「ジャーナルは査読者を増やす努力を、査読者は関心対象を広げる努力を」
ディーキン大学総合生態学センターの海洋生態学者、ゲイル・スコフィールド(Gail Schofield)氏に、査読の多様性に関する独自の見解をお聞きました。
査読が論文の改善に計り知れない効果を生み出すのは、対象の論文で扱われている種・地域特性・方法論的アプローチ/ツールに関心を持つ査読者が、3人程度集まった場合です。
しかし、査読の候補者たちは、自分自身の研究やほかの論文の査読に追われている場合がほとんどなので、編集者にとってこの条件を満たすことは、ますます難しくなっています。この査読者不足の問題は、かつてないほど増え続けている投稿論文数やジャーナル数によって、深刻化しています。言うまでもなく、査読は簡単な作業ではないため、この状況を改善する方法を見つけなければなりません。査読にかける労力は人によって大きく異なりますが、査読者はそれぞれが独自の視点で論文を精査しており、公開前に論文の改善や問題点の解消につながるような指摘をしています。
査読を受ける側の立場から見ると、新米査読者や同分野の査読者ほど、厳しい審査をする傾向があります。幸運なことに、私は指導教官から査読の作法に関するガイドラインを教えてもらいました。その教えは今も守っていますし、学生たちにも受け継いでいます。研究者への査読訓練はきわめて重要な投資であり、ジャーナルは、積極的に取り組まなければなりません。論文は、研究者が膨大な時間と労力をかけて計画・実行・執筆した結果として仕上がっているものであることを忘れてはいけません。私は、査読した論文の文章に問題があると思ったら、著者が対応しやすいように、その文章や段落を自分ならどのように修正するかアドバイスします。方法論的な問題があれば、そのアプローチを再検討できるような、またはアプローチを正当化できるような、関連する先行研究の情報を提供します。とくに説明もなく間違いや欠陥を指摘するだけでは、著者はどのように修正すべきかが分からず、コメントの意図を適切につかめなくなります。したがってジャーナルは、査読者たちが、その経験値に関わらず、簡潔で効果的な査読を行えるよう導く多肢選択問題や複数解答問題などを提供し、年に1回はこのような問題に取り組む時間を作るなどの「トレーニング」を積ませるべきでしょう。
私は楽しんで査読を行なっています。毎年、さまざまなジャーナルから生物学・生態学に関する論文の査読依頼を受けています。査読を幅広く行うことで、専門分野や関連分野の論文をより広範な視野で読むことができるようになります。これは、研究者が苦労して生み出した論文へのポジティブな貢献として奨励されるべきだと思います。
私にとって査読の多様性とは、ジャーナルが査読者不足の問題を解決すること、そして、若手かベテランかを問わず、査読者が質の高い査読を行えるように、必要なスキルや基準を身に付けさせるトレーニングを行うことです。また、査読者たちが自分の知識や技能を多様化する意味で、専門分野の関連論文を幅広く受け入れるということでもあります。
査読に関するさまざまな識者の見解を、ピアレビュー・ウィーク2018シリーズで紹介しています。どうぞご覧ください。
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