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学位論文をジャーナル論文に書き換える際のヒント
本シリーズ前半の記事では、博士論文をジャーナル論文に書き直して発表しても問題ないことを説明しました。しかし、学位論文とジャーナル論文は学術文献としてまったく異なるカテゴリーに属するものであり、読者層も執筆目的も異なるということを覚えておく必要があります。当然ながら、これらの論文は異なるスタイルやフォーマットで書かなければなりません。本記事では、学位論文を1本または複数本のジャーナル論文として再構成する方法について説明します。
まずは、学位論文とジャーナル論文の違いを理解することが重要です。学位論文は通常、学生が学位課程で執筆する長い論文です。このため、学位論文には教育的な目的があり、審査員に発表して、学位授与にふさわしいか否かの評価を受けなければなりません。したがって、学位論文の目的は、学生がどれだけ多くの知識を持っているかを示すものであり、一般的に、学位論文のテーマについて知っているすべてのことを書くことになります。学位論文の特徴として、長々としたイントロダクション、網羅的な文献レビュー、詳細な研究手法・方法、込み入った報告、拡大解釈した結果が挙げられます。
一方、ジャーナル論文は、エビデンスに裏づけられた実践的アイデアを求める多忙な科学者や研究者が読むものです。したがって、構成面での読みやすさを極力重視しなければなりません。ジャーナル論文は、特定のフォーマットに沿って、簡潔な文献レビュー、要点を押さえた方法、主要な結果、簡明な考察で構成しなければなりません。
以下に、学位論文からジャーナル論文を作成する際に検討すべき項目を挙げます:
アブストラクト:ジャーナル論文のアブストラクトの長さは通常、150~250ワード程度です。一方、学位論文のアブストラクトは、多くの場合350ワード程度と長めです。投稿先のジャーナルの指針を注意深く読むようにしましょう。構造化アブストラクトが必要なジャーナルもあれば、非構造化アブストラクトが必要なジャーナルもあります。グラフィカルアブストラクトやビデオアブストラクトの人気も高まっており、これらが必要とされるジャーナルもあります。
イントロダクション:学位論文のイントロダクションはきわめて詳細にわたります。徹底的な文献レビューによって、学生が既存文献について知っていることを示すためです。しかし、ジャーナル論文の文献レビューは、その研究が必要とされる研究上のギャップを理解するのに十分なだけの分量を簡潔に記載することが必要です。学位論文のリサーチクエスチョンが複数ある場合、ジャーナル論文ではリサーチクエスチョンを1つに絞るようにしましょう。
方法:学位論文の材料・方法のセクションでは通常、研究の手法や方法について長々と説明します。しかし、ジャーナル論文の方法セクションは、より要点を押さえて記述する必要があります。使用した方法の詳細、つまり実際に行なった実験についてのみ述べるようにします。研究方法についての包括的な議論は不要です。
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結果:学位論文ではすべての結果を詳細にわたって報告しますが、ジャーナル論文では主要な結果のみを報告します。実際、学位論文では、学生に経験がなかったり、解釈に凝りすぎたりするために、説得力に乏しい研究結果が報告されることもよくあります。しかし、ジャーナル論文では厳しい報告基準に従わなければならず、リサーチクエスチョンに直接的に関連する堅固なエビデンスによって裏づけられた結果だけを報告しなければなりません。二次的な結果を報告したい場合は、補足情報として報告するようにしましょう。
考察:学位論文では、考察も詳しく記述します。学生が自分のデータを完全に理解していることを示すために、すべての結果の解釈を漏らさずに記載します。また、今後の研究の方向性に興味があることを、広範な思索に基づいて示さなければなりません。ジャーナル論文の考察は、明確に要点を押さえて書かなければなりません。 このセクションで結果を反復することは避けましょう。
参考文献:学位論文の参考文献は網羅的で、ときには著書目録が含まれる場合もあります。しかし、ジャーナル論文では記載する参考文献の数を抑え、論文内で引用した論文だけを記載するようにします。参考文献の数に上限を設けているジャーナルもあります。同様に、学位論文には「定義」のセクションがあるのが普通ですが、ジャーナル論文にはありません。
以上のアドバイスは、学位論文をジャーナル論文に書き直す際の方向性をつかんで頂くためのものです。ただ、これは簡単なことではなく、十分な配慮と努力が必要とされます。もっとも重要なのは、ジャーナル論文の参考文献に学位論文を記載し、その論文が自分の学位論文に基づいたものであることをカバーレターで必ず述べることです。編集者と査読者のサポートとアドバイスを受けることで、出版論文はきっと、学位論文とはまったく異なり、より優れたものになるでしょう。
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