「リサーチギャップ」を見つけるための6つのヒント

「リサーチギャップ」を見つけるための6つのヒント

研究の第一歩は、先行研究で明らかになっていない領域を見つけることです。自分の専門分野でまだ研究されていないテーマを選ぶことができれば、論文が掲載される可能性は高まるでしょう。問題は、「研究すべきテーマをどのように選ぶか?」ということです。中には、どのような研究を行うべきかについて明確な考えを持っている研究者もいます。しかし、とくに若手研究者の多くは、独創的で画期的な研究テーマを探すことに苦労しています。研究テーマを決めるためのベストな方法は、分野の先行研究に不足している知見を特定すること、すなわち、「リサーチギャップ」を探すことです。


この記事では、研究の拠り所となる未開の領域や知識の隙間を特定するのに役立つヒントを紹介します。


リサーチギャップ」とは?


まずは、「リサーチギャップ」の意味を理解するところから始めましょう。関心のある分野の論文や書籍を読んでいると、さらに研究を進める余地があるにも関わらず、誰もそれをしていないテーマがあることに気が付くことがあります。つまり、そのテーマはまだ手付かずで、誰にも研究されていないということです。リサーチギャップ(またはリテラチャーギャップ)とは、このような、さらに研究を進める余地のある未開拓のエリアのことを指します。


オリジナルのリサーチギャップを特定することはなぜ重要なのか


たとえば、苦労して仕上げた論文を出版した後で、すでに別の研究者が類似の研究を発表していたことを知ったら、これほど悲惨なことはありません。だからこそ、まだ誰にも取り上げられていない研究課題を見つけることは、きわめて重要なのです。これは、研究予算やリソースを適切な研究プロジェクトに投資するためだけでなく、その研究を論文として出版する可能性を高めるためにも重要なことです。


リサーチギャップを特定するプロセスで直面する困難


リサーチギャップを特定し、オリジナルで画期的なテーマを設定するためのプロセスには、さまざまな困難が待ち受けています。リサーチギャップを特定する過程では、以下のような困難に直面する可能性があります:


1. 膨大な情報への対処:あなたが関心を持った分野には、未解決の問題が数多く残されているかもしれません。そんな場合は、その量に圧倒され、どのテーマに焦点を当てるべきか混乱してしまうことがあります。


2. 収集した情報の整理:集めた情報を整理するのに苦労することがあります。情報が適切に整理されていないと、せっかくのアイデアが無駄になってしまうかもしれません。


3. 既存の知見に疑問を持つことに躊躇する:既存の知見に確信を持って異議を唱えることが難しく感じられ、他者の主張に疑問を投げかけることに躊躇してしまうことがあるかもしれません。


リサーチギャップを特定する方法


画期的な研究テーマを見つけるためのベストな方法は何でしょうか?残念ながら、リサーチギャップを特定するための明確なプロセスというものは存在しません。リサーチギャップを特定する手がかりとなるのは、好奇心、創造力、想像力、そして判断力です。


以下に、リサーチギャップを特定するための6つのヒントを紹介します:


1. 先行文献から着想を得る

  • 興味のあるテーマに関する書籍や論文を読みましょう。これにより、その分野でどのような研究が行われてきたかを深く理解できるだけでなく、リサーチギャップの特定につながる疑問を持つきっかけが得られます。コロンビア大学経済学部のドン・デイビス(Don Davis)教授は、「分野に関連する文献を読み、先行研究でどのような貢献がなされてきたのかを知りましょう。そして、それらに感心するだけでなく、あらゆることを疑ってかかりましょう」と述べています。たとえば、以下のような疑問が考えられます:
    • この研究は、自分の研究やその他の分野にどのような意義を持つか?
    • この研究は、自分の研究課題の設定にどのように役立つか?
    • 著者の主張をより明確にする必要はないか?
    • 扱われていない問題や課題は何か?
    • 異なる視点からアプローチする余地はないか?
    • 結果に影響を及ぼし得る別の要素はないか?
    • 使われている方法や手順は、時代遅れだったり、すでに無効となっているものではないか?最新のアプローチで結果を検証する余地はないか?
  • 先行論文を読む際は、「イントロダクション」セクションに着目しましょう。イントロダクションでは、研究テーマの重要性や、著者が埋めようとしているリサーチギャップについて述べられているからです。また、研究の今後の方向性や提案について述べている箇所も、着想を得るのに大いに役立つでしょう。
  • メタ分析やレビュー論文を読んで、分野における研究の発展の経緯やトレンドの変遷を理解しましょう。これにより、研究で解決されてきた過去の問題や、最新の課題を把握できるようになるでしょう。

2. 指導教官と相談する

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研究のアイデアを得るために、分野の課題や問題について指導教官と話し合いましょう。アイデアを言葉にし、他者の考えや研究を知ることで、研究テーマの特定や、自分のアプローチの不備に気付くことにつながることがあります。興味のあるテーマについて指導教官と相談し、意見を請いましょう。


3. デジタルツールを活用して、人気のあるテーマや被引用回数の多い論文を探す


分野の最新課題を把握するために、デジタルツールを活用して、より効率よく広範に調査を進め、リサーチギャップの特定につなげましょう。Essential Science Indicatorのようなウェブサイトでは、分野での被引用回数がもっとも多い論文、最新の研究動向、影響力が大きい研究者・出版物・国を知ることができるため、どのようなテーマが重要視されているかを知るのに大いに役立ちます。Google Trendsでは、専門分野に関連する話題の問題を知ることができます。これらのツールを活用することで、分野における未開拓のテーマが見つけやすくなるでしょう。


4. 有力ジャーナルのウェブサイトをチェックする


有名ジャーナルのウェブサイトには、専門家が分野のメジャーな考え方を解説する「キーコンセプト」と呼ばれるセクションが掲載されていることがよくあります。このセクションを読むことで、多くの見識を得られ、新たなアイデアの生成にも役立つでしょう。また、有名ジャーナルの論文の参考文献セクションから、テーマに関する重要なリソースに辿り着くこともできるでしょう。


5. 浮かんだ疑問をメモしておく


先行論文を読んでいる間に疑問が浮かんだら、すべてメモに取っておきましょう。可能であれば、その疑問のもととなったリソースを紐づけておきましょう。行動科学と女性・ジェンダー研究の専門家でミシガン大学司書のナディーン・アンダーソン(Nadine Anderson)氏は、「論文、書籍、書籍の一章、学位論文など、どのような文献であっても、重要と思われる内容や浮かんだ疑問は、すべて記録しておきましょう」とアドバイスしています。こうすることで、意図しない剽窃を防ぐことにもなります。記録のフォーマットは、表、図、画像、その他のツールなど、何でも構いません。この記録は、アイデアを研究課題に落とし込むときや、論文を執筆するときなどを含め、息長く活躍してくれるでしょう。


6. 一つ一つの疑問について調べる


疑問がいくつかリストアップできたら、それぞれを徹底的に調査しましょう。ここからは、一つ一つの疑問を掘り下げていく必要があります。同じような疑問を持っている研究者がいるかどうか、いるなら、その疑問への答えが発見済みかどうかを調べましょう。こうすることで、研究の重複を防ぐことができます。


 

研究プロジェクトは膨大な時間を費やすものなので、興味や熱意が搔き立てられるものでなければなりません。これまでにない研究計画を練り上げる一方で、一定の期間内にプロジェクトを完了できるかどうかをはじめ、利用可能な予算、設備、インフラなどの重要要素も考慮する必要があります。計画が野心的すぎると、時間やリソースの不足が原因でプロジェクトを完了できなくなってしまう恐れがあります。また、研究の意義が不明瞭では、助成委員会やジャーナルの編集委員会から承認が得られないかもしれません。


斬新で興味深い研究課題を見つけるための確かな方法はありませんが、この記事で紹介したヒントを参考にして、自分に合ったやり方を見つけましょう。探し求めていた研究課題が見つかるまで、文献を読み続け、問いかけ続けましょう!


幸運を祈っています!

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