インドネシアのプレプリントサーバーが閉鎖へ――資金不足で同じ道をたどるケースも

インドネシアのプレプリントサーバーが閉鎖へ――資金不足で同じ道をたどるケースも

財政的な制約によって、多くのプレプリントサーバーが存続の危機に瀕しており、一部のサーバーは、近々の閉鎖を余儀なくされています。プレプリントサーバーは、アイデアへの賛同や、素早いフィードバックを得られる場として、研究者に重宝されています。また、「有料の壁」を回避して、グリーンオープンアクセスとして論文を公開できる場でもあります。しかし、複数のプレプリントリポジトリが、先行き不透明な状況に直面しています。


26のプレプリントリポジトリのオンラインサーバーを運営する米国の非営利組織、Center for Open Science(COS)は、リポジトリの維持費を賄うために、2020年からサービスを有料化することを決定しました。COSのエグゼクティブ・ディレクター、ブライアン・ノセック(Brian Nosek)氏は、この対応について、ホスティングサービス(2020年度の支出見込み額は約23万ドル)を長期的に続けていく上で必要な措置であると説明しています。COSは、元々は民間の資金援助を受けていましたが、それでは不十分となったため、サービスの収益化に舵を切ったのです。


追加的な維持費用の負担は、とくに新興国のリポジトリにとって頭の痛い問題です。インドネシアのプレプリントサーバー、INA-Rxivは、資金不足によって近日中の閉鎖が予定されています。3年前に起ち上げられたINA-Rxivは、特定地域の研究に特化した最初のリポジトリの1つでした。このリポジトリの成功は、ほかの地域や言語のリポジトリ(アラビア語の論文を扱うArabiXivAfricArxivIndiaRxivなど)の起ち上げにつながりました。


現在、INA-Rxivには16500本の論文(プレプリントや会議論文を含む)が登録されており、閉鎖されると、インドネシアの研究における重要な情報源が失われることになります。COSが課している基本料金は年間1000ドルですが、これは投稿数によって増額されるため、投稿数の多いINA-Rxivの場合、年間25000ドルに跳ね上がることが予想されています。このリポジトリを管理する水文地質学者のダサパタ・アーウィン・イラワン(Dasapta Erwin Irawan)氏にとって、この費用を賄うことは困難です。


特定地域のリポジトリは、すべてボランティアの力で成り立っており、資金集めに奔走する中、COSの要求はさらなるプレッシャーとなっています。インドの園芸研究機関、Indian Institute of Horticultural Researchの植物学者で、IndiaRxivの起ち上げに関わったスリダール・グタム(Sridhar Gutam)氏は、「資金集めが上手くいかなければ、サーバーは閉鎖せざるを得ないでしょう」と述べています。


地域リポジトリの運営者は、サービスを続けるための新たな方法を模索しています。AfricArxivの運営チームは、機関図書館・政府・財団に予算の増額を働きかけていますが、アフリカでは予算が限られているため、別の方法も探っています。その方法の1つが、費用請求のない別のプラットフォームを2つ起ち上げることです(1つはデータリポジトリのZenodoのに、もう1つは論文出版のオープンネットワークのScienceOpenに)。


MarXivEarthArXiv(それぞれ、海洋保全科学と地球科学のプレプリントサーバー)など、一部の特定分野のリポジトリも、COSの新たなビジネスモデルへの対処に苦慮しています。どちらのリポジトリも、サービス継続のために、別のプラットフォームへの切り替えを予定しています。


COSプラットフォームに登録している26のリポジトリのうち、現時点で、およそ半数は料金の支払いに同意しています。しかし、ノセック氏は、とくに新興国のリポジトリがこの費用を賄うことの難しさを認識しています。そのためCOSは、支払いに一定の柔軟性を認める意思を表明しています。とは言え、ノセック氏は、「不払いの場合はサービスを停止せざるを得ない」とも述べています。


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