあります。cOAlition Sの主要メンバーであるウェルカム・トラストのオープンリサーチ部門長であるロバート・カイリー(Robert Kiley)氏は、出版社がこのルールに従わない場合は、「その出版社に関連するいかなる出版料も支払わない」と主張しています。
出版社は、2種類のフレームワークのうちの1つを選ぶことができます。1つは、2020年初頭に試行されたパイロット版をもとに設定されたものです。もう1つはFair Open Access Alliance(FOAA)が設定したもので、こちらはマサチューセッツ工科大学出版局やCopernicus社などの出版社がすでに導入しています。この2つのフレームワークにはいくつかの違いがあります。FOAAのフレームワークでは、コストのカテゴリー別に利益率を示す必要があるのに対し、パイロット版を基にしたフレームワークでは、複数のカテゴリーをまとめて利益率を示すことができます。また、FOAA のフレームワークでは、ジャーナルポートフォリオ全体で価格設定が同じでなければならないのに対し、パイロット版を基にしたフレームワークでは、ジャーナルポートフォリオごとに個別の価格設定をすることができます。FOAAのフレームワークは、パイロット版よりも早い時期にできたものですが、カイリー氏は、ほとんどの出版社が後者のフレームワークを選ぶだろうと考えています。
今回のルールの重要なポイントは、価格設定情報は、一般向けではなくあくまで研究・助成団体にのみ開示されるという点です。これは、価格を一般に公開することで、独占禁止法の規制当局から「出版社同士で価格のつり上げ工作をしている」と疑われることにつながりかねないという、出版社側の懸念を解消するための措置です。
シュプリンガー・ネイチャーの出版部門長であるスティーブン・インチクーム(Steven Inchcoombe)氏は、このルールによってジャーナル各誌の価値と違いに対する著者の理解が促進されると考えており、「シュプリンガー・ネイチャーは今後もcOAlition Sを支援し続ける」と述べています。シュプリンガー・ネイチャーは2020年4月に、プランSへの参加と自誌の段階的なオープン化の方針を表明しています。
今回発表されたルールは、助成団体から出版社という出版エコシステムの主な利害関係者に恩恵をもたらすことを目指すものですが、著者にはどのようなメリットがあるでしょうか。皆さんのご意見をお寄せください。
参考資料:
Open-access science funders announce price transparency rules for publishers
Eight publishers to volunteer pricing info in pilot study
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Photo by Haneen Krimly on Unsplash
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