「なぜ執筆支援サービスの利用を論文に記載しなければならないのか?」:ケーススタディ

「なぜ執筆支援サービスの利用を論文に記載しなければならないのか?」:ケーススタディ

事例:ある著者が、有料の論文執筆支援サービスを利用して研究論文を書いていました。第一稿の完成後、著者は執筆支援サービスの会社から、以下の文章を論文の謝辞に含めるように言われました。

「本研究は、XXXXの資金助成を受けた。すべての著者は、国際医学雑誌編集者委員会(International Committee of Medical Journal Editors、ICMJE)の規定する著者資格基準を満たしており、論文の全内容について管理・確認を行なった。またABC社のYYYYが、メディカルライティング、著者の詳細な指示に基づく高解像度画像および表の作成、著者コメントとの照合、校正、事実確認、参考文献の整理などを含む編集支援を行なった。この支援は、XXXXの資金提供によって行われた」

著者は、執筆支援サービス会社の名前と担当執筆者の名前を論文の謝辞に含めるようにという依頼に驚きました。会社は、この依頼を受け入れなければ論文の執筆を完了することはできないと言います。著者はどう対応するのが適切なのかを判断するため、エディテージにアドバイスを求めてきました。謝辞に担当執筆者の名前を入れたくない理由として、著者は次の2点を挙げました。

1. 執筆支援サービスの利用を認めれば、自分の弱点を公開することになる。「この著者には論文執筆スキルが足りない」という印象を与えることになり、ジャーナルの判断に悪影響を及ぼすのではないか。

2. 謝辞の目的は、研究を助けてくれた人に感謝の意を表すことである。執筆支援サービスには対価を支払っており、助けてもらったわけではないので、謝辞に含める必要はない。


対応:エディテージは著者に対し、完全な情報開示を求めるジャーナルがほとんどであること、そして著者が論文のすべての内容を管理していれば、編集や執筆の支援を受けても弱点とはみなされないことを説明しました。ICMJEも、執筆や編集の支援を受けた場合は論文に明示するよう定めています。著者に、そのことが書かれているICMJE統一投稿規定を抜粋して送りました。しかし著者は、投稿規定に対するエディテージの解釈は間違っており、有料サービスについては明示しなくてよいのではないかと考えています。そこでエディテージは、その論文を投稿するつもりだったジャーナルの編集者に、有料の執筆・編集支援サービスに関する情報を開示する必要があるかどうかを尋ねてみるよう著者に伝えました。編集者の回答は、「有料・無料に関わらず、執筆支援あるいは編集・校正の支援を受けた場合は、すべて謝辞に含める必要がある」というものでした。著者はようやく納得し、受けたサービスについて謝辞に含めることに同意しました。


まとめ:ICMJEは、執筆支援あるいは編集支援を受けた場合は、そのことを論文の謝辞に含めることを推奨しています:

ICMJE統一投稿規定に記されている著者資格(オーサーシップ)の4条件を満たさない研究貢献者は、著者とするのではなく、謝辞に名前を含める。単独では著者資格があると認められない行為の例として、助成金の獲得、研究グループの通常の監督あるいは業務管理上の支援、執筆補助・原稿整理・英文校閲/校正などがある。著者資格を満たさない貢献者は、個人あるいはグループとしてまとめて見出しをつけ(「治験担当者」(Clinical Investigators)、「調査参加者」(Participating Investigators)など)、その貢献内容を謝辞の中で具体的に明記する(例:「科学的観点からの助言を行なった」「研究計画書の徹底的なレビューを行なった」「データを収集した」「被験者を募集し、その対応にあたった」「論文の執筆と編集作業に参加した」など)。

論文原稿の準備にライターや編集者が関わったことを認めても、論文掲載の判断に影響を及ぼすことはありません。むしろ、そうすることで、ジャーナル編集者の定めた投稿規定を順守することになるのです。

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