自ら雨を作り出すアマゾンの木々
アマゾンの雨季は、ほかの熱帯地域と時期が若干異なっているため、長年に渡ってその謎が研究者の興味を引き付けてきました。この程、アマゾンの木々が自ら雨季を作り出していることが分かり、長年の謎がついに解明されました。生態系が自分で雨を作るとは、驚きの事実です!
アマゾンの雨季が比較的早く始まる理由は、これまで不明とされてきました。この謎を解明するために多くの先行研究が行われてきましたが、研究者たちは頭を悩ませるばかりでした。アマゾンから発生する水蒸気の存在は確認されていましたが、その発生源を辿ることができずにいたのです。Proceedings of the National Academy of Sciences誌(PNAS)で発表された新たな研究では、NASAの人工衛星「オーラ(Aura)」に搭載された対流圏放射分光計(TES)による水蒸気データの分析を行いました。その結果、乾季の終わりに見られる雲は、熱帯雨林から蒸発した水によって形成されていることが分かりました。
研究チームの一員であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校の気象学者、ロン・フー(Rong Fu)氏は、雨量が増加する時期と熱帯雨林が成長する(新葉が生える)時期が一致していることを指摘しています。葉の成長は、太陽光をエネルギーに変換する植物の光合成プロセスに直接影響を及ぼします。光合成中に、葉の裏側にある小さな気孔から水蒸気が放出されることで、アマゾン地帯の雲が形成されているのです。
アマゾンの木々と雨の関係を調査した2012年の研究では、大気が降雨に備えるための塩の粒子を、植物が放出していることが明らかになりました。今回の研究では、植物が、雨季の開始により重要な役割を直接的に果たしていることが分かりました。
また、この研究は、気候における植物の重要性に関する積年の議論に一石を投じています。植物は受動的であるという従来の見解を覆し、植物が能動的に雨を作り出せる可能性を提示しているからです。また、干ばつを防ぐ上で森林破壊を抑えることの重要性も強調されています。研究者らは今後、コンゴの熱帯雨林を調査し、同様の現象が見られるかを検討する計画です。
doi/10.1073/pnas.1621516114
コメントを見る