「少数者への査読機会の提供は、ジャーナルのブランド価値を高めるチャンス」
査読の多様性と参画機会を向上させるために、学術出版業界はどのように協調すべきでしょうか? ドナルド・サミュラック氏(Donald Samulack、カクタス・コミュニケーションズ、エディテージ米国法人代表)に聞きました。
査読において、多様性(diversity)と包摂性(inclusion)は、どのような意味を持っていますか?
査読者に関する統計データによると、査読者は西洋諸国(米、カナダ、欧州)に大きく偏っており、男性が多くの割合を占めています。査読者の性別や国籍に多様性をもたらすには、関係者全員による意識的な努力が必要でしょう。このような取り組みを計画的に行うことによって、査読者の総数を増やせる(=査読者1人当たりの負担が減る)だけでなく、将来的に査読者の基盤をグローバルに確保できるでしょう(=女性や若手研究者の割合と、地理的多様性の向上を目指すことになる)。加えて、これらの人材の熱意を結集すれば、査読の質の向上も見込めます。
査読の多様性を実現するためにジャーナルがすべきことは何ですか?
査読に性別や地理的多様性をもたらすための最初のステップは、まずはジャーナルが、現状のシステムのバランスの悪さと、それが査読の質にどのような影響を与えているかを認識することです。次に、自誌の査読者データベースで性別や地理的多様性の現状を調べ、バランスに問題がないかを把握する必要があります。この情報を踏まえて、社会的少数者の数を戦略的に増やすためのプロセスやプログラムに着手します。プログラムの例として、オンライン・トレーニングやワークショップのような形式のほか、報奨制度・割引・機会の提供といった支援的取り組みが挙げられます。
社会的少数者(一般的に、女性・若手・アジアや中南米の研究者)に査読者としての機会を提供することは、自誌のブランド価値を構築する最大のチャンスと言えますが、皮肉なことに、ジャーナルはまだその事実に気付いていないようです。
査読に関するより詳しい情報は、ピアレビュー・ウィーク2018シリーズをご覧ください。
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