7種類のセルフケア実践法

シリーズ:
パート
03
-
7種類のセルフケア実践法

自分をいたわることは、自己満足などではなく、自己防衛本能であり、政略的行為なのです。

オードレ・ロード(Audre Lorde)著:『

A Burst of Light and Other Essays 


私たちは、研究者が毎日何らかの形でセルフケアを実践することは、きわめて重要なことだと考えています。前回までの記事で、セルフケアとは何かを考えてきました。また、研究/学術の道で直面する困難に立ち向かうためのモチベーションや自信を強化できるよう、自分を最優先に考えることの重要性について話してきました。さらに、一旦立ち止まって自分を見つめる必要があるかどうかを判断するための兆候や、自己認識力を高める方法についても説明しました。セルフケアを怠ると、最終的には仕事、幸福感、自信、充足感に悪影響を及ぼすことになります。


問題は、セルフケアがやや抽象的な概念であり、意識的に自分に目を向けたことのない人にとっては、実践方法がはっきりしないということです。セルフケアには、いくつかの種類があります。この記事ではそれらについて説明し、具体的な実践方法を紹介します。


身体的セルフケア:身体的セルフケアでは、身体的な健康と幸福に焦点を当てます。体調や気分が優れないと、研究者としての警戒力や注意力が低下し、前向きに活動することが難しくなります。実際、長時間労働のせいで食事や運動の時間がほとんど確保できていない研究者の話をよく耳にします。


意外に思えるかもしれませんが、以下のようなちょっとした心掛けだけで、身体的健康の維持に役立ちます:
 

  • コーヒーやお茶を常飲している場合は、カフェインの摂取量を減らしてみる。
  • 食事と食事の間隔を空けすぎないようにして、健康的な食事を規則正しく摂る。
  • 水分を毎日しっかり摂る。
  • 毎日少なくとも20分程度の運動/エクササイズ(ランニング、ヨガ、ピラティス、スピニング、足踏み、ジャンピングジャック、早歩き、ランジなど)を取り入れる。
  • 少なくとも週に2日は8時間の睡眠を取る(努力をする)。
  • 身体的活動量の多い仕事の場合は、適度に休憩を取る。その際、脚や腕のストレッチをする、首を回すなどして体をほぐす。これだけでも大きな効果が得られる。
  • 体調が悪いときは、無理せず休むか、医師の診察を受ける。


感情的セルフケア:研究者にとって、感情的セルフケアはとくに大切なケアです。なぜなら、研究者は学術界を歩む中でさまざまな困難(異国での研究生活、論文出版のプレッシャーなど)に直面するからです。感情的セルフケアとは、さまざまな状況における自分の気持ちや感情や反応を、意識・観察・管理することです。感情的セルフケアは、自分の感情やその対処法についてより意識的であるほど、実践しやすくなります。


ハードルが高いと感じたり、難しそうだと感じる場合は、以下のことを試してみてください:
 

  • さまざまな状況における自分の反応を観察・管理する:ポジティブな状況で、自分がどのような反応を見せるかを考えてみましょう。前向きな気持ちや幸せな気持ちになったら、周りの人もその感情に巻き込みましょう。こうすることで、安心感や心強さを得られます。同様に、ストレスフルな状況(否定的な査読コメントを受けとる、実験のやり直しを迫られるなど)に、自分がどう反応するかを観察しましょう。問題には11つ対処するようにし、細分化できるものは細分化しましょう。こうすることで、ネガティブな状況にも落ち着いて対処でき、自分の感情を制御・管理しやすくなります。
  • 辛抱強さを持ち、自分に優しくする:自分に優しくしましょう。大切な人を思いやる気持ちを、自分にも向けてあげてください。ネガティブな感情を持ったとしても、自分を責めないようにしましょう。正の感情も負の感情も、すべて受け入れましょう。嫉妬や怒りや憎しみの感情は、喜びや興奮や感謝の気持ちと同様に自然なものです。焦らないようにし、すべてに余裕を持たせてください。一晩で前向きになったり幸せになったりすることを期待しないようにしましょう。
  • セルフトークをする:「独り言」を言ってみましょう。自分の心の声を聞き、自分をどのように認識しているかを確認しましょう。その際、「デブ」、「ブサイク」、「失敗」、「何をやってもダメ」などの言葉は避け、「安全」、「健康」、「情熱的」、「勤勉」などの言葉を使いましょう。自分自身を、自分のアドバイザーやチアリーダーと見なしてください。
  • 付き合う相手を選ぶ:共に時間を過ごす相手を選ぶようにしましょう。自分を悪く言うような同僚とは距離を置きましょう。ポジティブな人、親身になってくれる人、励ましてくれる人、腹を割って話せる人と付き合うようにしましょう。研究活動の中で、軽んじられたり敬意を払われなかったりする関係から逃れられない場合でも、冷静に自信を持って会話に臨みましょう。ネガティブなのは、自分ではなく相手であることを心に留めておいてください。


社会的セルフケア:単独で活動できるようになることも重要かもしれませんが、結局は自分も社会の一員であることを忘れてはなりません。あなたの周りは、必要なときにサポートしてくれて、心を休めることができる友人、家族、知人が必要なのです。
 

  • 関心のある分野に関わるクラブやグループに参加する(映画同好会、ハイキングクラブなど)。
  • 気乗りしない場合は、社交的行事に無理に参加する必要はない。
  • 多忙のせいで電話もメールもできていなかった人たちに、時間を作って連絡してみる。


精神的セルフケア:これはおそらく、セルフケアの中でもっとも本質的かつ個人的なセルフケアです。精神的セルフケアの実践方法については、正解も間違いもありません。なぜなら、きわめて深い個人的なレベルで、自分とのつながりを感じる必要があるからです。実践の仕方はいろいろあるので、自分に合った方法を選びましょう:
 

  • たとえ数分間でも、毎日1人で過ごす時間を作る。その時間を楽しみ、自分の内面に焦点を合わせ、自分の中のもっとも深い(口に出していない)思考、感情、願望を探る。
  • 自然に触れる。森の中を散歩し、明け方に鳥の鳴き声に耳を傾け、ハイキングやキャンプを楽しむ。少なくとも、月に1時間は自然環境の中で過ごす。
  • 信心深く、祈ることが自分のためになると感じる人は、日々のルーティンにその時間を組み込む。
  • 瞑想で自分とつながる。研究者としてストレスフルな生活を送る中で、瞑想によって静寂と平穏を見つける。アプリやオンラインリソースで、自分に合った瞑想法を探す。
  • 自分に影響を与えた経験を振り返るために、自分の考えを日記に書き留める。
  • 深く共感し、関心を持った活動(動物愛護団体、無料食堂、高齢者のケアグループなど)にボランティアとして参加する。
  • 心に響く映像を観たり本を読んだりする。こうすることで視野が広がり、浮き沈みの激しい研究生活とキャリア開拓の中でも、地に足を着け続けることができる。


職場のセルフケア:働き方や研究のやり方を少し変えるだけでも、ストレスの軽減につながります。職場のセルフケアは、思い立った瞬間から実践に移せる利点があります:
 

  • 元気や幸福感を与えてくれるもの(大切な人やペットや尊敬する科学者の写真など)や植物を飾って、ワークスペースを彩る。
  • 定期的にワークスペースを掃除し、常に整頓されている状態にする。よく使う文具類は、すぐに手が届く場所に置く。
  • 仕事を整理するための最適な方法を見つける(メモ帳やパソコンでやることリストを作成するなど)。
  • 背中や肩に負担をかけずに動き回れるように、カバンは軽くしておく。
  • 集中力や気分を上げてくれるプレイリストを作って、いつでも再生できるようにしておき、研究や執筆を集中して進めたいときに活用する。
  • 境界線を決める。同僚との無駄話など、仕事に必ずしも役立たない無作為な活動に費やす時間に厳しくする。それらすべてを遮断する必要はないが、差し迫った優先事項がある場合に備えて、「ノー」と言う心構えをしておく。


経済的セルフケア:研究は、充実感を得られるものではありますが、必ずしも経済的に報われるものではありません。学術界の内外で自分の将来に自信を持てるようにするためには、自分の経済状況を把握しておく必要があります。このセルフケアは、研究生活のためだけでなく、個人的な目標や夢を追い続けるためにも重要です。以下は、経済的セルフケアの実践例です:
 

  • 自分の経済状況を定期的に確認する。支出の記録を取って、少なくとも月に1度は見返し、支出状況を変える必要があるかどうかを検討する。
  • 過度に節約する必要はないものの、自分にとって役立つもの、価値あるもの、不可欠な活動、セルフケアの実践に役立つものにお金を使うよう心掛ける。
  • 計画的に貯金する。1週間または2週間、あるいは1ヶ月ごとに貯金する額を決め、その計画を達成できるように行動する。現金を貯める貯金箱を好む人もいれば、銀行口座に預けることを好む人もいるので、自分に合った貯め方を見つける。
  • 支払い期日を守って財務管理をしやすくする。
  • 支出は、可能な限り予算を立てて計画的に行う。
  • お金に困っている同僚や友人がいたら、援助する立場にいられるよう心掛ける。援助が難しい場合は、躊躇せずに「ノー」と言う。


心理的/パーソナルセルフケア:研究生活における日々の苦労や奮闘の中では、自分の成長に構っている余裕はないかもしれません。もちろん、全力で仕事にあたることは必要ですが、パーソナルケアの必要性も無視するわけにはいきません。以下は、パーソナルセルフケアの例です:
 

  • 毎日、「自分のための時間」を作る。自分が感じていることや、その日うまくできたこと、学んだことを振り返り、個人や研究者としてどのように成長したかを考える。
  • 研究とは関係のない趣味を作る。少なくとも週に1度はそのための時間を設けることで、活動的でいられ、日々の研究活動の息抜きができる。
  • これまでにやったことのないこと(習得したいスキル、行ってみたい場所、食べてみたい料理など)のリストを作る。少なくとも月に1度は、このリストの1つにチェックを付けられるようにする。
  • 人生の夢や目標を書き出し、人生やキャリアをどのように形作るかについて、プランを練る。
  • 可能であれば、毎日少なくとも20分は家事(皿洗いや簡単な調理など)の時間を設ける。こうした日常作業は、心を落ち着け、プレッシャーを取り除くのに役立つ。


以上が、研究者として実践できるさまざまなタイプのセルフケアです。自分の状況にストレスを感じたり不安を覚えたりしたときは、深刻な状態に陥るまで放置するのではなく、一旦立ち止まって、何に気を病んでいるのか、どのようなセルフケアを実践する必要があるのかを考えましょう。


ただし、「セルフ」という言葉が使われている通り、あなたにとってのセルフケアと他の人にとってのセルフケアは異なるということを忘れてはなりません。また、はじめはうまく実践できないかもしれません。セルフケアには、忍耐強く、意識的に、段階的に取り組んでいく必要があります。ぜひ、自分を大切にしてください。自分自身に満足していない状態では、自信を持って前向きに取り組むことはできないものです。


あなたはどのようなセルフケアを実践していますか?また、どのセルフケアを取り入れたいと思いましたか?ぜひコメントをお寄せください。

学術界でキャリアを積み、出版の旅を歩もうとしている皆様をサポートします!

無制限にアクセスしましょう!登録を行なって、すべてのリソースと活気あふれる研究コミュニティに自由に参加しましょう。

ソーシャルアカウントを使ってワンクリックでサインイン

5万4300人の研究者がここから登録しました。