アカデミアに母親の活躍の場はあるのでしょうか?

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アカデミアに母親の活躍の場はあるのでしょうか?

女性は男性に比べ、仕事と家庭の両立という苦しい時期を過ごすということは、秘密でもなんでもありません。女性がキャリアを諦めることが日常的なアカデミアでは特にその傾向が強く、アカデミア全体に大きな損失をもたらしています。入学の段階では男女数は等しく、学部学生の約半数を占める女性の多くは、男子学生よりも優秀です。しかし、シニアのポジションになるほど、女性の数は徐々に少なくなり、教授や学部長のような学部のトップレベルの地位にはあまり女性は見られなくなります。科学の発展を最優先にすれば、性別やその他の事情にかかわらず、然るべき科学者が上の地位につくことが不可欠です。非常に多くの女性が科学の世界にキャリアを求めている今、女性がトップに立つのを妨げ、途半ばで諦めさせているものは何でしょうか?

エディンバラ大学のポリー・L・アーノルド(Polly L. Arnold)によると、給料が少ない、受け取る助成金が少ないといった 「公然あるいは秘密裏の性差別」はさておき、性の不平等の原因となるもう一つ別の要因は「研究者としての生産年齢と人間としての生殖年齢が一致している」ことです。若い科学者が直面する難題の一つが、雇用保障の遅いことです。つまり、科学者は通常、30代半ばから後半で職を得ます。専門職としての地位を固めるために、この時点でやらなければならないことはたくさんあります。研究室を開く、助成金を得る、論文を発表する、会議へ出席する、学生を教える、といったことです。不運なことに、30代という年頃は、多くの女性が「子どもを持ちたい」、「家庭を持ちたい」と思う時期なのです。女性にとって、こうした時期が重なることは大きな代償になってしまいます。カリフォルニア大学バークレー校アール・ウォーレン・インスティチュートの教授メアリー・アン・メイソン(Mary Ann Mason)氏が言うところの、 “身体的な代償(baby penalty)”を支払わなければならないのです。ある研究によると、女性研究者の70%がテニュアトラックの身分と子どもを持つことは両立できないと感じています。テニュアトラックの身分は、計り知れないプレッシャーや競争、そして長時間労働を必要とするからです。

アカデミアを母親にとって難しい場所にしているのは、柔軟性に欠けるシステムと、柔軟性をプロにふさわしくないことと考える男性優位の環境です。子どもを持つ女性研究者が、在宅勤務や子どもの世話のための早退、出張への子どもの同伴といったことを希望しても、認められないケースは数多くあります。ニューナムカレッジ学長のキャロル・ブラック教授は、問題の核心をこう述べます。 「職場の経営層はいまだに男性優位社会です。だから、会議は朝8時から始まります。だって男性は子どもを学校へ送る必要がないのですから。こうしたことが女性を冷遇しているのです」 出産に伴う休暇がなかったり、父親の育児休暇がきわめて短かかったり、保育支援が欠ける職場では、多くの若い母親には非常勤の職を引き受けてスローダウンするか、科学の職から完全に身を引くしか選択肢がありません。

さらに悪いことに、母親となった研究者は、出産に伴うキャリア上の遅れから完全には回復できないことです。出産に伴うキャリア上の遅れから再び元の軌道に戻ることは、女性研究者にとって大変な困難を伴います。というのも、子育て期間中でさえ、家庭での責任を多く担うのはたいていが母親なので、昇進に伴う新たな職務上の責任を負うことがとても困難になります。アカデミアにおける女性の報酬は退職時ですら、男性に比べると平均して29%低いという状況です。メアリー・アン・メイソンは次のように述べています。「これは子育ての責任分担の結果でもあります。一人ひとりの子どもが女性の退職金を減額しているのです。若いころに失った時間とお金が積み重なって起きていることなのです」

男性が家庭の責任をもっと担うようにするには、より大きな社会的変化が必要ですが、アカデミアにおいて女性への平等な機会を促進するため、組織レベルでできることは少なくありません。たとえば、家族に対する有給休暇を付与したり、柔軟なキャリア・パスを採用したり、休職していた女性研究者に融通の利く復帰支援を与えたり、保育支援を充実させたり、男女に平等な賃金形態を採用したりといったことです。いくつかの大学ではこうした構造的改革をすでに進めており、良い結果を生んでいます。

高等教育における多様性の向上を目指す慈善団体、平等推進ユニット(Equality Challenge Unit) はアテナ・スワン(Athena Swan) プログラムを開始し、科学における女性の割合を増やす取り組みを進めています。このプログラムには多くの大学が参加しており、出産休暇や育児休暇の面で改善が見られ、女性の職場復帰も進められています。アテナ・スワンプログラムに参加している大学は、たとえばクィーンズ大学ベルファスト、ケンブリッジ大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ノッティンガム大学、ウォーリック大学などです。その結果ですか? これらの大学に所属する研究者は、他の大学の研究者に比べてより幸福を感じ、職場に多様性が生まれ、より多くの女性研究者がシニアのポジションについています。そしてなにより、みんな、親として幸福で誇り高いのです。すばらしい第一歩と言えるでしょう。近い将来、世界中の学術機関でこうした方針が採られるといいですね。

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