bioRxivが臨床研究者向けのプレプリント・リポジトリをローンチ
生物学のプレプリントサーバー「bioRxiv」の創設者らが、査読を待たずに論文を共有できる、臨床研究者のための新たなプレプリント・リポジトリ「medRxiv」を起ち上げました。
Nature誌の記事によると、プレプリントサーバーは物理や生物などの分野では活用されていましたが、これまで医学研究の分野にこのようなリポジトリは存在しませんでした。この現状を変えようと、bioRxivのスポンサーであるコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL、ニューヨーク)と出版社のBMJが、査読付きジャーナルで出版される前の臨床研究論文を共有できるプラットフォームの創設に向けて動き出したのです。
しかし、当該分野の科学者たちは、精査されていない臨床研究を公にすることで、公衆衛生に負の影響を与えてしまう恐れがあることから、プレプリントを公開することに消極的でした。Science誌の記事よると、medRxivには、これらの懸念を解消するために、以下のような安全策が講じられています:
- 著者は、倫理審査、臨床試験に参加した患者の同意、臨床試験登録、資金提供元などの詳細を報告しなければならない。また、投稿された論文に倫理的問題があった場合、リポジトリはその論文を撤回できる。
- 投稿された論文は、外部の臨床科学者や医学専門の編集者による審査を受ける。
- ウェブサイト上および各プレプリント上に、「当該研究が査読を受けていないこと」や、「医療現場にこの知見を持ち込んではならないこと」を記載する。また、医学ジャーナリストがこれらの研究を取り上げる場合は、慎重な記述が求められる。
Kingston General Health Research Institute(カナダ)の臨床科学者、デイビッド・マスラブ(David Maslove)氏は、医学がほかの分野とは異質なものであることを踏まえ、「今後、医学研究に対する一般社会の関心はさらに高まっていくと思われます。特定の疾病の治療法に関する新たな情報が、より求められるようになるでしょう」と述べています。
CSHLプレス社のエグゼクティブ・ディレクターでmedRxiv共同創設者のジョン・イングリス(John Inglis)氏は、「それゆえに、安全対策の一環として、medRxivでは、薬の副作用やワクチンの安全性、特定の薬の消費に関するものなど、センシティブなテーマや健康に深刻な影響を与え得る研究の公開は控える」と述べています。
プレプリントの支持者たちは、研究をプレプリントという形で公開することで、長い時間を要しがちな査読プロセスを避けて、科学の発展を加速させることができると考えています。それにより、研究者たちは迅速にフィードバックを得て、ネガティブな結果について議論することもできるでしょう。ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の疫学者、マーク・リプシッチ(Marc Lipsitch)氏は、「プレプリントでは、研究者同士で情報を無料で迅速に循環させることができるため、たとえば致死性ウイルスなどが大流行した際などにとくに有用でしょう」と述べています。
これらの最新動向についてどう思いますか?公衆衛生の、ひいては科学の発展において、プレプリントを安全に利用するにはどうすればよいでしょうか?ぜひ、皆さんのご意見をお寄せください。
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