海外とのつながりを開示しなかったNIHの助成金受給者に罰則:米国
米国では、外国政府から研究助成金を搾取されるリスクへの懸念が高まっています。資金提供元は、助成金が倫理的に利用されていることを保証することへの大きなプレッシャーにさらされており、最近では国立衛生研究所(NIH)が、同所の助成を受ける外国人研究者を対象とした調査の実施を求める文書を、資金提供先の機関に送りました。
これを受けて、NIHのフランシス・コリンズ( Francis Collins)所長は、同所の予算を管理する上院歳出委員会とのパネルディスカッションに先立ち、2020年度の予算案に関する宣言を行いました。歳出委員会の委員長を務めるロイ・ブラント(Roy Blunt)上院議員は、外国とのつながりに関するNHIの情報開示規則に疑問を呈し、「外国政府は、米国の研究を“盗んで”利用しようとしている」と述べた上で、「NIHは、研究コミュニティがこの脅威を十分に認識し、何より、その脅威に対処できるようにしなければならない」と指摘しています。
コリンズ氏は、「国内55機関に所属する、NIHから助成を受けている外国人研究者について現在調査中」であると述べています。コリンズ氏によると、この調査により、「二重取り」や、NIHの助成金を受給しながら外国からの資金提供も秘密裏に受けていた研究者が複数いたことが明らかになりました。また、「知的財産の流用」や助成金申請に関する情報を海外に漏洩した罪に問われた研究者もいました。コリンズ氏はブラント氏に対し、「このような不正をはたらいた者に対しては、機関を去るよう求めるか、解雇という措置を講じた」と述べ、数名がすでに母国に帰国しています。
コリンズ氏は、外国政府によるNIHの資金悪用を防ぐために講じた措置について、一部機関が近日中に公表する予定であることを明らかにしており、「対策は講じられています。翌々週までには、これらの行動が実際に行われている証拠を報道で目にすることができるはずです」と述べています。この動きの背景には、米国の知的財産や技術の盗用を防ぐという意図があります。
科学コミュニティの一部からは、このような前例のない調査や、誠実な研究者をも不当に疑ってしまう可能性について、懸念の声があがっています。コリンズ氏とブラント氏は、NIHが資金を提供しているほとんどの外国人研究者が規則を守り、多大な貢献を果たしていることを認めています。コリンズ氏は、このような外国人研究者たちが、「人種的選別」の対象として不当に扱われることはないと保証しています。これらの調査がどのような効果を生み、そしてどのような長期的影響を生じるのか、今後の動向が注目されます。
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