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査読の不正操作「本問題に取り組むべくジャーナルができることとは?」
前の記事では、ここ数年くり返し起こっている査読の不正操作事件が、科学出版のシステムにいかに重大な課題をもたらしているかについて論じました。ジャーナルエディターは、査読システムを操作から守るための方法を懸命に探しています。
本問題を解決するにあたり大きな障害になるのは、何らかの一般に認められたガイドラインがないということです。出版倫理委員会(The Committee on Publication Ethics (COPE))は、査読者名、住所、メールをくまなくチェックし、著者が推奨した査読者だけに依頼しないよう、薦めています。しかしながら、著者推奨の査読者への依頼に関する具体的な慣例がないため、公正で適切な査読を確実にするため、どんな慣例が行われているかは、ジャーナルによって違っています。
研究論文「著者推奨の査読者は、エディター推奨の査読者と同じくらい良いか? 評定者を盲検化したレトロスペクティブ研究の結果」の著者であるリズ・ウェイジャー(Liz Wager)氏 のような多くの有識者は、査読の不正操作を防ぐためジャーナルエディターが決定的役割を果たしていると考えています。利益相反のチェックはさておき、エディターは、(著者が推奨しているかどうかにかかわらず)査読の依頼を行う前に、査読者が本物であり十分な信頼性があることを確認するため、彼らについて独自に、かつ徹底的に調査しなければなりません。
「Retraction Watch」 (訳注:論文撤回を監視するブログ)のキャット・ファーガソン(Cat Ferguson)、アダム・マーカス(Adam Marcus)、アイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)によれば、査読のときジャーナルエディターが気づいたほうがよい怪しい証拠は次の通りです:
- 著者が、ある査読者を除外するよう依頼し、その分野のほとんどすべての研究者が載ったリストを提示してくる。
- 著者が、奇妙なことにインターネットで見つけにくい査読者を推奨する。
- 著者推奨の査読者の連絡先として、学術機関のメールアドレスではなく、Gmail、Yahooなどのフリーメールのアドレスを伝えている。
- 依頼して数時間で査読が返ってくる。査読では論文が賞賛されている。
- 3番目の査読者であっても、論文を気に入っている。
それでもやはり、ジャーナルは、査読を行うために使われている自動化工程を確実なものとし、それによって著者にシステムの悪用をさせないことが大切です。
ここ数年で査読の不正操作事件が増えてきていることから、査読に関する最良の実践を発展させる必要が指摘されています。これにより、ジャーナルは、著者の非倫理的な意図を特定・妨害することが可能になります。ジャーナルエディターは査読者の選択に慎重でなければなりませんが、その一方で著者の中にも、倫理的に論文を発表することの重要性についての認識が培われるべきでしょう。
著者・査読者として、この問題に関しどんなご意見をお持ちですか? 査読の不正操作を防ぐためジャーナルにできることは何でしょうか?
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